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『憧れ写楽』(文藝春秋)発売です

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 はい、タイトルからネタバレしておりますが、ついに発売しました。

 谷津今年最後の(小説での)露出になると思います。
 文藝春秋さんより、『憧れ写楽』が刊行となります。
 美術史に詳しい方ならお気づきですね? そう。本作は東洲斎写楽を扱う時代ミステリ小説であり、写楽を売り出した蔦屋重三郎を扱う大河ドラマ便乗小説なのです……!

 本作は、十年越しの宿題でした。
 2014年に学研さんから刊行されて話題となり、先月文藝春秋さんから刊行された『蔦屋』

は、歴史小説としてはかなり尖った作りで、蔦屋重三郎の若い頃(吉原時代)をバッサリ切っているんですね。なんでかというとその辺りの時代の蔦屋重三郎がかなり商人として尖っており、恐らくどう書いても生き馬の目を抜く商人街道を突っ走るやり手商人を書くことになりそうだったからです(『蔦屋』を読んでくださった方は、わたしがそのように本作を書いた理由を承知してくださるものと。今でも、吉原時代の彼を書かなかったのは英断だったと思っています)。
 そして、もう一つ、書かなかったものがあります。
 東洲斎写楽の正体です。
 ここについては今でも覚えているのですが、当時の担当編集者さんからの要請でした。
「色々面倒なので、あまり写楽には深入りしないでください」
 当時のわたしでも、その意味はよく分かりました。
 フィクション、ノンフィクションの別を問わず、写楽正体説ものは様々なメディアを跨がる大きなジャンルを形成して今に至っています。当時新人であった谷津矢車には荷が重い、そんな編集者氏の判断は妥当というものです。そんなわけで、わたしはほとんど写楽について書きませんでした。

 なんですが、写楽を書かなかったことについて、ちょっとした後悔はあったんですね。当時のわたしはまったく写楽の正体について考えておらず、最近ではほぼ定説扱いだった斎藤十郎兵衛でいいやんけ、などと思っていたのです。

 ところが、それから約八年、色々あって斎藤十郎兵衛=写楽の企画書を出した際、編集者氏にこう言われたんです。
「谷津さん、どうせなら写楽正体説ものをやりましょうよ」
 マジか。
 繰り返しになりますが、写楽正体説ものはとんでもない量の蓄積がなされているジャンルです。小説だけでもめちゃくちゃあります。どうすんだこれ状態ですよもう。
 とはいえ、絵師小説を看板にして幾星霜やってきてしまった谷津としては、ここで逃げるわけにもいかず……。かくして、谷津は誰も書いていないだろう写楽正体説ものをなんとかひねりだし、物語に仕立てていったのです。

 おかげで、よくぞまあこんなものを、というものが出来上がりました。
 谷津は今、やりきった感があります。
 まあそのなんだ。作家をやってて良かったな、という、妙な達成感があります。
 そんなわけで、ぜひぜひお買い求めを!

 なお、本作の刊行を記念してエッセイを書きました。
 こちらもご参考に。


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