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小野澤さんが成し得た事は何か

藝大の卒展に行き、小野澤さんの作品を見てきました。

 大学に入ったばかりの小野澤さんは、いろんな課題にジャグリングで回答していました。それに対し「パフォーマンスがしたいなら芸大に居る意味がない」と否定され、どうジャグリングを芸術作品に落とし込むか、それを4年間考えてきたそうです。

 その中で「パフォーマンスから自分を抜いたら何が残るだろう」という問いが生まれ、そしてこの作品になりました。

 そのため、この作品は木製で手作業で作られ、5分に一度は失敗する精度になっています。ボールを受け止める部分も、手で持った時のように、ガタガタっとキャッチしてます。

 たくさんのボールを扱えて凄い!というのはパフォーマーだろうが機械だろうが同じく解りやすい凄さですが、私たちがパフォーマンスに感じている未だ言葉になっていない曖昧で小さな温かみ、それがこの機械にも残されている点が芸術作品として素晴らしいです。

 この作品は今年唯一先端芸術表現科で大学に買い取られたとのことで、最優秀作品とも言えるでしょう。それは、現代アートとして時代に認められたということだと思います。

 ジャグリングの魅力は未だ人に伝えづらい所があります。
 少し前にテレビ番組の対応をしたのですが「世界でこの人しか○個を扱えません!とかないですか」「最近はこんな変な道具でジャグリングするのが流行ってます!とかありますか」「すいません、ジャグリングはもう知ってるからという理由で没になりました」という経験をしました。

 サーカス全般について、常識の外側、つまり言葉の外側に大きな魅力があると思います。また曖昧で横断的で多様性のある、人間そのもののようなこの形が、私は好きです。
 しかしこれは引き算が基本と言われる現代デザイン感覚からすると、相容れないところがあります。

 そんな中、「ジャグリングからパフォーマーを引き算する」を成し遂げ形にした小野澤さん。それは、サーカスが現代に合う形を見つけた、という意味でもあると私は思います。

 今後どういう活動をされるのか、どんな作品が生まれていくのか、楽しみなので積極的に関わって行こうかと思います。

 これからもよろしく、小野澤さん!

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