オンライン採用が引き起こす新人育成リスクと対応策
本コラムは2021年10月14日に株式会社ジェイック(教育コンサル事業)、株式会社OneColors(採用支援事業)、株式会社情熱(人事コンサル事業)の3社合同開催の
「多くの会社が気づいていない22卒新人の危機 オンライン採用が引き起こす新人育成リスク」
というテーマの対談セミナーをレポートにまとめております。
内定辞退者の割合が過去3年で最大の34.3%。
東宮:では対談に入っていきたいと思いますが、その前に少しだけ「22卒の採用」について、共有します。
実は今回のウェビナー企画する背景のひとつに、「今年は内定辞退が多い」という声があります。
実際に、22卒の内定辞退者が34.3%という数字で過去3年間で最も多くなっています。特に多い企業は50%ほどあり、採用計画が総崩れ、ということもありました。
最も変わったのは採用のオンライン化です。対面とオンラインを比較したときに「社風や職場の雰囲気を伝えるには、やはり対面が適している」と思っている企業様が75.6%。社風を伝える、というのはやはりオンラインだと限界があるということでしょう。
また、「企業理解不足の学生が増えた」と感じている企業様は50.2%。オンライン完結型の採用では「会った人の雰囲気=会社の雰囲気」だと思って入社する人もいるので、企業理解不足や仕事内容への理解不足が数字として表れています。
今の世代には「働くスタイル」がキーワード。
企業側がドライorウェットの打ち出しがカギ。
東宮:ここからは表面化しつつある世代傾向について話したいと思います。こうした仕事をしていると、よく「今の人ってどうなの?」と聞かれる場面もあるかと思います。そのあたり、矢間様はどうお考えでしょう?
矢間:世代によってこの2~3年で特筆して大きな変化があるかというと、そうでもないですが、1点だけ、意識した方が良いなと思った例として「働くスタイルがウェッティとドライに分かれる」といったことです。
例えば昼食を社員同士で行ったり、業務時間中に雑談や「仕事が終わればちょっと一杯」など、仕事から離れたような話もたくさんして人間関係を築いていきたいタイプの人が「ウェッティ」だとすれば、「ドライ」の人は「仕事は仕事と割り切ってプロとして関わっていきたい」というスタイルです。この2スタイルが大きく分けると存在します。
しかしオンラインではウェッティな付き合いができないことが多い。オンラインで先輩に「雑談がしたいです」と言える新人さんはなかなかいないですからね。そのあたりは新卒本人も「自分がどちらを求めているのか」わかっていない人が圧倒的に多いです。
もし採用時点で「ウェッティな働き方」を打ち出しているが、実際にはドライだと新卒にボディブローに似たメンタルダウンが始まってくるかと思います。そのあたりは世代の差というよりは、直近1~2年の働き方・採用の仕方から入社までのところで「どちらで働きたいのか見つめていこう」という新卒へのメッセージを打ち出すことと、会社としてもそれを念頭においてウェッティ/ドライを打ち出すことが大事だと感じています。
東宮:そうですね。採用段階で社員の仲が良いことをアピールポイントとして挙げていると、働き方自体がガラッと変わってしまっているので「意外とドライな会社じゃないか」というショックを受けてしまう人もいると思います。
矢間:当然、会社は学校ではないので雑談する場でもなければ恋人を探す場でもないです。とはいえ、雑談もひとつの魅力だったりするとも思いますし、社内恋愛でご結婚なさる素敵なご夫婦ももちろんいらっしゃいます。そういう要素を重視しているかどうかは個人によるのですが、働いたことがないので新卒本人が自覚できません。「本人が見つけていくこと」と「会社側が把握しにいくこと」が必要だと思います。そういう意味では「Whyの教育」が必要だと弊社としては考えています。
大事なのはモチベーションの原泉。嫌われる勇気をもってしても、伝える意義がある。
東宮:(参加者からの質問)「Whyの教育が大事だと思う一方で、「そういうのは嫌い」「そこまで干渉してこないでほしい」という人もいるのではないでしょうか?」というご質問を頂きました。こちらは矢間さんいかがでしょう?
