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パパ活してたら間違って異世界に召喚されてお詫びとして女神とパパ活してたら人類最強になっていた件(6)

「冒険者ギルド? 興味無いね」
開口一番、俺はそう言った。
「しかし、冒険者ギルドに所属しなければクエストが受けられないし、金も稼げないのじゃ」
「冒険者ギルドってあれだろ? モンスターと戦ってクエストをこなしたり、毒沼や火山みたいな危険な場所に調査に出向いたり⋯⋯」
俺は社会に出てから真面目なサラリーマンとパパ活しかしたことがない、健康不良の中年おじだ。冒険者になんかなったら死んでしまう。
「でも、やらないと生活に必要な金を稼げないのじゃ」
女神アストラエアが珍しく神妙な表情で言う。
「あのさ、もしかしてお前、金を持ってないのか?」
「無い。女神は働かんし、飯も食わん」
アストラエアは胸を張って言った。
「そうか、それなら冒険者ギルドに入るしかないな」
「お主、わしを怒らんのか?」
「怒らないよ。お前が働かないなら俺が金を稼ぐ。そしてお前を養ってやる。それが、俺が日本のサラリーマン生活とパパ活で培ってきた流儀だ」
アストラエアは顔を綻ばせて言った。
「ほお、お主は存外出来た男じゃな。この異世界では男が働いて得たお金は家族に使うが、他人には使わん。まれに愛人を囲う男もおるが、それはそれで家族じゃ。わしのような無関係の者を養ってくれるとは、お主は聖人のようなものじゃな」
アストラエアは感心している。
別に俺はこいつを無関係だと思っていないし、何なら今の俺にはこいつしかいない。家族とまではいかないが、家族の代わりぐらいには思ってるかもしれないな。
「まあ、金が無きゃ生活も出来ないし、パパ活も始まらないからな。それに、お前にたまには美味いものでも食わせてやりたいんだよ」
アストラエアはきょとんとしている。
「わしは飯を食わん⋯⋯のじゃが?」
俺はにこりと笑って女神に向かって親指を立てた。
「だからこそ、だよ」

俺は冒険者ギルドに登録して比較的安全そうなクエストを受けた。
そのクエストを夕方には完了して報酬を受け取った。
宿に戻り、併設のレストランで食事をする。
「うまい! 人間の食事はこんなに美味しかったのか」
アストラエアは美味しそうに骨付き肉を頬張っている。
悪い気はしない。やはり俺は性根からパパ活が好きなのだ。
「いっぱい食えよ」
「言われずともじゃ!」
穏やかな時間の中、夜は更けていく。
俺はこの駄女神のことが好きになったのかもしれない。こいつは駄女神だが、女神だけあって優しいのだ。慈愛と言うのだろうか。そう言える優しさがこいつにはある。
その愛情は俺には向かない。いや、俺だけには向かない。世界に向かっているのだ。そして俺は、こいつのために世界を救ってやるのも悪くないような気がしてきた。

つづく

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