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【デジタルで変わった事】より速く、大量に、最小限の誤差で。

太古の昔から大天文学者とか大物理学者とか大数学者と呼ばれ敬われてきた人達は、振り子の振る舞いから多大なインスピレーションを得ていた様です。そして1656年にはオランダの数学者クリスチャン・ホイヘンス(Christiaan Huygens ,1629年~1695年)が、イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei,1564年~1642年)の発見した振り子の等時性を定速機構に組み込んだ振り子時計を発明。ジョン・ネイピア(John Napier,1550年~1617年)とヘンリー・ブリッグス(Henry Briggs,1561~1630年)の常用対数表(底10)同様、当時の人類文明の発展を大いに加速させたとされています。

さらに1880年におけるピエール・キューリー(Pierre Curie,1859年~1906年)とジャック・キューリー(Paul-Jacques Curie,1856年~1941年)のピエゾ素子発見から新たな時代が始まりました。加えられた力を電圧に変えたり、逆に加えられた電圧を圧力に変えて波形を生み出す圧電素子。ピエール・キューリーといえば放射能に関する共同研究でノーベル賞を受賞した妻のキューリー夫人(Maria Salomea Skłodowska-Curie,1867年~1934年)の方が有名ですが、ピエールによる観測機器の精密化こそが放射能研究着手の前提だった事、そしてまさにこの圧電素子こそが水晶時計などあらゆるデジタル機器の心臓部となった展開こそが重要です。そういえばピエール、「電気工学の父」オリヴァー・ヘヴィサイド(Oliver Heaviside, 1850年~1925年)同様、それ以前の時代には生まれ得なかった「叩き上げ研究者」の一人でもありました。

一方、第二次世界大戦が終わってもノーバート・ウィーナー(Norbert Wiener, 1894年~1964年)「サイバネティクス(1948年初版,1961年増補)」が「コンピューターと通信は(人類の伝統に従った)十進法でなく(機械が扱うのに最適された)二進法で動作すべき」と念を押しています。十進法でもデジタルには違いありませんが前者が標準化してたらCPUのクロックアップ競争に支障が出ていた可能性が高かったといえましょう。

電子音楽時代が到来してもその最初期を牽引したのは野太いアナログ・シンセサイザーの単音。そしてドナルド・フェーゲン「ナイトフライ(1982年)」が「世界初のデジタル録音」として鳴物入りで登場すると、その深夜ラジオでも流れてるかの様な滑らかな響きが「これぞデジタル」と誉めそやされたのです。その一方で電子化への反動として始まったアンプラグド流行期には、アコースティック楽器の音色が「これぞアナログ」と絶賛されました。音楽頒布媒体がレコードや磁気テープからCDなどに次第に置き換えられていった時代、私も含めた「エレクトロニクス時代の20世紀的一般人」は誰もがそうやって「デジタルにもアナログにもそれぞれの持ち味がある」などともっともらしい理屈を捏ねながら、何が進行中か分かってる振りをしようと努力を重ねていたのです。

21世紀に入るともういけません。「デジタルである事」がその本質を剥き出しにし始めたのはARPANET時代から規格だけは存在してきたIP電話が「災害時の回線パンクに強い」なる触れ込みで実用化され始めたの1990年代あたりから。そこからのトラフィック爆発は凄まじく、音声データばかりか動画データまで一緒くたに流れてくるその濁流は、気付くと(大量の非構造化データを含む)BigDataと呼ばれる様に。これを捌くべくGoogleやAmazonやFacebookなどのIT企業がNoSQLデータベースやクラウド環境の構築に惜しみなく最先端技術を投じ続けた結果、遂に「何もかもがインターネットに接続された世界」が現出し、かつ今日なお維持され続けてるという訳です。まさしくドナルド・フェーゲンが「IGY」で歌ったスローガン「What a beautiful world this will be(何て美しい世界の訪れ),What a glorious time to be free(人間が解放される輝かしい瞬間)」そのもの。これこそが人類が長い間待ち望んできた未来? それともまだまだまだそれに向けての変革の、ほんの最初の1歩に過ぎないとか?


久し振りにドナルド・フェーゲン「IGY」を聴きながら執筆したら、こんな「魔法使いの弟子」みたいに、どんどん速くなる濁流に幾度も流されかけてきた自分の自画像みたいなのが仕上がりました。

ところで、そうやって変わってきたとして、それは本当に「よかったこと」なの? どうやら私なりの結論は「他の選択肢なかった一本道なのだから、もうそう考えた方が楽」という感じみたいですね。プロダクションノート的まとめは以下。

そんな感じで以下続報…

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