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初心者が知っておくべきweb3とブロックチェーンの世界観

さて、前回まででweb3とブロックチェーン、NFT、DAOと、web3に関する大きな流れについて説明してきました。これまでの話は、適切に検索することで詳細な説明がされている他の記事やサイトを発見できたかもしれません。

今回は、これまでのような単語の説明とは違い、現在のweb3世界の「全体的な世界観」の説明をしようと思います。

この記事では、私が「初心者の頃に知れていたらもっとよかった」と思うものをまとめて、それぞれを解説しています。まずは、とても基本的なことですがどこにも書かれてはいないこと、前提とされていることから説明していきましょう。

新しい世界や界隈に参入した時、まずはその世界の全体像を把握しないと、何か行動を起こした時に効率が悪かったり、思わぬミスを起こしてしまう可能性が高くなります。web3は少なからずお金に関する話題も多いので、日常的に起こっている詐欺やハッキングなどについても知っておく必要があります。

知識は武器です。出来るだけ知識を蓄えて自衛の準備を行ってから、自らのお金を動かすほうが望ましいでしょう。

web3の世界観①:ブロックチェーンは何本もある

初心者の方が躓くポイントとして、まずブロックチェーンはビットコインだけではない、という点があります。とても基本的なことですが、明確にしておくことが重要だと感じたので説明します。

実際に、ビットコイン以外にもイーサリアムやソラナなど、別のブロックチェーンが存在します。この辺りの有名なブロックチェーンは比較的話題になっており、個別の記事も充実しているので、ブロックチェーンが複数あることを理解している人は多いかと思います。

ですがブロックチェーンが複数あるということがどういう意味なのかは少し理解しづらく、初心者にはつかみづらいかと思います。なのでここはたとえ話で理解してみましょう。

多種多様なブロックチェーンが存在しているのは、多種多様なSNSのアプリケーションがあるのと同じです。SNSには、Facebook、X(Twitter)、Instagramなど、さまざまな種類がありますよね。これらは大まかにできることは同じで、他の人にオンラインでメッセージを送ったり、何か情報を共有することができます。ですが細かい機能を見ると違っており、例えばX(Twitter)にはリポストという機能があり、Instagramにはストーリーという機能があります。

ブロックチェーンもSNSと同じで、大まかには同じことができるが、細かい特徴が違うブロックチェーンが複数存在しています。

SNSでは特定の機能のあるなしという差がありましたが、ブロックチェーンでは差を付けるポイントとして、「ガス代の安さ」や「トランザクションの処理を行う速さ」、「スマートコントラクト機能があるかないか」などのポイントがあります。ほかにも様々な特徴の付け所がありますが、技術的な小難しい話なので、初めはこの3つを理解していれば十分です。

それぞれのブロックチェーンが持つ特徴によって、「そのブロックチェーンは一般的にどんなアプリケーションに向いているか」などが変わります。例えばガス代が極端に安いチェーンなら、高頻度でトランザクションを作成しても経済的負担が少ないので、頻繁に取引を行う必要のあるアプリケーション、たとえばブロックチェーンゲームやDeFiのアプリケーションを扱うのに向いています。

web3の世界観②:1トークンにつき1ブロックチェーンというわけではない

初心者の頃にCoinMarketCap(あらゆるトークンの時価総額ランキングを掲載しているウェブサイト)を見ていて抱いた疑問に、「このすべてのトークンにつき一本のブロックチェーンがあるのか?」という疑問がありました。トークンの説明を見ても、当時の自分はそれがどっちなのかを判断できませんでした。恐らく同じようなことを考えた人もいると思うので、ここにその答えを書きます。

結論から言うと、この章のタイトルのとおり、1トークンにつき1ブロックチェーンというわけではないです。独自のブロックチェーンを持たないトークン、というよりかは「ブロックチェーン上で発行されたトークン」が正しいのですが、少し難しいので単語レベルからこのトークンの話をしていきましょう。

まず、ブロックチェーンには必ず一つ、ネイティブトークンというものが存在します。ネイティブトークンはガス代として使われたり、マイニングの報酬やステーキングの報酬として配られる、そのブロックチェーン上での基軸通貨です。ビットコインではBTCが、イーサリアムであればETHに当たります。基本的にはそのチェーンの名前を継承しています。

これに加えて、イーサリアム等のスマートコントラクト機能を持つブロックチェーンでは、誰でも自分で独自のトークンを作成して発行することができます。イーサリアムではERC-20トークンがこれに当たります。これはネイティブトークンではないので、もちろんガス代に使用することはできません。DAOにおけるガバナンストークンや、ステーブルコイン、DEXのLPトークンなど、様々な使い方で発行されています。

ということで、実際少し使えばわかるのですが、1トークンにつき1ブロックチェーンというわけではないのです。実際に触ってみるまでわからないし、実際に触るにはハードルが高い部分もあるので、文章化しておきました。

web3の世界観③:同じ名前が付いたトークンでも、チェーンが違えば互換性はない

ブロックチェーンを触り始めてから、一つのブロックチェーンだけでなく複数のブロックチェーンを触ろうとするときによく発生する勘違いがあります。それは「同じ名前のトークンなら同じトークンだと思っている」というものです。

いやそのままそうじゃないのか?となる方も多いと思います。これはブロックチェーンに関する技術に関して少し知っていなければ気づくことが難しいからです。

同じ名前のトークンとは、ステーブルコインなどの、複数のブロックチェーンで展開されている同一の性質のトークンのことです。

例えばCircle社が提供しているUSDCですが、USDCは最初に発行されたイーサリアム以外にも、ソラナやアバランチ、ポリゴンなどのいくつかのチェーンで同じように発行されています。

