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西川美和 『ゆれる」を読んだ後の感想

 この小説も友達が選んでくれた。
 最近は、夏目漱石の作品ばかり読んでいるから、いきなり現代の作品を薦められても、全く読む気にはならなかった。
 しかし、せっかく選んでくれたし、ちょっとした気分転換になると思って読んでみたら、意外にハマってしまい、220ページの小説を2〜3日で完読してしまった。
 読み始めたら、最後まで読み終わらないと気が済まない、という気持ちになるのは久しぶりだった。おそらく、大学時代に読んでいた東野圭吾の推理小説だったかもしれない。
 
 『ゆれる」という小説を気に入った点を挙げるとしたら、主に以下の2つがある。
 一つは、この小説の書き方、つまり本の構造である。それぞれの登場人物の視点からストリーリーを語り進めていく手法は、実に魅力的で、斬新的だった。これを読みながら、芥川龍之介の『藪の中』を思い出した。しかも、この小説のストーリーには重なる部分が少なく、前後は一貫性があって、とても読みやすかった。
 もう一つは、ストーリーの展開である。最初のところは、主人公の深い兄弟愛に感動して読み始めた。しかし、途中から他の登場人物の語りを通して読み進めると、その気持ちが少しずつ変化していた。最後に、お互いを憎しむ兄弟であった現実を知ると、背中に冷や汗をかいてしまった。人間の心ほど奥深いものはないなぁと改めて思い知らせられた。

 以上、私が『ゆれる」を読んで考えたことである。一言でまとめていうと、面白い小説だった。


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