感じよく「そうだねえ」が言えない件
相槌や同調は会話に欠かせない潤滑油
相槌を打ったり「そうだねえ」と人に調子を合わせたりする言葉は、会話に欠かせないものですが、会話が苦手な我が家のふたりには、それが難しい作業のようでした。どちらも相手のことをよく見たり、考えたりしなければ上手くできないことだからです。ただおかしいのは、ふたりとも相手が他人だとちゃんとやれるということでした。
発達グレーの人たちは、学習したり練習したりすると出来るようになることがありますが、この他人にだけ良い顔をするという行為は、家族の心を八つ裂きにする行為だということを知っていてもらいたいものです。
「今日は寒いねえ」
午前中晴れていた空が一変して、どんよりした曇り空になったのは、誰の目にも明らかだと思っていました。部屋の明るさが違うので、レースのカーテンを開けなくても曇ったことは分かりそうなものですが、視野の狭いムスメにとっては、そんなに明白な情報も気づかなければ頭に入らない情報だということを私はこの時まだ知らなかったのです。
私は日が陰って寒くなった気がしたので「今日は寒いねえ」と何気なくムスメに話しかけました。すると、ムスメは間髪入れずに「外の方があったかいですけど」と斬り捨てるように言ってきたのです。
どう見ても外の方が暖かそうには見えないので「どういうこと?」と聞くと、「今日外を歩いてた時、あったかかったから、そう言っただけ」と言うのです。
「うーん。でも、「寒いねえ」って言ったら、「外の方があったかいですけど」って言われたら、なんか急に喧嘩売られたみたいに感じるんだけど? 言った人は「そうだねえ」とか優しい返事を期待してるのよ。それに今、外寒そうなのに『外の方が暖かいから外に行けば?』って言うのはおかしくない?「は?何言ってんの?」って思っちゃうよ」
すると、ムスメは「そんなこと言ってません! ママが勝手に言ってるだけでしょ!? せっかく返してあげたのに、そんなこと言われるなら返さなきゃよかった!」と言って怒るのです。
怒るわけ
実は「今日寒いねえ」には『私は寒く感じるけど、あなたも寒く感じませんか?」と寒いということを共有しようとしているので、返事は寒いか寒くないかなのです。
ほとんどの人は「そうだねえ」や「寒いねえ」と寒いということに共感して調子を合わせてくれたり、寒く感じなければ「え、そう? 私は寒くないけど」と言ったりして、会話を円滑に進めようとするのですが、ムスメはこのやり取りをする事自体の意味が分からないと言います。
会話には「そうだねえ」だけでいいことがあるとよく話すのですが、それが難しいようです。
昔はこういうやりとりが謎過ぎて、私も一緒に怒っていました。暗黙の常識というか、心の理論が働けば分かることなので、分からないことが分からなかったのです。今は私がそこに気づけるので、この日もその後、たっぷりふて寝をして落ちついたムスメと話し合って、わだかまりは解けたのでした。
お互いの情報を冷静に確認する努力が不可欠
ムスメに天気の変化の情報がまるでなかった事には驚きました。部屋の明るさから日が陰ってしまったことくらい分かりそうですが、こういう当たり前の情報が瞬時に入らないことが会話のハンデになるのだと気づきました。
ムスメには晴れていた午前中の記憶しかなかったので、私が「今日寒いねえ」と言ってきた時はムスメは逆に『一体何を言ってるんだ!?』と思ったそうです。
「返事が『そうだねえ』でいい」と私が言ったことにも、寒いと思ってないのに「そうだね」と嘘をつかなければいけないのかと思って腹が立ったそうです。
なので、「寒くないなら『そう? 私は寒くないけど?』って言えばいいんだよ」と言うと、そこでやっと腑に落ちたように「ああ…」となったムスメでした。
つまらないことかもしれません。けれど、違う脳を持つ者同士が平和に暮らすには必要不可欠。話し合いは大事なのです。
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