「地方に教育移住」で杞憂だったこと(1)
コロナ禍を経て、地方移住を考える人が増えているようです。認定NPO法人ふるさと回帰支援センターによると、移住の相談件数は2021年と2022年に2年続けて過去最高を更新したそう。
子育て世帯の場合、移住を考えたときに気になることのひとつが、子どもの教育でしょう。「豊かな自然のなかでのびのび育ちそうだけれど、都会にあって地方にないものもたくさんあるのではないか……」と。
私が気にならなかったこと
私の場合、子どもを通わせたい学校があって移住を決めたので、「良い学校があるか」という課題はクリアしていました(子どもにとって本当に良いかどうかは、入学してみないと分からないことですが)。
また、いわゆる”良い高校”や”良い大学”にストレートで行ってほしい、という希望はありません。受験のための勉強よりは好奇心をもって探求することに時間を費やして欲しい。それを存分にやっていくことで、いつか「自分のやりたいこと」に出会ったとき、そのために努力する力が身につくはずだと信じています。だから、塾がない、進学校がないといったことも気になりません。
私が気になっていたこと(その1)
気になっていたことは、大きく分けてふたつあり、そのひとつは、文化芸術に触れる機会や習い事の場があるかどうか、ということです。
結論から言うと、我が家の場合は、その心配は杞憂でした。
リーズナブルな習い事が豊富
まず習い事ですが、うちの子は今、以下の習い事をしています。
・バレエ(通年)
・英会話(通年)
・書道(期間限定)
・歌唱(期間限定)
・スキー(期間限定)
バレエは大日向小学校の学童内で週2回、保護者でもあるプロの指導者の方が教えてくださっています。コンクールを目指すという感じのものではなく、あくまで楽しく踊ることを大事にしてくれる教室。だからこそ続けられているんじゃないかと思います。
英会話は、うちはオンラインでやっていますが、学童内の教室で学んでいる子もいます。
学童でいろいろやらせてもらえるのも大変ありがたいのですが、それ以上に驚いたのが、町の公民館で開いてくれる教室が充実している点です。
「子ども公民館」という企画で、5月頃から3月の間に月に2〜3回の頻度で、書道、生花、将棋、日本舞踊などの教室が開かれ、無料または実費のみで参加できます(定員オーバーの場合は初めての人優先になったりします)。
「子ども公民館」とは別にダンスの教室があったり、地域のスポーツ少年団もあります。スキーは町内の「八千穂高原スキー場」主催のジュニアスキークラブという活動があり、シーズン中のほとんどの土日にレッスンを受けられるというもの。これはリフトのシーズン券も込みで3万円と、非常にリーズナブルだと思います(2022-2023シーズン時点での値段)。
あと、これまた公民館主催で、数百円で参加できる「歌唱教室」。期間は3ヶ月ほどで、どちらかというと大人向けの教室ですが、うちは2年連続で親子で参加。それぞれ自分の好きな歌を持ち込んでプロの先生に指導してもらいました。最後に町のホールでピアノ伴奏付きで歌う発表会もあり、とても贅沢な経験をさせてもらっています(子どもは来年度も参加したいとのこと。私も、次は何を歌おうかな〜と考え中です!)。
どれも、もっと上を目指そうとすれば、物足りない、遠くの教室まで通わなければいけない、そもそも通える場がない、ということがあるでしょう。
でも、何をするにしても、子ども自身が興味をもち、やりたいと思わないことにはうまく行きません。まずはいろいろと経験できる入り口が身近にあるのは、とてもありがたいことです。
徒歩20分のホールで観て聴いて、パフォーマンスできる
文化芸術に触れる機会については、町の公民館「茂来館」のホールで意外と頻繁にコンサートや演劇などが上演され、しかも我が家からは車なら5分、徒歩で20分の距離なので、すごく気軽に行けるのです(小さな町なので、町内のどこからでもそれなりにアクセスが良いです)。
小さいホールですから、世界的に有名な楽団やアーティストが来るということはあまり望めません。
でも、町にゆかりのある方による演奏や、子連れOK、声を出してもいいよ、一緒に歌いましょう! という感じのカジュアルな催しが多く、チケット代も良心的。「音楽って楽しいね」「プロの演奏ってカッコいいね」と心から楽しめる機会がしょっちゅうあるのは、年に1度かしこまったコンサートに行くよりも、子どもにとっては幸せなことかもしれません。
さらに「凄いな!」と驚いたのが、町民が舞台に上がる機会も頻繁にあることです。
茂来館には、昭和初期に日本に輸入され、今は国内に3〜4台しか残っていない希少なドイツ製のグランド・ピアノ「スタインベルク ベルリン」があります。
町内の学校で数十年間お蔵入りしていたものを20年ほど前に修復し、最近はそれを積極的に活用しようと、プロの演奏家を呼んでのコンサートが年に何度も開催されます。それに加えて、毎年「スタインベルク ピアノ リレーコンサート」という催しがあり、何人もの町民が順番に舞台に上がり、ピアノ演奏や、ピアノと他の楽器、あるいは歌との共演を披露します。
それ以外にも町民文化祭や、町内のアマチュアバンドが複数出演する「MO'Live」、演奏だけでなくダンスなどのパフォーマンスもありの「寄せ鍋コンサート」など、町民が舞台に上がる機会がたくさんあるのです。
このnoteのトップに載せた写真は、先月の「寄せ鍋コンサート」での一幕。大日向小学校の保護者などで結成した「魅惑のウクレレ団」で参加しました。演奏技術はまだまだですが、客先の皆さんも暖かく見守ってくれ、楽しくパフォーマンスしてきました。
子どもも、小学校の「音楽クラブ」で「寄せ鍋コンサート」に参加しました。
大日向小学校は職員同士でバンドを組んでいたりして、音楽好きなスタッフがたくさんいます。また、子どもが持っていっていけないものもほとんどないので、うちの子は最初はウクレレ、最近ではギターを、お友だちや学校のスタッフさんなどに教えてもらい、随分上達しています。昨年からは、2年生と3年生の女の子たちでバンド活動も始めました。こんなふうに、生活の中に自然に音楽やアートがあるような環境を移住後に得られるというのは、嬉しい驚きでした。
次回は、子どもの教育でもうひとつ心配だったこと、それも杞憂だったよ、という話を書きたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?