宣材写真のディレクションは誰がやるのか?

宣材撮影をしている時、モデルさんが「カメラマンからポージング指示してもらうのが当然」と思っていたり、あるいはヘアメイクさんが「こんなポーズいいんじゃない?」と自分の好みと思える内容の指示をしていたり、といった場面を見かけることがあるのですが、それは違うのではないでしょうか?

宣材写真はモデルさんにとって最重要のプロモーションツールです。
選考の最初の段階で、写真でふるいにかけられたり、あるいは写真だけでお仕事が決まることもあります。

オーディションには、言わば中学や高校の学年で一番可愛い子、学校で一番の美人、しかも顔立ちだけでなくスタイルも抜群、というヴィジュアルで選ばれた女子達が集まっている訳で、その人達の中から更に選ばれなければ仕事にありつけません。
「絶対評価」ではなく「相対評価」、つまり「比べられる」のです。
ということは、ほんの僅かでも他の人たちより抜けだしている所を見せていく必要があります。
ライバル達よりも優れている自分の強みやアピールできるものを写真の中に写し込まなければ、競争力のある宣材にはなりません。

撮影の時に一緒になったヘアメイクさんは、「あなたがモデルとしてアピールすべきもの」を見極めた上で書類選考で勝ち抜けるアピールポイントを見せるようなポージングを教えてくれるでしょうか?
そういう鋭い視点の人も、もちろんいるでしょうけれど、その人の個人的趣味や好みで「こんなポージングいんじゃない?」と言っている可能性の方が高いでしょう。

今日撮ってくれるカメラマンは、クライアントの視点でポージング指示してくれるでしょうか?
男のカメラマンであれば「男目線」での指示をしてくる可能性の方がかなり高いと思います。

「あなたが本当に見せるべきもの」が分かっていない人に表現をまかせてしまったら、結果の出せる宣材を手に入れる可能性が下がってしまいます。

では、「あなたがモデルとしてアピールすべきもの」が分かる人、あるいは分かっているべき人、は誰でしょうか?
日々、オーディションに行き、直接クライアントのコメントを聞き、お仕事を取れた時や取れなかった時にその理由を確認したり、というようなことの積み重ねによって、モデル市場の中での自分のポジショニングや、他のモデル達より優れている差異化ポイントが見えてくるはずです。

宣材写真を手に入れるまでには、見せたいものをコンセプトとしてまとめ、イメージの方向性を決め、そのイメージに合ったカメラマンやヘアメイク、スタイリストの手配、準備から撮影、撮ったカットのセレクト、といった作業が必要になります。
これらの各場面では、決めなければならないことが多々出てきます。
例えば、どんな表情がよいのか?クール系か笑顔か?どんな衣裳?どんなヘアメイク?どんな背景?どんなライティング?そして撮影した何百枚ものカットの中からどのカットを選ぶか?・・・・

決める際の基準、拠り所になるものは最初に立案する「見せたいもののコンセプト」です。このコンセプトを一番分かっている人、あるいはコンセプトを決めるべき責任を有している人、が各段階でジャッジすべき人です。

各場面でジャッジできる人、つまりディレクションできる人は所属事務所のマネージャーさんと、モデルさん本人以外にはいないはずです

撮影現場にマネージャーさんが付いて来てくれることはあまりないので、モデルさんは事前にマネージャーさんとコンセプトや撮る写真のイメージを共有しておくことが大切になります。
撮った写真のセレクトはマネージャーさんが行うことが多いと思いますので、マネージャーさんとの間でコンセプトや具体的イメージの共有ができていないまま撮影に臨んでしまうと、「今回の撮影の中では使えるカットはないね」と言われてしまう可能性が高まります。

冒頭に書いたカメラマンやヘアメイクさんからの「指示」のことですが、外部の人間が指示をすることが全部NGと言っている訳ではありません。
撮影のコンセプトや見せたいものを把握していて、その上でモデルさんの立場に立ってアドバイスができる人であれば、そういう人のアドバイスは積極的に聞いたほうが、表現のヴァリエーションが広がり、使えるカットが更に多く手に入れられると思います。


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  ▽宣材撮影


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