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精神科医が傍観していた,成田悠輔の五月祭の騒動

「高齢者を殺すなー!!」
拡声器鳴り響く経済学研究科棟の地下一階は,異様な空気に包まれていた.
成田先生の五月祭の講演の裏で行われていたデモ活動.
しかしこれですら真の見どころではないのだ.

デモと言っても,参加者はたったの3人程度.
講演中でも学生運動を是としていた成田先生自身が,事前に皮肉交じりに引用リツイートし拡散するも,虚しい結果に.
討論する機会を設けろと訴えるわけでもなく,壊れた目覚まし時計よろしく,ひたすら言いたいことを並べるばかり.
成田先生は講演冒頭で「五月祭をぶっ壊ーす!」と言っていたが,デモ参加者もやりたいこととしてはどうせ同じなんだろう.結婚しとけ.

一方で,場を取り仕切る運営も煮えきらない.
開始時刻となっても,デモに対するアクションは特になし.
15分ほど過ぎたあたりか,立ち退かなければ警察を呼ぶという警告が行われた.しかし実行には移さず.
結局のところ,40分ほど経った頃に,大勢の内部スタッフが集まり,物理的にドアの外に押し出すことで収束させた.力こそパワーである.

講演が始まったと思えば,司会のかたが大変素晴らしくお場回しなさる.
真面目な性格がたまたま奏功したのか,「先生と言われるとアンチが怒るんで…」に対して「では成田先生…」と答えた際の笑いはとれていた.
しかし話を掘り下げず順に質問するだけの流れや,調査不足で「何語で論文を書くんですか?」と聞いてしまうような場面も目立った.
エンタメにもなりきれないし,インタビューとしても学生が頑張りましたレベルとなってしまった.
これは明らかに運営の準備ミス,人選ミスである.切腹せよ.

何なら成田先生すらも,笑いは取れていたものの,普段に比べればいささか歯切れが悪かったように思う.
日本の入試はむしろ良いという話において,面接やエッセイのフィルターがないことで生まれる多様性については,今回は言及していなかったはずだ.
大学の価値についても,そもそも意味なさそうなことがどういいのかの説明が,質問者の価値観のレベルまで落とし込めていなかったように見受けられた.
全体的にも,独特な視点を述べる場面は少なく,ファンならば楽しいかもしれないけど…という温度感であった.もっと強制退場を狙ってもらわないと…

果たして今回の一連の流れで,一体どこが見どころだったのか…?
いや違う,むしろこのグダグダ感こそが重要なのではないか.
成田先生自身も前々から指摘していたはずだ.

 
いつの間にか,我々はわかりやすい数字の奴隷となってしまった.
それは時に,お金であったり,リツイート数であったり,体重であったりする.
そしてその効率主義,タイパ主義を推し進めた結果,自らの首を絞めることになってしまった.
特に生成AIの隆盛により,著作権であったり,プライバシーであったり,就職であったりが脅かされる.

人間ができることの大半がAIで代替可能となりつつある今,人間にしかできないことは何か?
それは一見非効率で,大した価値もなさそうなグダグダを生産し合い,消費し合うことだろう.

今回の催しはまさに,それを体現できていたように思う.
日本人が忘れかけていた,しょうもない中途半端な空気感を.
生成AIだけではない.どうせGDPも横ばいなのだから,開き直って身の回りもグダグダで良いではないか.
真面目に働けば多くの”価値”を生み出せるはずの大勢がこぞってダラダラするのは,この上ない贅沢だ.
日本万歳.ナチス成田万歳.


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