大人の発達障害専門クリニック Part1
モトオは自分が発達障害かどうか白黒つける為、自分で大人の発達障害のクリニックを見つけて予約まで取ってきました。子供の受診には何ヶ月も待たされたので、拍子抜けするくらいでしたが望むところでした。そこはリワークプログラムなども兼ね備えた珍しいクリニックでした。数年先まで予約がいっぱいという昭和大学附属烏山病院くらいしか知らなかった私は異例の速さで取れた予約に戸惑いながらも、やっと専門家と繋がれることを喜んでいました。
初診外来に必要なもの
発達障害の診断には、親や配偶者からの聞き取りが重要になる為、基本的に一緒に行くことが求められます。
初診の際、小学校の時の通信簿も必要だというので、モトオに確認すると「ちょっと前に捨てた」とさらっと言われました。
認知の歪みって、こういうこと?!
「なんで?」と聞くと、「あなたが捨てろと言ったんでしょ?!」と、逆ギレ。
聞き捨てなりませんでした。
「ちょっと待って、そんな大切なもの捨てろなんて言うわけないでしょ!? どういうこと?」と、細かく聞いていくと、随分前に荷物の整理をしようという時に私から言われたと言うのです。
彼は物を捨てられず、とにかく全て取っておく人だったので、卒業証書などが入った筒を生涯分全部と言って何十本も持っていたのです。
小さい頃の頑張りました的な賞状なども筒ごと全部取ってあって「全部はいらないでしょう」と言ったのは確かに覚えています。でも、それはその筒の山のことを言ってのです。
なのに、彼はそれを『通信簿を含む学校時代の物全ていらないから捨てろ』と言われたと思って捨てたと言うのです。そんなことを言う『私は一体どんな人なんだ』って話で普通なら考えたら分かる話ですが、それが分からない人だったのです。
私の「全部はいらないでしょう」は、当たり前に『大切な証書だけ残して、後はいらないでしょう』という意味だったので、まさか高校の卒業証書や全部あった通信簿全てを捨てるとは思いもしませんでした。本当にゼロか百で、極端なのです。
せめて捨てる前に「じゃあ全部捨てるからね」と声をかけてくれれば防げたでしょうが、残念ながら報告、連絡、相談をしないモトオは確認などするわけないのでした。私も気になっていた彼の通信簿は、これで葬られてしまったというわけです。
物が片付けられないのは優先順位がつけられないから
物が片付けられないモトオは優先順位がつけられない為、何が大切で何が大切じゃないのかが分からないのでした。結果、全部取っておく事になってしまうのは、特性や性格が色々絡んでいるからでした。
私達はその時、筒と証書の話しをしていたので、主語は自ずと筒と証書でした。けれど、日本語の場合、話しの流れからお互い理解していると思われる主語は省略するので、話しの流れが分からない彼にはなんの話をしているのか分からなかったというわけです。
いつも話が噛み合わなかったのも、恐らくこの日本語特有の話の流れが分からないことが関係しているのだと思います。
分からなければ相手に確認すればいいのですが、「本人自身が自分が分かっていないことが分からない」ので、普通に話して分かるものではないのです。
彼が私に言われて通信簿を捨てたと言った時、私は「そんな馬鹿なわけないでしょ!?」「なんでそんな馬鹿なことしたの!?」と思わず連発して、馬鹿と言っていた気がします。これほど馬鹿なことを経験したことがなく呆れていたからです。
けれど、恐ろしいことに、この時彼はそれを義字通り取り、私から侮辱されたとフツフツと思っていたらしかったのです。こうして私は日々オレを精神的に虐待してくる妻にされていったようなのですが、そのことを私が知るのはずっとずっと後になってからでした。
知識ある人に話しを聞いてもらうことの重要性
ムスメの心療内科には通っていましたが、私自身では診察を受けたことはありませんでした。楽観的な私が行くところではないと思っていたし、自分のことを考える余裕がないくらい毎日振り回されていたので、そういう考えにならなかったのです。受付を済ますと私達はそれぞれ別の部屋に呼ばれ、違う臨床心理士に話しを聞いてもらいました。
私はこの時初めて、結婚してからの理不尽な話しやそれまで誰にも信じてもらえなかったモトオの話しを意見されることなく聞いてもらえたのでした。これは私にとって大きなことでした。
「発達障害のパートナーを持つ人で同じような悩みを持つ人は多く、大変でしたね」と言われた時には大泣きしてしまいました。人前であんなに泣いたのは初めてでしたが、気持ちが楽になったのを覚えています。
結婚が辛いと思ったずっと昔に受診できていたらと思いますが、当時は自分がメンタルクリニックに行くなど考えられませんでした。
変わった担当医
ちょっと脱線しますが、モトオの担当医について書きます。最初に私の話しを聞いてくれた臨床心理士とは、かなり印象が違い始めから違和感がありました。
まず女性的な話し方がなぜか歌舞伎町風で、話す度にここはゲイバーかと気になりました。そして、更には小指を立てるので気が散るのなんのって。『偏見はいけない』と考えないようにしましたが、帰り際私に「〇〇に似てるって言われませんか? いや、ずっと似てるなあと思って」と言ってきた時は、限りなくヤブかもしれないことに気づきました。
一方、モトオは違っていました。人の仕草や様子が全く目に入っていないのと意味が分からないので、私が上記のことを言ってもピンとこないようで、それどころかなぜか彼はこの”ピンキードクター"が気に入ったようでした。
理由は簡単でした。ピンキーがモトオが勤める会社の産業医をしていたからでした。ピンキーがその会社の話を出すとモトオは大喜びでした。お互い優秀で優良な会社で勤めてることを褒め合い、しばらく意気投合していました。
実は、彼はそれまで鬱で他のクリニックに掛かっていましたが、どの医者も酷い!あり得ない!と文句をつけて転々としていたのです。
彼が文句をつける医師たちは、ほとんどが有名だったり、評判がよかったりしていたので、その時彼の言葉を信じていた私は世間の評価と実際は違うものなのかと思いました。けれど、そもそも彼の認識は偏っていたので、彼が嫌っていた医師たちは、実はまともな人たちだったのかもしれないと思うと本当にややこしいのでした。
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