新型コロナ対策製品に対する規制(ルール)

新型コロナ対策は莫大な予算が投入できる領域であり、巨大な利権の対象となっています。それ故、国の規制はとても厳しく、国がどういう方向に向かおうとしているのかを民間プレーヤーはよく掌握する必要があります。

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1.高濃度エタノール製品を用いた手指保護

 (1)厚労省3・23事務連絡

    厚労省は、新型コロナの感染拡大による需要の増加に伴い、特に手指消毒用エタノールの供給が逼迫する医療機関等において、「(やむを得ない場合に限り)高濃度エタノール製品を手指消毒用エタノールの代替品と使用すること」を差支えないとした。また、高濃度エタノールを購入する際には「特定アルコール取扱許可事業者から購入すること」を規定すると共に、「製品のエタノール濃度が原則70~83vol%の範囲内であること」「含有成分にメタノールが含まれないこと」等が規定された。

    また、代替の高濃度エタノール製品は「医薬品または医薬部外品に該当せず、その製造販売に規制を受けないこと」も明記された。

⇒関連する厚労省文書

 (2)厚労省4・9事務連絡

    厚労省は、新型コロナの感染拡大による需要の増加に伴い、手指消毒用エタノールを保有する企業が、「(自社内での使用を前提とする)他の事業者へ手指消毒用エタノールを提供すること」は問題ないとした。なお、エタノール供給側の事業者に従来から保有が義務づけられている「医薬品や医薬部外品の製造販売許可」は不要とされた。

⇒関連する厚労省文書

 (3)厚労省4・10事務連絡

    先の3・23業務連絡に関連し、代替高濃度エタノール製品の広告上、「本製品は医薬品や医薬部外品ではありませんが、消毒用エタノールの代替品として、手指消毒に使用することが可能です」等の表示を行って構わないことが追記された。

⇒関連する厚労省文書


 (4)厚労省4・16事務連絡

    先の4・10通知に続き、高濃度エタノール製品の取扱いに関し、「薬局が医療機関等へ高濃度エタノール製品を直接販売あるいは授与」して差支えないとした。また、その際、「医療機関等の求めに応じ、薬局側で製品を適切に希釈し、他の容器に詰め替えて販売すること」も問題ないとした。

⇒関連する厚労省文書

 (5)厚労省4・22事務連絡

    先の4・16通知に対し、「薬局側が小分け用に使用する容器には、手指消毒用エタノールのものを再利用」して構わないことを追加した。さらに、「消防法では重量濃度(wt%)60%、即ち体積濃度(vol%)で概ね67%以上のアルコール類が規制の対象になっている」との留意点を新たに追加した。

⇒関連する厚労省文書


 (6)厚労省4・22事務連絡[その2]

    先の3・23および4・10業務連絡後、厚労省が「60vol%台のエタノール消毒でも新型コロナウイルスには有効」とする報告を受けたことに関連し、「70vol%以上のエタノールが入手困難な場合には、手指消毒用として60vol%台のエタノール製品を使用すること」は問題ないと明記した。(注:この追記に関しては、4・22業務連絡で示された「消防法」への一定の配慮が考えられる)

    なお、当件に関連して厚労省より出された一連の方針は、あくまで新型コロナへの緊急対応を前提とする「臨時的・特例的な対応」とし、今後流行状況の変化を踏まえ変更あるいは廃止される場合があることも示唆された。

⇒関連する厚労省文書


2.次亜塩素酸水に対するバッシング

 NITEの報告

    我が国で2002年6月に「食品添加物として認可」された次亜塩素酸水は、「塩酸または塩化ナトリウム溶液を電解して生成」される次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。通常は、その低濃度・弱酸性溶液を野菜や食肉の洗浄等に使用することで有効な殺菌効果をもたらすとされているが、例えば大腸菌、黄色ブドウ球菌、MRSA、サルモネラ菌、レンサ球菌、ノロウイルス等の各種有害微生物に広く効果があることが知られている。また、食品に使用する場合でも、使用後に適切な洗浄を行う限り、人体への充分な安全性が確認されていることもあり、特に新型コロナウイルスの蔓延以降、次亜塩素酸水をベースとする数多くの殺菌&消毒用製品が販売されている。

