【物書きコラボ】死が二人を分かつとも

や、東天紅やよいだよ。

先程 7/13 22:00~ の物書きコラボで出来た成果物を載せちゃおう。

今日も一緒にコラボをしてくれたのは、

物書き系自動人形VTuberのアピィ ( @appy_automata ) だ。

Twitter : https://twitter.com/appy_automata

Channel : https://www.youtube.com/channel/UCYGRrQjTI3jjBVYal9nbv3A

今後も定期的にやっていきたいから、是非よろしく……♪

今回は、

お題:アピィ→やよい→アピィ→やよい→アピィ の順だよ。


今回の表題を考えてくれたのは、隣のお姉さん、だよ。

しっくりくるのを考えてくれてありがとう……♪

Special Thanks★ https://twitter.com/do_nothing_one

 時代が移り変わるその節目、街中は浮足立って電光掲示板に向かって熱を帯びていた。
 ある者は仕事帰りの様相、またある者は酒瓶を逆手に持ち浴びるように飲みながら、或いは
唯々お祭り騒ぎに身を任せるかのように、一時的に歩行者天国となった渋谷のスクランブル交
差点は一様にざわめきだっている。
 電光掲示板には新たな時代を告げる内容の広告や動画、ニュースなどが入り交じり更なる喧
騒を生み出して、流石に華やかな幕開けに泥を塗る輩はいないようだが、それでも警察官たち
は暴走しないように抑え込むのに余力を惜しまない。
 そんな中、喧騒から少し離れた場所で一組の男女が乱雑に腰を下ろしていた。地面にはどこ
からか飛んできた新聞を適当に尻に敷き、男の方は瓶詰の飲み物を手にしながら大きく呷って
いる。特段喧嘩などをしているようではなく、唯々何となく、その場に『在る』といった所在
の二人だ。

「……信じられるか?」
 男のほうが口を開いた。
「平成が終わるなんてよ」
 誰かに向けた言葉ではなかったが、女は応えた。
「私達が生きた時代がこれで一区切り、か」
 視線の先には肩を組んで歌う、陽気な若者の集団。
「ま、今回の改元はいいんじゃねえか? 何せ人が死んでない」
「前回は陛下が崩御したんだっけ」
「そ。だから何となくお通夜ムードで」
「それに比べて今回はどうだ、街中お祭りムードだ」
 男が傍らに置いたカバンから缶ビールを二本取り出し、開けた片方を女に渡した。
「ん」
「ありがと」
 缶を軽く合わせる。

「漸く "今回" もこうして酒が飲める歳になったからな、今度こそ」
「ん、そうだよ。今回こそ、ちゃんと答えを出してもらうよ?」
 ふふ、と、女は悪戯っぽく笑顔を見せた。
 やれやれ、と多少おどけながら男は缶ビールを軽く掲げる。
「前回は酒が飲める歳になる前に特攻して死に、令和の世ではお前を見つけることなく死んで
しまったわけだし」
「私の方もお前の赤紙を見た時は血の気が引いたよ。結局帰らぬ人を待つまま終わり、前回は
会えないまま私も寿命がきちゃったしね」
 ぐび、と、缶の中身を一気に呷り、両手で潰す。
 ひゅう、と、口笛を吹く男の頭を流れる動作で叩きながら、
「今回は本当に運が良かったね。
 戦争の前に待ち合わせ場所に咲く花を目印にしてて」
「や、あれはほら──」
「知ってる。唯々単に死ぬ前に格好つけたかったんでしょう馬鹿」
 うぐ、と、男の方が詰まる、その様子を見て、くす、と、女が笑う。
「──、でも、嬉しかったさ。君が変わらず、あの花が咲くあの場所で、ずっと待っててくれて」
「……、ま、約束したからな。『迎えに行くさ』って」
 ぐび、と、照れ隠しのように酒を呷り。立ち上がる。女の前に。
「江戸で添い遂げて、最期に『生まれ変わってももう一度一緒に』って願ってから。こんなに
かかっちまった」
 
 人生数回分の回り道。
 ささやかな願いを呪いのように思った事もあったけれど。
 全てこの時のための布石だったと思えば、悪くなかったのかもしれない。
 ずっと言おうと思っていた言葉を、女に告げる。
「何度生まれ変わっても。貴方を愛しています」
 ポケットから指輪を取り出し差し出す。
 女は覚悟していたような、それでもやっぱり驚いたような。
 ひと目でそれと知れない表情を浮かべたが、やがて目に光るものを浮かべながら笑った。
 男に右手を差し出し、
「はい、私もです。愛してますよ、」
 女が指輪を受け取った瞬間、街頭モニターの時刻が零時を刻み、
「――」
 告げた言葉はそこかしこで挙がった歓声と、クラッカーの音によってかき消された。

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