雛鶴姫の大塔宮への愛籠る 良縁を結ぶ桂のご神木
山梨県富士吉田市の富士山下宮小室浅間神社(ふじさんしもみやおむろせんげんじんじゃ)には、「お桂さん」として親しまれる桂のご神木がある。
この桂の幹に抱かれるように鎮座するのが大塔宮社。この社には、第96代後醍醐天皇の皇子で、大塔(だいとう・おおとう)の宮と尊称された護良親王(もりよししんのう)がお祀りされている。
護良親王は、南北朝時代の騒乱で討たれた悲運の皇子。親王が討たれたことを知った親王の寵姫・雛鶴姫(ひなづるひめ)は、数人の従者とともにその首級を探し出し、鎌倉を逃れ、この地に落ちのび、桂の木の根元に葬ったと伝えられる。
親王の神霊の鎮護を祈願して、大塔宮社では毎年五月十日、例祭「桂樹祭」が斎行される。雛鶴姫の愛情は今も桂樹に宿り、この木にはハートの形の葉が茂るという。この桂の葉には、縁結びの御神徳があると崇敬され、この葉を大切に持っていると、さまざまな良い縁を結んでくれると評判になっている。