矢間:素晴らしい質問をありがとうございます。「Whyの教育」にも大きく3段階のフェーズがあります。「なぜこの業務がある?」「なぜこの事業がある?」「なぜこの会社がある?」の3段階ですね。
いちばん最初に入社するときは「なぜこの会社がある?」というところを見ているのですが、いざ入社した後は一気に目の前の業務の「なぜこの業務がある?」にフォーカスがあたります。両方のバランスを取れるのがベストで「君に頼んでいるこの単調な業務はここに繋がっていて、完了するとこのような幸せが生まれる。そして事業が目指しているこれに繋がっている」ということを先輩が伝えてあげたら良いと思います。
「あまり介入しないでほしい」と思う人もいらっしゃるということですが、ここは勇気をもって伝える必要がある部分です。例えばレンガ職人が「レンガを積む目的は一切分かりませんが、レンガを積みたい」ということを表面上は言うかもしれませんが、「レンガによって作られた建物で人々を幸せにする」というような目的があるはずです。モチベーションの原泉は「Why」だと思うので、ここは人間関係を築きつつ先輩が一生懸命伝えて引き出してあげるという、嫌われる勇気をもってしてもやる意義はあると思っています。
「自分中心」と「多様性」の両立。
東宮:ジェイックでもいくつかデータを取っておりまして、今の若い世代の傾向として大きく3つあると思っています。
1つ目は「フラットなコミュニケーションを好む」ということ。上下関係を嫌がる、ということですね。とある会社でも、社内用LINEで上司に向かって友達のようなメッセージを送ったそうですが、受け取った側が昭和世代だったので激怒したということがありました。圧倒的な上下関係が分からないという部分があるとのことです。
2つ目は、「自分自身を中心とした新しい価値観と、多様性への受け入れ態勢がすごく広いこと」です。昔の「個よりも会社を中心に住む場所や時間の使い方を決めてきた」世代から、「自分を中心として、如何に人生を彩り豊かにしていくか?という中のひとつに会社がある」世代に変化したと思います。
3つ目は「自信がない」という事です。21卒の人と今日もランチをしてきたのですが、部活動がなかったことや大学でも交流が減っていること、バイトなどやっていなかったことで体験が薄く範囲が狭くなっていること。自信がないと正解探しをしてしまったり承認欲求が高まってしまったりするかなと感じます。
成長実感こそが唯一無二の特効薬。
堂前:3つ目はまさにそうですね。自信をつけるために主体性、というのがキーワードになります。
主体性には2種類あって「目標設計を自身で行って自らの成長実感を自分で作れる人」と「目標設計をしてもらって、その目標に対して主体的に動く人」というパターンがあります。
どちらにしても、日常業務の中で今の若者は「成長できているという実感」をすごく欲しがる人が多いのです。昔であれば「3~5年かけて成長していけば良い」という世界観だったのが、「数ケ月で成長できていなかったら自分/会社/上司に対して不安になってしまう」となっていますので、成長の棚卸しが重要です。
弊社は定期的に他社との合同研修を行いますが、企業様によっては「若いうちに他社と触れ合わせると、当社のネガティブな部分が見えてきて辞めてしまうのではと思います」とおっしゃることもあります。しかし現代ではいくらでも情報を取れるので外界との壁を作ろうとしても意味がありません。むしろ透明性を求められていると思います。結果を早く求めてしまうので、早め早めに成長実感を味わわせることがとても重要です。
東宮:逃げ場がないといっても早い人はサクッと辞めてしまわれます。理由もネガティブなものもあれば、早々に会社を見極められてしまっているところがあります。「10年経たないと良いポジションに就けないなら、もっと早い段階で成長実感や仕事の経験を積みたい」という人も中にはおられます。そういう人が転職市場に出てこられると「入社してから幻滅した」というニュアンスでおっしゃるケースもあります。
堂前:もったいないと思うのは、「評価制度でしか成長実感を味あわせていない」会社がすごく多いことです。評価や役職が上がらなくても成長している部分はあります。学生時代のアルバイトであれば、時給が50円でも上がればテンションが上がるのです。大きな成長実感はいらないので「こういう事ができるようになったね」という声掛けでもいいのですが、そこが薄い企業が多いように感じます。
「何を大切にしているのか」を発信し続ける意義
