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ひとりからでも始められる働き方改革

 斎藤幸平さんの「人新世の資本論」。世の中は労働のあり方から変えていける、何をどれだけどうやって生産するかを労働者自身の手で決めることから変えていける、そう説いています。本当にできるのでしょうか?僕はできる、そう思います。

 今年4月にこの本を手にして、「じゃ、いったい僕は何をやったらいいんだろう?」と考えました。いろいろ考えた中でのひとつの方法が「ひとりからの働き方改革」

 例えば会社の方針とか、大きな提案とかは、トップが動かない限り変えることは難しい、いや、できない、と無力感が漂ってしまいます。でも、自分にできることはないか。それは「自分自身を変えること」。別に無理して自分を変える必要はありません。「できることから」始めればいい、そう考えました。

 勤め人でも自営でも労働時間は一日の大部分を占めます。そして会社の同僚なりお客さんなりと接する時間も積もり積もって人生のかなりの部分を占めることになります。同僚との接し方ひとつでも、わずかに変えることで知らぬ間に積もり積もって大きな差が出てくるのではないでしょうか。そう考えると、自分にできることが見えてきます。

 例えば取引先の業者とのやりとり。にこやかに挨拶する。相手に好意を見せる。狭い通路を譲る。荷物を抱えていたらサッとドアを開ける。気持ちよく「ありがとうございます。ご苦労様です。」と声をかける。
 例えば同僚とのやりとり。何かしてもらったら必ず「ありがとう」と返す。自分の手が空いたら相手の業務を手伝う。困った時に手助けする意思表示を明確にする。相談事を受けたらとにかく親身になって聴く、相手の意見を受け止めつつ、何か役に立つアドバイスができないか考える。
 例えば部内のやりとり。朝礼で昨日起きた困りごとをオープンにして対応の進め方を共有し、みんなに協力を求める。無駄な労力を減らせるアイディアを担当者に提言する。

 ひとつひとつは小さなこと。ポイントは自分にできることをコツコツ継続してやり続けることだと考えました。「当たり前のことを当たり前にできるようになりたい」。当たり前のことができないから今の世の中になっているんじゃないか、と。相手に対して「正直、親切、愉快に」接すれば、と

 「ひとりからの働き方改革」をひとりで始めて6か月ほど経ちました。天は見てくれているのでしょうか、その間に職場の同僚から声を掛けられました。その人は本気で職場を変えていきたい、と考えている人でした。意気投合していろんなことを深く話せるようになってきました。自分のやっている方向性は間違いない、と確信が持てるようになってきました。

 相手に好意を示すと、好意を受けた側も何か好意で返したくなる、あるいは誰か他のひとに好意を伝えたくなる。この人の味方になりたい、助けたい、損得勘定抜きでの協力関係が芽生えてくる。寡黙でポーカーフェイスの若者がちょっとした冗談で笑ってくれるようになった。職場をなんとか盛り上げていきたい、と行動に移す若者が出てくる・・・。全部実際に僕の職場で起きたこと、起こりつつあることです。奇跡でもなんでもありません。

 最初の変化はごくわずかにゆっくりと。でも、少しずつ目に見える変化が出てきているようです。トップが変わらなくても、会社の方針が変わらなくても、職場の雰囲気が少し変わってくるだけで、職場の居心地が良くなって働き心地もずいぶんと良くなってきた実感があります。

 人はひとりではあまりに弱い。でもひとりから始めても、それがもうひとり、またひとりとつながっていけば、「ゆるやかな連帯」が生まれる。人の潜在能力はものすごい。それを引き出せる環境をみんなで作っていかなくちゃ。

 「ひとりからの働き方改革」は動き出したようです。「みんなの働き方改革」と呼べる日が早く来るといいな、そう思います。

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