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信託契約を公正証書にするメリット

こんにちは、スマート法律相談の弁護士のカツベです。

家族信託をする場合、公正証書によることがほとんどですが、公正証書によることが法律上求められているわけではありません。

ですので、信託契約書のひな形をダウンロードして必要な箇所を埋め、契約者全員で押印することによっても信託契約を成立させることは可能です。

それどころか、印刷すらせず、契約当事者全員で話し合いをした結果をパソコンやサーバー上に合意事項として保存しておく方法でも契約を成立させることは可能です。

公正証書を作るには費用がかかるので、安上がりで済ませられるのであればそれに越したことはないですよね。

公正証書を作成する場合の費用

実は、公正証書を作成する場合の費用は公証人手数料令という法令で決まっています。

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https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=405CO0000000224

法律行為の目的(信託の対象となる財産の額)によって変わりますが、5000万円~1億円のレンジで4万3000円です。

公正証書を作成するメリット

次に、公正証書を作成するメリットを検討していきたいと思います。

なお、公正証書には、執行認諾文言をつけることにより裁判をしなくても強制執行をすることができるというメリットがありますが、信託契約についてはこの点はメリットになりにくいため、除外します。

(1)証拠としての価値が高い

公正証書は公証人という法律のプロ(元裁判官や元検察官など)が作成しますし、作成時に本人確認を行うなどのプロセスを踏むため、通常の契約書よりも証明力があるとされます。

公証人法
第十三条 公証人は、法律行為につき証書を作成し、又は認証を与える場合に、その法律行為が有効であるかどうか、当事者が相当の考慮をしたかどうか又はその法律行為をする能力があるかどうかについて疑があるときは、関係人に注意をし、且つ、その者に必要な説明をさせなければならない。
2 公証人が法律行為でない事実について証書を作成する場合に、その事実により影響を受けるべき私権の関係について疑があるときも、前項と同様とする。

(2)公正証書の原本は公証役場に保管される

公正証書の原本は作成後20年間は公証役場に保管されるので、紛失した場合に再発行が可能ですし、仮に公正証書の偽造が疑われたとしても、公証役場の原本と照合することにより偽造の有無を確認することができます。

公証人法施行規則第27条
 公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したときは、この限りでない。
一 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿、信託表示簿 二十年

(3)信託口口座を作る際に必要となる

家族信託において金銭が対象となる場合、受託者の個人名義の預金口座で管理してしまうと、横領されたり、受託者の債権者から差し押さえをされてしまう可能性もあります。

このようなことにならないよう、受託者は信託財産と自分の固有財産を分けて管理しなければなりません(分別管理義務)。

信託法
(分別管理義務)
第三十四条 受託者は、信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを、次の各号に掲げる財産の区分に応じ、当該各号に定める方法により、分別して管理しなければならない。ただし、分別して管理する方法について、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
(以下略)

金銭の分別管理方法としては、銀行で信託口口座を開設して自分の個人名義の口座と分けて管理する方法が一般的ですが、公正証書で信託契約書を作成していないと、この信託口口座を開設できないことがほとんどです。

(4)贈与と認定されるリスクを回避する

例えば、親が子に金銭1000万円を信託財産として管理してもらいたいと考え、信託契約を結び、親名義の銀行口座から子名義の銀行口座に1000万円を移したとします。

この場合、見た目上は親から子に1000万円を贈与したのと何ら変わりません。

このような状況でこれは信託であって贈与ではないと言い張るのは困難です。

公正証書により信託契約書を作成し、信託を受けた財産は信託口口座などで分別管理していないと、信託を否認されて贈与と認定されるリスクが伴います。

まとめ

公正証書を作るか作らないかは、上記のメリットと費用が見合うかどうかの判断になりますが、家族信託を組成する場合の多くのケースで公正証書が用いられていることを考えると、一般的に公正証書を作成するメリットは費用に見合うものであると判断されていると考えられます。

扱う財産の額が大きければ大きいほど、公正証書を作成した方がリスクが少ないといえるでしょう。

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