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自分を馬だと思い込んでいる牛と、海の向こうで行われている競馬みたいな犬のレースの話

フランスにいる、乗用馬みたいな牛

 Astonという牛をご存知だろうか。

https://news.nicovideo.jp/watch/nw4980420
(なんかリンクが貼れない……)

 詳しいことはこちらの記事を読んでもらうとして、フランスで生まれたM309、のちのAstonは、雄牛であるが故に屠殺されそうになっていたところを一人の馬の調教師に譲り受けられた。飼っているポニーの障害飛越調教を熱心に観察しているAstonを見た彼女が試しに調教を試みたところ、Astonは馬場馬術の技を多数習得。今では『自分のことを馬だと思い込んでいる牛』として、1メートルほどの障害を華麗に飛越するショーで世界中を回るなど、人気を博している。

 今年の一月、日本でこの牛がちょっとした話題になった。日本における大学受験の第一関門、前年まで行われていた大学入試センター試験に代わって2021年度から新たに施行された大学入学共通テスト、英語リーディングの問題文の題材として、Astonとその調教師の話が出てきたのである。

 筆者もこの問題を受験生として会場で解いていた。同じ高校の人は全員同じ会場で受験しており、リーディングが終わった後に会場の外で友達と集まっておしゃべりしているときにも、この話題が出たことを覚えている。今後の人生をかけた極度の緊張状態にいる受験生に、その人生を賭けた英文の題材が「自分を馬だと思い込んでいる牛」であるという衝撃はあまりにも深すぎた。まさしくディープインパクトであった(?)

 この英文が出題された第五問は、試行調査や模試の段階から「海外の著名人の生涯」や「食べ物の歴史」に焦点を当てた英文が多く、なんでも今回も人物だろうと思っていたところにいきなり牛が出てきたことで、Astonのことを「自分を人物だと思い込んでいる牛」だと思った筆者がいるとかいないとか……。

 さてこの共通テスト英語リーディング、センター試験から共通テストに変わるに当たっての難易度の調節、及び「こういう問題出しますよお」という傾向の提示を目的に文科省と大学入試センターが行う「試行調査」の時の問題から出題傾向が大きく変更され、当該受験生を阿鼻叫喚の嵐に巻き込んだ。高校の英語の先生が、共通テスト後に自己採点をしていた教室に一人やってきて、文科省の愚痴だけ言って颯爽と帰っていったことを今でも覚えている。

 ちなみに共通テスト以前にはイッテQにも出てたみたいです。

 閑話休題。

 共通テスト受験からおよそ半年が経ったこの前、ふとこの牛のことを思い出した。「そういえば動画見たことないな」と思い、牛の巨体が高い障害を乗り越える圧巻のパフォーマンスに期待をしつつYoutubeで検索をかけると……

……なんだこれ。犬? いや顔怖。


 見てみると、犬がレースをする動画であった。Astonと名の付く犬がコースレコードを取るという出来事が最近あったため、検索上位に入ってきたようだ。なんでもオーストラリアでは犬が競馬みたいなことをするようである。

↑一着の犬がゴールする瞬間。なんでもレコードらしいがよく分からない
当該動画より。オーストラリアのレースであることが分かる

 犬がゲートから出てきてトラックを駆け抜け、速さを競う。犬の走り方やレース方式などから「競馬っぽい」と感じたことで、父が競走馬に関わる仕事をしていて毎週末は当たり前のように競馬を見ていた上に、ウマ娘の影響で第二次競馬ブームみたいになっていた筆者は、いくつかレースを鑑賞したあと、気になって色々調べてみた。

(ちなみに筆者の第一次競馬ブームはダビスタにハマった小五の頃です。ゲームに影響される部分はガキの頃から変わってない)

オーストラリア(他)で行われる競馬みたいな犬のレース

 ドッグレース(まんまの名前)は主にオーストラリアやイギリスで行われている。かつてはアメリカでも行われていたようだが、動物愛護の問題から多くの州で禁止されているほか、嗜好の多様化によって衰退している。

 ドッグレースに使われる犬は、グレイハウンドと言ういわゆる猟犬で、犬の中でも最速の犬種と呼ばれている。狩猟のために生み出された犬種であることから、獲物を追いかけることが本能として備わっているようで、そうした本能を刺激するためか、ひらひらと揺れる擬似的な動物の尻尾を前に走らせ、犬がそれを追いかけるという形でレースは行われる。
 こうしたグレイハウンドに備わった本能を満たすことも、ドッグレース開催の目的であると開催側は主張している。

