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「怒っているお客様」の理解と対応

私は公的相談機関などで、電話相談をうけることがあります。

電話では、匿名であることも多いためか、心無い言葉、暴言のような乱暴な言葉を、投げかけられることがあります。ほかの相談員さんも、悩んでいることがあります。いわゆる「クレーマー事例」でしょうか。

私のような相談業だけでなく、広く接客業をしている方なら、こういった「怒っている」お客さんに、困ったことがあるのではないでしょうか。

そんなこともしらないで、よく相談員やってるな
何に対して謝ってるか、わかってんの?
黙って話を聴け
黙ってないで何か喋れ

ああ言えばこう言うで、なかなか会話が成立しない。なんとか納得して早く電話を切ってほしい、、、

さて、こういった「怒っているお客さん」は、どんな心理状態なのでしょうか。それがわかると、対策も立てやすいですよね。

大声を出したり、怒ったりしているお客さんは怖いですよね。でも、実は自分の要求が通らないことをわかっていて、内心緊張している、どちらかというと「小心者」の状態であることが多いのです。おかしなことを言っているのを、本人が重々承知なのです。

例えば、もう使っちゃったけど返品したい。例えば、ここのセンターの担当ではないけど、なんとかとりなしてほしい。例えば、話を聴いているうちに、自分の勘違いだと気付いたけど、後に引けない。

無理難題だから、あなたを支配する必要があると、本人も薄々わかっている。無理難題だから、脅したり、怒ったりしてるって、本人も薄々気づいているのです。

これが概ね、クレーマー事例に共通する、支配の構造です。では、どう対応すればよいのでしょうか。

①怒っている人の、本当の願いを先回りして言う

「あなたも、なんとか解決したくてお電話くださっているんですよね。素晴らしいことです」「ここでなんとかしてくれると、期待されたんですよね。」「でも、ここじゃだめだとがっかりした。」「自分の話が通じないと感じられたんですね」

これらの言葉かけで、支配しようとすることに没頭している怒れる人を、「相談に来た人」の立場に、もう一度気づいてもらいます。何とかしたい、という解決する姿勢を褒めることで、「強化」するのです。

②協力を申し出る

①で少し怒りのトーンが下がると思われるので、「私としてもあなたの相談がうまくいくようにしたいと願っています」などと、協力する姿勢を強調します。これは、怒れる相談者は、否定されることを恐れているからです。同様に、自分が加害者になることも恐れています。ですので、「出来かねます」といったことを先に行ってしまうと「私が悪いというんですか!」という風に、関係が悪化してしまうのです。ですから、まっ先に、「あなたに協力するよ」と宣言するのです。このタイミングで、実現可能な別の方法があれば、提案するのがよいでしょう。

③無理難題は、言っていることと要求が違うので、直接答えるのは無意味

「すぐ対応しろ」「担当交代させろ」「上のものを出せ」、といった無理な要求に応える必要はありません。

なぜなら、こういった発言は「私の話を聴いてないでしょ」が、真の訴えであることがほとんどだからです。言っていることは、本当の要求ではないのです。したがって、「それはできないんです」という風に直接答えると、本人の真の要求からみて的外れになり、「話を聴いてるのか」という感じで、延々とやり取りが続くことになります。

「すぐに解決なさりたいのですね」といった、サマライズなど相手の発言をなぞることで、「聞いているよ」という感じを与えることが、この手の無理難題への正答です。

④納得してもらおうとしない

だれしも、最後は笑って関係を終わりたいですよね。できればわかってもらいたい。

でも、納得してもらおうとすると、支配下におかれてしまうリスクが上がってしまいます。

例えば、時間外に対応することで納得してもらおう、担当を交代することで納得してもらおう、今回は特別に返品を認めよう、通常やらないような特別対応を繰り出す。これらは、一時の怒りをおさめたようにみえても、支配下におかれるリスクがありますので、要求がより一層エスカレートする可能性が大です。

したがって、納得してもらえないときには、「こちらとしてもお客様のご要望にできる限り沿いたいのですが、できることは○○と○○です」と限界を示したうえで、「そろそろお時間ですので」「次のお客様がいらっしゃいますので」と、スケジュールを理由にして、切り上げることをお勧めします。

⑤あなた自身をケアする

これくらい平気で対応して一人前、とった職場の雰囲気は危険です。だって怖かったし、こちらも怒りを感じたかもしれません。

その気持ちを放っておくと、抑うつ気分になったり、いつの間にか別のお客様にも同様の支配下に置かれる対応を繰り返したり、といった悪循環に陥りやすいのです。従って、あなた自身が、カウンセリングをお受けになるなどの、ケアも併せてお勧めしたいと思います。

まとめると

①相手の暴力的・支配的態度と、相手の人格を分離して対応すること

②支配下におかれにくいメンタルに維持する、あなた自身のケア

上記の工夫で、対応をさっぱりと、短くできる可能性が高まるのです。


「怒っているお客様」にお困りの場合、ぜひご相談ください。みなさんの事情に合わせた、対応を提案致します。

(矢田の丘相談室 田中 剛)


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