小説を書いていると起こる不思議なこと
小説を書いているとたまに不思議なことが起こります。
とはいえ、割とよくあることでもあるので、「小説家あるある」なのかな、と思ったり。
その「よくある」ことというのは、思いつきで何気なく書いたことが、効果的な伏線になっている、と気づくことです。
直近では12/20に発売したばかりの『繕い屋 金のうさぎと七色チョコレート』(講談社タイガ)で。
後半の「青い花びら」という章で、主人公の花が千穂という女性の家に行って出される紅茶──それは別にここで出さなくてはならないものではなく、家に遊びに行ったらお茶くらい出るだろう、という程度で書いたものです。若い女性だし、花も高校生なので緑茶じゃないよな、でもコーヒーは千穂っぽくない、ということで紅茶にしただけです。普通の紅茶でもいいのに、なんかこう「花があこがれている千穂だから、おしゃれなものを出すだろう」と思って、アールグレイに矢車菊の青い花びらが入ったフレーバーティーを選びました。トワイニングでいうところの「レディグレイ」という紅茶です。昔、マリアージュ・フレールのをよく飲んでて、好きだったな、と思い出しまして。
それ以上の意味もなく書いたつもりだったのですが、書き進めていくうちにこの「青い花びら」の重要度が増し、結局は章タイトルにまでなりました。書いている間に、
「あれ、これ使える!?」
と気づいて驚いたのです。特に矢車菊の花びらと、千穂の存在意義がとても似ていると気づいた時は、我ながら、
「えっ、なんで……!?」
と絶句したほどです。
最初から考えていたわけではないのに、何気なく、他意なく思いついたものの重要度が増していく現象って、多分プロの小説家の方には憶えがあるのではないか、と思うのですがね。こういうことって、何か名前はあるのかな。意識下でいろいろ検討しながら書いているから出るべくして出てくる、でしかないのだとは思いますが、いきなり表に出現するととても不思議でびっくりして、なんだか得した気分になるのですよねー。
「才能あるんかな、あたし」と誤解してしまいますよ……。
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