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Pops on the Farm

 僕の友人、杉山彰さんの作った曲をもっと多くの人に聴いて欲しいな、とずっと思っていた。ここに「勝手に応援団」の「勝手に曲紹介、勝手にライナーノーツ」を書かせてもらいます。

 彰さんと出会ったのは、埼玉県にある障害児の学童保育「風の子クラブ」だった。子どもたちの前でギターを抱えて歌い出したのはポール・アンカの「ダイアナ」。相手が子供だって関係ない、なりふり構わずとにかく歌が好きで好きでしょうがない、という気持ちがダイレクトに伝わってくる演奏だった。頭をガツンと殴られたような衝撃だった。気がつくと握手をするために歩み寄って手を差し出していた。しかも話してみると農業をやっているという。その農業というのが自然農法の祖、福岡正信さんの「わら一本の革命」に触発されていろいろチャレンジしている、というので二度ビックリ。僕も「わら一本の革命」を読んで衝撃を受けたひとりだったのだ。「迷っているんだったら、僕が背中を押してあげます」とも言ってくれた。何を「迷っている」かというと、農業に転職することを、である。初対面の人に普通そんなことは言わない。

 次に彰さんに会ったのは、僕が家に訪ねて行ったときだ。サイモン&ガーファンクルの「Mrs.Robinson」を試しにふたりでデュエットしてみたら、いきなり「ちょっと録音してみよう」と言って録音機材を出してきたのでまたビックリ。その後田んぼを案内してもらった。「ここが僕の職場です」と言ってニッコリ笑ったのが印象に残った。ここが僕の職場、かぁ。

 それから20年以上が経ち、いろんなことがあった。今、お互いに遠く離れた村で暮らしているが、同じような志を持ち、これからも励まし合って生きていけたらな、と思う。

 さて。杉山彰さんの音楽観について僕はそんなに語れない。ビートルズは好きだけど全然詳しくない。そもそも洋楽をほとんど聴かずに育ってきたしギターに興味を持ったのも大人になってからだし。語れるとしたら、あくまで僕の好きな彰さんの世界、という限定された部分だけである。それでも十分に魅力的なので、お許しいただきたい。

 彰さんの「Pops on the Farm」。意訳すると「農村ポップス」いやむしろ「山村ポップス」が近いと思う。彰さんの音楽のいいところ、その1。情景が目に浮かぶ。例えば「僕のふるさと」。「車の窓から 吹き込む夏の風 この村に会いに来た ぼくにあいさつする」これだけで景色が立ち上がってくる。

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例えば「雪かきまつり」。「まっしろな朝 まるでお祭りの日みたい 太陽久しぶり みんな外に出てる」と鮮やかな白一色の情景から始まり、「母さんたちは赤や黄色のショール 父さんたちもカラフルなスコップを持って」雪かきを始める。雪が片付くとホッと一休み。やがて夕方になり、再び静かに雪が降り始める・・・。僕自身も豪雪の東成瀬村で4冬を過ごした経験のおかげもあるが、映画のひとコマひとコマのようで、リアル感がすごい。

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 彰さんの音楽のいいところ、その2。楽曲と歌詞の完成度が高い!計算しつくされている。たとえば「僕のふるさと」のサビの部分「♪ひ・が・し・な~るせ、ぼ~くのふるさとになるむら~」。「ひがしなるせ」の言葉の高低をそのまま活かした音型になっている。だからすごく自然で歌いやすい。それから韻の踏み方がいい。英語の歌詞の歌はもちろんだが、日本語歌詞の歌でも巧みに韻が踏んであり「おお、カッコいいー」と思ってしまう。その代表が「山菜天国」。「山は無料のスーパーマーケット」ときて3行先に「太いワラビが今日のターゲット」ときた。「腰にはコダス(コダシ)だけ」ときて3行先に「それともネマガリダケ」とくる。

 彰さんの音楽のいいところ、その3。メッセージ性がある。例えば「Paradise」。地球は元々パラダイスだったんだ、僕たちは何にもしなくても十分だったんだ。それなのに僕たちがやってしまったことをみてごらん。今代償を払っている。・・・これは環境問題へのメッセージと僕は受け止める。例えば「Slow Down」。働きすぎて身も心も疲れ切っている友人に「スローダウンして、自分の心の中に流れる音楽に耳を傾けてごらん」と呼び掛けている。これは「右肩上がりはもうやめよう、脱成長しようよというメッセージだと僕には思える。他にもメッセージはあちらこちらにちりばめられていて、聴くのが楽しい。

 そんな「Pops on the Farm」。下手な解説はこの辺で終わりにして、是非聴いてみてください。下記リンクから一曲ずつ再生できます。今どき古くさいやり方かも知れませんが、20年近く前に友人で勝手に応援団的にアップしたデータですので、お許しを!「Slow Down」はデータ復旧中で、未登録ですのでそれもご了承くださいね。

 また、杉山彰さん&あおいさんのホームページは下記。彼らが埼玉から移住してきて20年あまり、豪雪の秋田県東成瀬村で暮らしてきた軌跡の一部を見ることができます。

 10月9日、追記。「Pops om the Farm」番外編として、「パワフル秋田人」を紹介しました。

 また、「Pops om the Farm」勝手に解説の第2弾(余計なお世話・・・)を予定しています。そちらもよろしければどうぞ!


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