第70回:法案の内容とプロセスを把握する方法を徹底解説 -公表資料の裏側も読み解ける-
1.政府が作成した法律案が成立するまで
2021年に廃案となった出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)の改正案の議論が再び国会で盛り上がってきています。実は、入管法は2年前に一度議論されたものです。
政府は2021年、入国管理庁の収容施設に長期収容される外国人が存在する問題などを解決するため、一定の場合には在留資格のない外国人を迅速に日本から退去させることなどを盛り込んだ入管法改正案を国会に提出しました。
これに対し、野党は無期限に外国人を収容する施設のあり方や収容の必要性や合理性に疑問があるとして法案に反対。野党の反対を踏まえて、与野党の修正協議がすすめられていました。
その最中、入管の収容施設に収監されていた女性が死亡します。適切な治療が行われていなかったのではないか、といった疑念が噴出し、メディアも大きく取り上げる事態となりました。世論の盛り上がりも考慮し、政府は2021年の国会における法案の成立を断念せざるを得なくなりました。
そして2年の時を経て、今国会に再度改正法案が提出されたものです。
政府が国会に提出する法案は、一般的に
官僚が案を作成し
審議会などの政府の会議で議論し
自民党の政務調査会において、了承し
その後閣議決定されます。
政府内、自民党内で多くの手続きを経て国会に提出された法律(内閣提出法案。以下「閣法」)でも、2021年の入管法改正のように耳目を集める事件があり「内容を慎重に議論しよう」と世論が盛り上がったような場合には、政権与党も支持率低下を恐れて、その法律の成立を見送ることがあります。
内閣法制局のHP(https://www.clb.go.jp/recent-laws/number/)によると、2022年の通常国会においては提出された閣法はすべて成立していますが、2021年の第204回通常国会で審議された閣法は63本。そのうち61本が可決成立となりました。法案が政府において作成されても5%程度の法律は成立しないということになります。
閣法を提出したからといって必ずその国会の期間に成立するわけではないことをご理解いただけましたでしょうか。
今回は、現在議論中の法案の例を用いて、政府内の議論を経て法案が成立するまでのプロセスをご説明し、法案に影響を与える方法を考えていきます。その中で、国会に提出された閣法が成立しないパターンについても解説します。
(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)
講演、コンサルティング、研修のご依頼などはこちら
‐©千正組:購読いただいたご本人が私的に利用する以外の理由による複製・転用を禁じます‐
2.審議中の法案を理解するには
審議中の法律の内容は、閣議決定後はHPで公開されています。国土交通省を例にとると、ホーム>政策・法令・予算>(4)国会提出法案とたどることで、国会で審議される法案の中身を確認することができます。そして、(4)国会提出法案の「概要」をクリックしてみましょう。
リンク先には法案改正の概要を示すA4サイズの一枚紙があります。法改正の中身をより正確に知るには、法律案や新旧対照条文を読まなければなりませんが、新聞報道よりも詳しく、かつクイックに法律の内容を知りたい、ということであれば、この概要で足りるはずです 。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?