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バビロンのデイライト(連載小説)

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「バビロンのデイライト」という長編小説の、第1章のみを全10回に分けて連載いたします。
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2018年3月の記事一覧

バビロンのデイライト(第1章の2)

ぜひ、御社の「ドライムスコンバータ」を紹介したい先があるのだが、営業スタッフを寄越してくれないか?という依頼を受けて、彼は会社から派遣されてきたのだった。会社が言うには、その話は確かな筋からの情報だということだった。だから彼はまず、その情報提供者となる人間と待ち合わせをしていたというわけだ。狛江、というのがその情報提供者の名前なのであった。 彼は、あたりを見回し、待ち合わせ場所に指定されたホルモン焼肉の店を探した。指定されたのは「生命保険」というおかしな名前の焼肉店で、この

バビロンのデイライト(第1章の1)

  新宿三丁目の駅を地上に上がると、まっさきに見える十階建ての商業ビルに、消防車のハシゴが伸びていた。消防車が三台、通りに止まって、慌ただしく消防士たちが働き、周囲には人だかりができていた。人々は足を止めて、ハシゴの伸びた先をぼんやりと見上げている。  あれは、火事ではございません。  「樹」の「根」が、とうとう生き延びていたビルへの侵入を開始し、ビルの中に人が閉じ込められたのだ。  「根」はビルの中を、ありとあらゆる穴という穴を(もちろんそこには、そこにいた人間のもつ「