堂前:一番大きく企業側が変化させるべきものは、「会社が何を大切にしているのか」をきちんと伝え続けてあげることだと思います。
教育自体を社内だけでなく社外に発信していくことも求められていると思います。
今までは社是や経営理念といったところに掲げられていたのですが、「社内に対する教育」と「社外に対するプランニング」の双方が重要となってくると思っていて、社員に向けた教育が外に対しても同一のメッセージで発信されているからこそ、社内の人間が会社に対して誇りが持てるようになります。
今までは社内だけで良かったのですが、すでに情報の壁が取り払われているので同じメッセージを社内外に発信されている事が凄く重要だと思っています。
東宮:結局「なぜこの会社に勤めているのか」という、今までは空気感で何となくごまかされてきたものが、テレワークが広がり条件だけで見ればどこでも働けるので「この会社じゃなくても良い」と思ってしまう。ドライな視点で見てしまうと同じ条件、もっと条件の良い会社を渡り歩いてしまう。そうした時に「なぜこの会社/仕事なのか」「この仕事にどんな価値があるのか」ということは常に意識できているか。またそれを対外的に発信して価値を感じてもらうことは大事ですね。
伝える手法に迷ったら、動画はかなり「アリ」。
堂前:企業が自分たちで「Whyの重要性」を話すことに困った場合は、YouTubeを見せたほうが早いです。若い人たちは「動画世代」なので。サイモン・シネック氏はTEDの何万再生という動画を提供しておられるので、最初にこれを見せたらほぼ鉄板で納得してくれます。こういう権威性を活用するのもけっこう重要かなと考えています。見せて、納得してもらってから自社についての話をするのが効果的ですね。
東宮:なるほど、今の世代の人たちに対して動画は確かに良いですね。
堂前:自社制作や社長が話している動画よりもある意味良いです。上司の言うことは聞けないけれど、他の人と話しているとすんなりと受け入れられることってあると思います。親が言ってもダメだけど、親戚のおじさんや家庭教師が言うとまぁ聞けるというものと一緒だと思います。
東宮:そうですよね、社内で言い続けてしまうと親から言われているように感じて刺さらなくなってくるということもあると思います。TikTokやYouTubeなどの動画世代には、社内講師が延々とスライドを見せながら喋っていると「入ってこない」と言われるのは確かにあります。話す側もスキルを磨くことや、社内ですべて行うのではなく動画を活用するのは一つかと思います。動画を見まくっているので目が肥えているということもありますね。
「期待値調整」にやりすぎはない。
東宮:ここまで採用手法や世代が変わってきた話をしてきました。コロナの影響もあって働き方も変わってきたという話も出てきましたが、そのなかで22卒の入社前後で取るべき対策としては何かありますでしょうか?10月1日で内定式が終わった後ですので、「こういうことをやっておくと良い」などありましたらお願いいたします。
堂前:期待値調整だと思います。今までの期待値調整は人事側と管理職ですり合わせを行うことが多かったのですが、これからは新入社員本人に対して調整させてあげることが必要です。謙虚な子もいれば慢心している子もいますので、正しく「会社からの期待値」と「自身に対する期待値」を調整することを入社前後でやっておいてあげないと、成長実感も味わえないし「早く結果を求めたがる」ことへの布石としても効いてきます。
東宮:矢間さんはいかがでしょうか?
矢間:堂前さんと同じ期待値の調整ですね。それをどう実施するかという部分での事例でいくと、「入社前後で継続してプチ1on1を実施してすり合わせをする」ことと「それをテキスト以外のコミュニケーション(電話/対面/WEB会議)で行う」ことを実施している企業様がいらっしゃいます。
東宮:そのすり合わせは本人もすごく喜ぶと思います。やはり入社前は不安だったり、自信がなかったり、という方もいらっしゃるということですので、このあたりの頻度は高めに実施し、常に「Why」を意識したすり合わせをする必要がありますね。
まとめ
いかがでしたか?是非皆様の新卒教育がより高いレベルになるためのヒントとなれればとても嬉しいです!
Whyの教育をはじめ、今年の新人研修をよりベストにするためのヒントも動画にまとめています!参考に是非ご覧ください!
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