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春野を詠む 「Love Affair 」編

春野さんが大好き。
優しくて透明な歌声、シンプルで透き通った音。最高。

たくさんのよさがあるけど、僕が一番好きなのは彼が書く歌詞。歌詞には彼の考え方、世界の捉え方が詰まってる。

彼の作品をより楽しむために、僕なりの解釈で分析しその深みに迫っていこうと思う。

LoveAffairと出会った時

2021年リリース「25」収録のLoveAffair。発表された時期はちょうど「is she anybody?」の後で、これからの春野さんはどのように作品世界を広げていくのかと期待してた。cash outが出て、それまでの春野さんにはなかった新しい色が見えたところだったので尚更。

0時を回って配信された海のジャケット(punchさんのグラフィック)。深い青で、どこまでも続いているような気がする。

この曲から僕が真っ先に感じたのは恋の高揚感。「悪戯」をもどかしく感じたり、夢に出てしまったり、繊細に恋を描いているように思う。そして後から追いかけてくるのは、恋が終わってしまう焦燥感、抱いたまま走り抜けていくような儚さだ。

サビの歌詞「君がそばで笑って乾いていくように見ていたい」について、僕は「笑っている君の横にいつまでもいたい」(乾いていく=いつまでも)ということだと思う。

一応記事とかを参照してみると、この記事では「淡い恋心を綴ったラブソング」と紹介されている。確かにそうだけど、もっとあると思う。もっと春野さんの深みに迫ってみたい。


恋の初めから終わり

love affairは1番「恋の始まり」2番「失恋」3番「旅立ち」だと思っている。

1番「恋の始まり」

冒頭はギターで静かに始まり、メロディーが入ってくる。

恋の初め、と簡単にまとめはしたけど、ただの恋愛のワンシーンと切り捨ててしまうには惜しいほど場面が繊細に描写されている。

「このまま悪戯ばかりしないで もどかしい」

「悪戯」を「もどかしい」と感じるのは相手の好意に気付いているからだと思う。相手の少しの仕草に、友達との距離感にはない何かを感じているにだと思う。「なんとなくわかってるよ、君が僕を好きなこと」という心の声が聞こえてくる気がする。個人的にこの名前のつけられない、曖昧な関係と距離感、その時間は1番尊いと思う。

「『またね』から始まった問いは夢にまで…」

ここもすごく共感できる。別れ際、相手の「またね」が耳に残る感じ。相手にとっては条件反射的なただの「またね」だとしても深読みしてしまう。「またねってことは次も会えるってこと?!」その戸惑いと高揚がわかる。相手の意思がはっきり伝わっていない、相手の気持ちを想像する余地が大きいから感じるのだと思う。

「この荷はあまりにも重い 恋にはあまり良い訳じゃない」

この「荷」は、先の「またね」に対する疑問だと思う。疑問が頭を支配して、恋に没頭してしまうのは愉しい。でもその反面、会えない時間がやるせ無いほど辛くなる。想像しただけで苦しい。

「けれども覗く世界は きっとキレイだ」

これだけ悩んでも引っ張られてしまう恋の大きさがあらわれた歌詞だと思う。

2番「失恋」

一番とは打って変わって、歌詞の世界は暗くなる。

「この身はあまりにも脆い 言葉も味方とは思えない
けれども続く世界なんて不要だ」

この部分、前半で自分という狭い世界の壊れていく様を描いていたのに対して、後半には「世界」へと視野が広がる。前後で強いコントラストが生まれている。「脆い自分」と「続く世界」、そこには世界の不条理さがあると思う。

「なんて」はとても投げやりだ。吐き捨てるように、その世界から逃げたい気持ちが超えられている。一番の同じ部分で「キレイ」だった部分が「不要」になっていることも対比が効いている。いい。

3番「旅立ち」

「さよなら恋心 愛してた 寂しくなんてさせやしないよ」

ここまでは恋の始まりから終わりまでを描いていた。でも2サビの終わり「こんなもんでいいか」の後、コードが代わり、新しいメロディーが突如始まる。この変化はなんだろう。急にひらけていく。

それまでと打って変わって告げられる「さよなら」。この「私」はすでに「恋」を終わらせている、離れた場所にいる。

「連れて行ってまだ見ぬ世界のその先へ」

「連れて行って」からわかるのは決別ではない、恋に対する感謝だ。感謝し、悲しみを受け入れてどこまでも進んでいく。

失恋をこんなふうに受け入れることができるだろうか。前までなら後悔の念とかで終わってただろうし、普通初恋ってなんか思い出したくないものだ。

江ノ島の海に似合う爽やかさは、このラストが醸す、旅立ちの気配にあると思った。

春野さんの気持ち

一曲の中で3種類の気持ちに切りかわる。それまでの春野さんにはなかったことだ。「is she anybody?」までの春野さんは確かに、苦しい恋の底に深く沈んでいた。

この心境の変化は「25」に向けた春野さんの言葉を見れば理解することができる。

春野:EPのタイトルの『25』は自分の実年齢から付けたんだけど、これまでの自分の過去を包括しつつ、これから先の将来について、よりポジティブに考えたいっていう気持ちの区切りとしてこのEPは位置付けていて。リリースして今はすごく晴れやかな気持ちなんだよね。

https://tokion.jp/2022/05/01/interview-artist-haruno-25/

「過去を包括し、将来をポジティブに」これがLove Affairで起こっている3つの心境変化の正体だと僕は思う。ある意味で、Love Affairはアルバム「25」を一つに凝縮したような曲と言えるかもしれない。

「Love Affair」からすでに2年半の時間が経った。もうそんなに経ってしまったのか、と思う。この2年半の間に春野さんの活動は大きく変わった。2022年、初めてのライブとなった「25」ワンマンライブにはファンが殺到した。僕は2台のスマホで挑んだにも関わらず、サイトがパンクしゲットすることができなかった。今でも悔しい。そして2023年は精力的にライブ活動が行われた。ワンマンも対バンもスリーマンもあった。
曲もどんどん広がりを見せている。Limboが投稿された時にはびっくりした。こんな音が春野さんから出てくるのか!!とワクワクした。


真剣に詠んでみて良かった。何より楽しい。
またやってみたいと思う。



作品情報

Digital Single「Love Affair」
2021年8月25日(水)リリース
作詞、作曲、編曲:春野


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