    一方、新型コロナの感染拡大が急だったこともあり、国内ではアルコールを使用する殺菌&消毒用製品が軒並み品薄となり、その代替品として次亜塩素酸水への注目が一気に高まった。ところが食品衛生法で「塩酸または塩化ナトリウムの電解による生成」が厳しく規定されている次亜塩素酸水は、その生産量に一定の限界があるため、急速に拡大する需要に供給がまったく追いつかない状態に陥った。その結果、市場には漂白剤等に使用される「次亜塩素酸ナトリウムを希釈またはpH調整した水溶液」など、基原や製造方法、さらに確認された人体への安全性評価※が異なる成分を配合した殺菌&消毒用製品が多数登場してきており、これも消費者側の混乱を招く一因になったと言える。 

※厚労省が公開する「次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの同類性に関する資料」によると、次亜塩素酸水はヒト肌や環境負荷への悪影響および有害なトリハロメタンの生成がほとんどないとしているが、次亜塩素酸ナトリウムについては、それらの危険性について指摘している。

    その後、次亜塩素酸水の市場供給がある程度回復してくると、感染予防の一環として、それを「空中噴霧」するための設備や機械を導入する自治体や公共団体、教育機関などが出てきたが、これに一石を投じたのが5月29日に経産省が発表した「次亜塩素酸水の販売実績、空間噴霧についてファクトシート」である。同文書は製品評価技術基盤機構(通称NITE)による検討結果を踏まえたもので、その要点をまとめると以下の通りである。

 (1)現時点において、次亜塩素酸水の新型コロナウイルスに対する有効性は確認されていない。(注:6月9日付ファクトシート更新内容によると、同日時点でもなお検証試験の継続中となっている)

 (2)市場に出回る製品には、使用する原料や製法、あるいは殺菌効果に影響する次亜塩素酸濃度やpH値、製造日、使用可能期間、保管方法、使用期間
中における次亜塩素酸濃度の低減等について適切に表示されていないものが
多い。

 (3)有効性や安全性に関する根拠が明確でないものが多い。また、有効性試験を行っている場合でも、国際規格ISO、国内規格JIS等で規定される評価法に基づかないものや、結果を含む検証試験の詳細が不明のものが多い。

 (4)原料が「食品添加物」であることを根拠に、人体への安全性を謳うものが見られる。

 (5)「有人空間における空中噴霧の有効性」が公式に認められているかのように誤認させる表示が見られる。(WHOや米CDCは、一般論として、ウイルスの空間除菌を目的とする空中噴霧や燻蒸を、その有効性および安全性の観点から推奨していない)

 (6)酸との混合による有害な塩素ガスの発生や、次亜塩素酸ナトリウムと混同して使用した場合の危険性等について適切な説明を行っていないものがある。

 (7)広告上で、他社製品の有効性・安全性を誹謗するものが見られる。


    特に上記(5)「有人空間における空中噴霧の有効性」に関する項は、家庭用加湿器などを多数導入して早急に空間除菌を行おうとしていた多くの自治体や学校などにも大きな衝撃を与え、その結果として導入そのものを中止したもの、噴霧ではなく塗布による使用に切り替えたもの、さらに苦肉の策として、人のいない時間帯に噴霧する方法へ変更したものなどが続出し、ただでさえ感染防止対応に追われる現場は大きく混乱した。

    これについてNITE側は、「次亜塩素酸水の噴霧による使用について、同機構が安全面から控えるよう公表したという一部報道があるが、噴霧使用の是非について何らかの見解を示した事実はない」としており、このような行政側の公式見解のわかりづらさが、ますますユーザー側の混乱に拍車をかけているとも言えるだろう。

⇒関連するNITEリンク


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