音楽を作っているけど、伝えたいことは何もない
私はこんな曲を作っている(どこぞの無名人間の曲がこんなに聴かれているなんて正直びっくりだ)。
直近で言うとこんな感じの、アトモスフィアな曲も作った。
それなりに曲を作ってきていて気づいたことがある。
そう、特に音楽で伝えたいことがない。ってことだ。
私の曲が誰かの助けになっていればそれはそれで幸いであるし、世界の誰かの耳に届いて世界平和のきっかけにでもなるのなら、それはそれで喜ばしいことである。
しかし、音楽を作る際に「誰かを助けたいから」とか「世界平和のために」といった気持ちで作ってはいない。
伝えたいことは、特にないのだ。
ロックの呪縛に囚われていた
私はそもそも、ロック畑出身の人間である。
幼少期は父母の嗜むクラシックなどを聴いていたらしいが、中学〜高校ぐらいになってくると徐々に荒々しいロックやロックンロールを嗜むようになっていった。
それらの多くのミュージシャンやバンドは、「ラブアンドピース!」や「俺はアナーキストだぜ!」とか「ティーンエイジの臭いがするぜ…銃をかき集めろ!!」といった、メッセージ性のある曲を歌っていた。
10代の私はそれらの先達たちに感化され、いつしか自分も音楽を作るようになっていったのだった…。
…が、いざ自分で音楽を作ってみると、いささかほども音楽によって「伝えたいこと」がないことに気づいていく。
まだバンドをやっていた頃、作曲兼作詞担当の私は無理やり歌詞を捻り出して社会を風刺するような歌詞を書いてみたこともあったが、どことなくチグハグな感じがして…今時の言葉で言うなれば「コレじゃない感」が強く滲み出ていたものである。
先達たちのバイタリティあふれるロックな「伝えたいこと」は、私の中にはなかったのだ。
音楽や芸術は、今で言うところのインターネットやSNSのような働きをしていたのかもしれない
ロックを…もとい、バンド、もっと広義で言うなれば音楽や芸術といったものをやっていく場合、何かしらのメッセージ性は必要になるのではと思っていた。
かのピカソだって、「ゲルニカ」というメッセージ性あふれる傑作を生み出している。その等身大寸のレプリカが実家近所の図書館に飾られていた時、子供ながらに良い意味での「禍々しさ」を感じたものである。
しかし、伝えたいことは特になかった。
ピカソのゲルニカのように「反戦を!平和を!」というメッセージを音楽に込めたところで、激烈なる戦争も経験していない私なぞでは空疎なものになってしまう。
私は今、平和な世を生きているがゆえに、これ以上望むものは特にない。
セックスピストルズのように「俺はアンチクライストだぜ!」や「反体制だ!」と謳ってみたところで、それこそ「こいつは何を言ってるんだ」状態に陥ってしまう。
なぜかというと、もちろん日本が今現在そういう情勢下にあるわけではないというのもあるが、やはりインターネットやSNSの普及は大きいように思う。
先述のゲルニカは1937年の作品、セックスピストルズは1970年代のバンドである。
私が敬愛しているNIRVANAだって1990年代、ジョン・レノンが亡くなったのは1980年だ。
反して、インターネットがで始めたのが1990年、SNSが一般的に普及してきたのが私の感覚で申し訳ないが2011年あたりではないだろうか(iPhone4Sの発売がこの頃である)。
それまで、一般庶民が自らの感情や理念を発信するなんてことはできなかった。
ゆえに、音楽や芸術などで自らと同じ理念を掲げるアーティストを応援することで、自らの理念を発散していたのではないかと推察する。
その点、現在は誰でも気軽にSNSで自らの理念を発散できる。
音楽や芸術に頼らずとも、個人で完結できてしまうのだ。
それが感覚的にわかってしまっていたから、「音楽はやってるけど、先達のように伝えたいことがない」という状況になってしまったのではと思う次第である。
創作者にとって「伝えたいことがない」というのは、おそらく良い傾向なのだと思う
「伝えたいことがない」というのは、創作する上でとてもいい傾向だと個人的には思っている次第だ。
伝えたいことがないがゆえに、創作するモチベーションは「思想の伝達」ではなく「世界観の共有」に終着する。
この記事の冒頭で添付した私の直近曲「The Water World」がその良い例で、あそこには何の思想もなく、あるのはただ「こんな世界があったら良いのに」ということに終始している。
日常をいっときでも忘れ、非日常的な世界に没入させることが、音楽もといエンタメにおける最大の義務だと思いつつ。
こんな腐ったじゃがいもみたいな記事を書いていて思ったが、「伝えたいことがない」ってことを伝えたかったんじゃないか…と、最終的に合点がいった私であった。
こりゃ切腹もんである★
おーわりっ!
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