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街の衰退ストーリーその1 『高齢者福祉が街を殺す』

都市や街が衰退していくストーリーはいくつかあると思うが、
今都心部以外の街で起こっている現象として、
「高齢者福祉施設増えすぎ問題」は、割と深刻だと思っている。

この現象は、どうしても「ニュータウン」の盛衰と重なって見えてしまう。

高齢者の方に向けた、
「老人ホーム」
「サービス付き高齢者向け住宅」
「特別養護老人ホーム」
「デイサービス」…
本当にいろんな福祉サービスが開発されてきた。

もちろんこれらは全て「今」必要なものだし、困っている人がいる以上サービスの存在を否定はしない。
ましてや、福祉施設が街のイメージダウンになるとか、近隣問題になるとか、そういうことは個人的には全く思わない。

「高齢者福祉施設増えすぎ」の何が問題か?

そうではなく問題だと思っているのは、
高齢者やその家族の課題を解決するのと同時に、その街の未来に新たな課題を生んでいるということ。
その場所でできたはずの事業や、長い視点(50年スパン)で見た街の未来の可能性を摘んでいるのではないか。

福祉サービスの一つ一つの是非を問いたいのではく、"あまりに増えすぎる"ことが問題だし、この10年ますます増えていく方向に力学が働くことが問題だと思っているということである。

2つの問題がある。

1.空き地空き家を活用してできたはずの様々な可能性が消える
2.住民の高齢者比率が"異常"に高くなる

空き地空き家の可能性を摘んではいないか?

僕は、まちづくりや遊休地活用を専門としている人間として、どうしてもそう感じてしまう。

そしてこの問題を引き起こす力学がある。どんな力学か。

誰もが知るように、周縁部の街の多くは、「空き地・空き家」が増えている。
そしてこれらのオーナーの高齢化も当然進んでいる。
基本的に高齢になると、新しい投資や事業をするモチベーションが下がるので、「賃料だけ払ってもらえればあとは好きにどうぞ」という人が増える。相続するときに子どもに負担がかかるような事業はしたくないのも大きい。

そこでビジネスライクな思惑が強い事業者が営業にきて、50年定期借家とかで土地を借り上げ、補助金を使ってボンっと真新しい無味乾燥な施設を新築する。
オーナーにとっても事業者にとってもサービス受益者(高齢者やその家族)にとっても三方よしなので、それはそれはスムーズに話が進む。
人口減少社会の中、住宅開発の機運は下がる傾向なので、
相対的に地域の遊休地では高齢者福祉施設が溢れることになる。

そもそも高齢者福祉ビジネスっていつまで儲かるの?

高齢者福祉の高い需要はこれからもずっと続くのか。僕はそう思わない。
今、都市部にすむ子世代はとにかく忙しいので、田舎の親の面倒を見ることが実質難しい。なので地方に住む親を、自分が住む街の近くに呼び寄せ施設に入居させたいというニーズは明らかにしばらくは増えまくる。多分、10年−20年はうまくいくビジネスモデルではあると思う。
しかし、今の少子高齢化は「今そういう人口比率になってる」というだけの現象なので、ほっといてもそのうちなくなる。さらに絶対人口が減る中、20年後の高齢者福祉施設のニーズが今のようにあるかは怪しい。切迫する社会保障費の問題もある。

失われる街の多様性

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