上記動画より。レース中、犬は何かを追いかけている。よく見ると動物の尻尾を模した疑似餌のようなものである

 ちなみに競馬同様、犬を所有する「犬主」と、その犬主から犬を預かって調教し、レースに出走させる「調教師」がいる(同一の場合もある)さらに競馬同様ギャンブルであり、単勝方式や二連勝式(競馬で言う馬単)、三連勝式(競馬で言う三連単)などが売られており、専門家の予想なども乗った専門の新聞も発行されていると言う。

 出走する犬には能力に応じたクラス分けがあり(競馬みたい)、能力差に応じておもりによってハンデが与えられることもある(競馬だ)、成績が優秀な犬は繁殖にあがれるが、成績を残せないまま引退する犬もいる(競馬っぽい)。
 引退後殺処分される犬も多く、引退後の処遇を巡って大きな課題を抱えている(もう競馬じゃん)。かつて数万匹のグレイハウンドが殺処分されていたことが明るみになったことで、オーストラリアの首相が禁止令を出したこともある(経済的な理由でのちに撤回されている)。

日本でも行われていたかもしれないドッグレース

 ドッグレースのWikipedia記事によると(そもそもここまでのほとんどがWikipediaの受け売りだが)、第二次世界大戦直後、日本にもドッグレースを行う計画があったそうである。今でこそ衰退したもののかつてアメリカでドッグレースは大人気の娯楽だったこともあり、GHQは靖国神社を焼き払い、跡地にドッグレース場を作るという計画を立てた。当時のローマ教皇庁職員で、マッカーサーの補佐をしていた人物の反対にあって結局靖国神社は焼かれず、計画は頓挫したようである。
 ではGHQの計画通り靖国神社が焼かれて跡地がドッグレース場になっていたとして、オーストラリアなどのようにドッグレースが日本で流行っていたかと言われると、微妙な気がする。

 もともと日本にも猟犬がおり、犬を使った狩猟自体は行われていたようである(現在は犬に獲物を噛みつかせることで行う狩猟は法律で禁止されている)。日本犬も元々猟犬ではあったが、主な目的は小動物を捕獲することで、猟師の援護などもしていたらしい。柴犬の速度は約32kmとするネット記事があった(これはかのウサイン・ボルトと同じくらいらしい)。一方最速の犬種であるグレイハウンドは時速70kmで走るという。最もポピュラーなグレイハウンドである「イングリッシュ・グレイハウンド」の日本におけるペット登録数が全犬種144種中95位と、日本でグレイハウンドはあまり人気がない。
 一方イギリスやオーストラリアには前述の「イングリッシュ・グレイハウンド」や「オーストラリアン・グレイハウンド」など、グレイハウンドが古来より定着しており、このこともイギリスやオーストラリアでドッグレースが盛んな一因であろう。
 このことは日本で競馬が人気であることともちょっと関係がありそう。日本で競馬が定着したのも、昔から乗り物として馬が使われていた部分が大きいと思う(個人の考えです)。
 とにかくもともとグレイハウンドがおらず、日本の猟犬はグレイハウンドほど速くもないことから、日本でもそこまで流行りそうには思えない。
 何より犬をレースに出すと動物愛護の面で批判が殺到しそうである。犬はあくまでペットであり、レースを走らせることを虐待と捉える日本人は多いだろう。
 あとは個人的な意見として、ドッグレースは競馬と違って騎手たちの駆け引きといった人間的な側面が少なく、サラブレッド程身体もデカくないので見ていて単調であまり面白くない。顔怖いし。
 そんな感じでたとえ日本でドッグレースが行われていたとしても、あっという間に衰退しただろうね。

 ……とまあ調べたり、色々考えたりしたものがこんな感じである。ちなみにほとんどがWikipedia情報なので、詳しく知りたい人はwikiで「ドッグレース」なり「グレイハウンド」で検索されたし。

 ヘンなことから犬のレースなんかを見てしまい、気になって調べたりこれを書いたりしてたらもう二時である。昨年度共通テストでAstonの問題を会場で解いていたはずの筆者は、どういう訳か来年の一月も共通テストを解く羽目になっており、それに向けた対策テストが今日もある。
 そして日曜なので競馬もある。浪人生なのにこの週末もウマ娘が、競馬が面白い。(ウマ娘最近ちょっと飽きてきたけど)やっぱり犬のレースなんか見てないで競馬見ようぜ競馬。塾だから見れないんですけどね。

p.s.画像にもありますが、たまたま筆者が犬に目がいっただけでAstonで検索すれば牛のAstonの動画も見れます。「Aston bull」などで検索すればもっと色々出てきます。巨体が繰り出す馬場馬術は圧巻です。是非見てみてください。

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