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一人の責任

私は小企業も中企業も、また大企業も経験しているのですが、いずれの企業でありましても、結局はそこの主人公というものがいちばん問題だと思います。企業の大小を問わず、主人公が率先垂範していけば、いっさいは解決されるという感じがするのです。

といいますのは、社員なり店員の人たちは、おしなべてみな主人公のいう事を聞くわけです。主人公の言うことを聞かないという人は、おそらくないと思います。社長が「東へ行こう」と言えば、みな東へ行くのです。しかるに東へ行って、もうひとつうまくいかない、そういうことはだれの責任でしょうか。もちろん「東へ行こう」と言った社長の責任だと思います。

ですから、会社や商店の発展にはいろいろの要素がありますが、私はそこの経営者、社長の双肩にその責任がかかっていると考えております。

よく、社長の立場に立つ人が、”自分は一生懸命働いているのだけれど、社員が十分に働かないのでもうひとつうまくいかない”というように考える場合があります。ほんとうにそういうことがいえるときもあるでしょう。しかし、それはほとんど例外といってもよいような状態ではないでしょうか。だいたいは、その店、その会社の発展していく姿というものは、そこの主人公一人の責任だと私は感じているのです。

私自身、今までいかなる場合でも、自分一人の責任だということを考えつつ、自問自答しながら事を進めてきました。そうして、それと同じように、「部の責任は部長一人の責任である。課の責任は課長一人の責任である」ということを言ってきたのです。一つの課がうまくいくかいかないかということは、課長によってだいたい左右されるものです。

課長が自分の責任を厳しく自覚し、忙しければ一人残って一生懸命に仕事をする、その姿を見て部下たちはどう感じるでしょうか。おそらく、部下の中には、「課長、一服してください。ひとつ肩でももみましょう」といたわりの態度を示す人も出てくるでしょう。期せずして、課長と部下の心はかよいあい、一体感も生まれてきます。

そのような、部下にいたわりの心を起こせるような一生懸命の姿が自然に課長の仕事に現れるならば、必ずその課はうまくいくと思うのです。だから、いずれの場合でも、それは課長一人の責任です。部であれば部長一人、会社全体なら社長一人の責任なのです。

★今日の気づき★

『企業の大小を問わず、主人公が率先垂範していけば、いっさいは解決される』、『課長が自分の責任を厳しく自覚し、忙しければ一人残って一生懸命に仕事をする、その姿を見て部下たちはどう感じるでしょうか』どうしたら部下が一生懸命に働いてくれるか考えるより、自分がとにかく一生懸命に働く姿を見せ続けることが大切なんだと学ばせていただきました。

今日も感謝感謝 拝 

-商売心得帖 松下幸之助より-


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