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官僚の接待の世代間ギャップ

放送関連会社に勤める菅首相の長男らから総務省幹部が接待を受けていた問題で、総務省が調査結果をまとめたとの報道が出ています。計12人の職員が倫理規定に違反する疑いがある会食をのべ38件行っていたとのことです。
 


単発ではなく、何度も行われていたということで、接待が放送行政に影響を与えたのかはよく分かりませんし、国家公務員倫理法は利害関係者に該当するのかどうかは解釈が難しいところがありますが、可能性があるなら慎重な判断をすべきと思います。

1990年代後半の旧大蔵省の接待の問題などがあり、2000年4月に国家公務員倫理法ができました。僕はその直後の2001年4月に国家公務員になりました。全省庁のキャリアを集めた研修では、最初に国家公務員倫理法の講義を受けました。

新人の頃から「接待はダメだぞ」ということを叩きこまれ、また公務員バッシングの中で育ったので、甘い汁を吸っているとか、天下り先を増やすために仕事をしていると言われるのが本当にいやでした。だから、注意をしていましたが、それは自分だけでなく、周りの同僚たちもそうだったと思います。そういう僕らの世代が今は管理職になっていますから、若い官僚たちからすると、ますます遠い世界の話だと思います。

僕が役所に入ってから悩んだのは、民間と付き合う雰囲気が役所の中になかったことです。役所の外の世界を見る機会を組織や先輩たちからほとんど与えられた経験がありません。

若い頃、霞が関で法案を作ったり予算を作ったりしていたわけですが、役所の外の世界が分からないので、自分たちの仕事が社会にどのように届いているのかが分かりませんでした。

だから、後ろ指をさされない形で、福祉現場や民間企業の人たちと勉強会をやったり現場訪問をしたりといった活動を業務時間外にライフワークのようにしてきました。本業をよくするためには、どうしても必要なことです。そういうクリーンな形での外部との交流を今の若い人達も続けてくれています。

まれに、どうしても払わせてくれなくて食事代を支払ってもらったり、高価な贈答品を置いて行かれたことがあって、現金書留で返したり、贈答品を返送したりといった面倒くさいことをしたこともありました。

だいたい、ちゃんとした企業の人たちは、官僚の立場を理解して最初から割り勘にしてくれます。やたらご馳走してくれるようなケースはそもそも安心して付き合えません。

あ、ちなみに「料亭とかよく行くんですか?」と本気で聞いてくる人が、たまにいますが、行ったことありません。。。

今は、民間人になって日は浅いですが、「ああ、仕事上の会食って、あんまり割り勘ということはないんだな」「だから企業には接待費というものがあるのか」みたいなことがなんとなく分かってきました。公務員時代はお歳暮やお中元などもらったことも贈ったこともなかったので、世の中の社会的儀礼と公務員の世界は随分違うんだなということを感じています。

企業と違って役所には接待費がないので、向こうは会社の経費でこっちは自腹ということになります。企業の偉い人たちにとっての仕事上の会食というのは、よい店に行くでしょうから、企業の常識で言えば割と普通のことが、官僚の世界ではアウトになります。正直、ルールが厳しすぎるという人もいますし、これをどう考えたらよいのかは悩ましい気もします。

基本的には企業の人に官僚の世界の特殊なルールに合わせてもらうしかないのかなと思います。官僚のためのルールじゃなくて公務の公平性や信頼性を守るため、つまりみんなのためのルールですから。(もちろんルールの見直しやの議論はあってよいと思いますが)

今の幹部は国家公務員倫理法ができた時に、既に管理職になるかならないかくらいの役職になっていた世代ですから、接待が普通にあった時代に育っています。個人的にも、世代によって感覚が少し違うという感じもしていますが、改めて襟を正してほしいです。

今回のようなことは、公務や行政に対する信頼を損なうのはもちろんですが、まじめに激務をこなしている多くの、特に若い公務員に対しても言われのない風当たりが強くなるおそれもあります。学生の官僚離れの中で採用も厳しくなっているところ、マイナスイメージもついてしまいます。

このような出来事が、国家公務員倫理法の副作用のように、政策を作る人たちが外の世界を見たり、民間の人たちとの接点を持つことに委縮するようなことにならないことを望みます。




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