ソラナのUSDCもイーサリアムのUSDCも、同じ1ドルにペッグした同じステーブルコインですが、実はこれらには互換性がありません。

イーサリアム上の100USDCとソラナ上の100USDCは、見た目は同じでも中身は少し違います。具体的に言うとそもそもイーサリアムとソラナは全く別のブロックチェーンなので、トークンの仕組みも違います。そのため互換性がありません。つまり、足し合わせて一緒のものとして扱うことさえ不可能です。

イーサリアムのUSDCとソラナのUSDCを足し合わせることはできませんが、「ブリッジ」という技術を使用してどちらかのチェーンからもう片方のチェーンにトークンを送ることで、イーサリアムのUSDCをソラナのUSDCに変えたり、またはその逆ができます。銀行間送金のための技術だと考えてください。

例えばイーサリアムとソラナ間であれば、Wormholeなどがブリッジに利用されるアプリケーションとしては有名でしょう。

他にもブロックチェーンをまたいだ送金をするときは、BinanceなどのCEXを利用する方法もあります。

web3の世界観④:ブロックチェーンの世界は「ビットコイン界隈」と「web3界隈」、そして「怪しいweb3界隈」の3つに分かれている

これは文字通り、ブロックチェーンの世界の世界観の区分けです。人によっては違うと判断するかもしれませんが、私見として、私はこの三つに分かれていると考えています。

まず「ビットコイン」と「web3」ですが、実はビットコインはweb3とあまり関係がありません。

web3はイーサリアムができた直後、2014年ごろにイーサリアムの持つ機能を元に誕生した言葉であることに対し、ビットコインは2008年からと、もっと昔からありました。ビットコインとweb3は別のものなのです。

ビットコインとイーサリアムは価格が連動して動くこともあり、イーサリアムなどのアルトコインを取引している人は同じようにビットコインも取引しているケースが多いので、同じ世界に属しているように見えますが、実は少し隔たれているのです。

「ビットコイナー」という単語を聞いたことがあるでしょうか?これは、程度の差はあれど、ビットコインを理解し、こよなく愛する人たちの名称です。単純にすべてのブロックチェーンの中でビットコインが一番好き、という方もいますが、中には「ビットコインこそがすべての暗号資産の中で最も優れており、他のものは価値がない」という強い思想を持っている方もいます。というかそこそこの人数います。Xでもよくケンカしているシーンが見られます。

完全に全員がそう思っているわけではないですが、このようにweb3を嫌っている人もビットコイナーの中には少なからず存在します。そういう意味で、ビットコインとweb3ではコミュニティが隔たれているといえます。

イーサリアムやソラナなどのweb3の様々なブロックチェーンはコミュニティ内で積極的に話題を共有しますが、これらの話題はビットコイン界隈ではほとんど知られていなかった、ということもよくあります。

また、技術的にもweb3を構成するブロックチェーンとビットコインには違いがあります。web3は、スマートコントラクトがないとほとんど成り立ちません。機能をカスタマイズしたトークンやNFTを発行するには、スマートコントラクトの機能が必要です。ですがビットコインにはイーサリアムに搭載されているような、いわゆるスマートコントラクトは搭載されていません。なので、どちらかというとビットコインがweb3に歩み寄ってこれない、という状態にあります。

またビットコインの拡張機能を作っている会社や、ビットコインのレイヤー2であるライトニングネットワーク関連の開発を行っている会社などはありますが、大抵これらの会社はweb3関連の事業を持っておらず、このあたりでも隔たりを感じます。

web3界隈の人間は、少なからずビットコインの話題は目にしますが、あまり動きがわからない界隈がもう一つブロックチェーンの世界には存在します。それが「怪しいweb3界隈」です。

これは要するに、ブロックチェーンやweb3を使用して詐欺や詐欺まがいのことを行っている人物や会社、及び彼らのネットワークのことを指します。

皆さん知ってのとおり、ブロックチェーン周りは金融に近いということもあって、詐欺や詐欺まがいのよくわからない商品や嵌めこみビジネスなどが蔓延っている世界でもあります。

でも、私たちは普段はそのようなビジネスを行っている人を実際に確認したり、会って話したり、どのような活動があったなどといった話はなかなか聞きません。なので、これらの怪しいweb3界隈は普段私たちのいるweb3界隈とは別で存在しており、お互いにほとんど認知をしていないのだと考えられます。少なくとも私はそのような世界を直接観測したことはありません。

ですが確実にこの界隈は存在します。暗号資産やweb3のことについて検索するときも、少しワードを変えるだけで検索結果が変わり、その結果入り込む界隈が変わってくる、という場合も多そうです。

まとめると、このブロックチェーン世界は現在以下のようになっています。

ビットコインとweb3界隈、そして怪しいweb3界隈の3つに分かれている中で、なんだかんだ話題が連動しているweb3とビットコイン界隈は少しお互いに被っており、怪しいweb3界隈はどちらとも隔絶されている、というようになっています。

web3の世界観⑤:web3世界は「EVM界隈」と「その他のVM界隈」に大きく分かれている

さて、次にもう少し範囲を狭めて、私たちの属するweb3界隈の内訳をみてみましょう。

web3界隈の中身は、大きく分けて「EVM界隈」と「その他のVM界隈」という2種類に分かれます。

EVM、VMという単語はもしかしたら聞きなれないかもしれません。これらはどちらもVirtual Machine(バーチャルマシン)というものに関する用語です。難しめのエンジニア用語なので、細かい説明は一旦おいておきましょう。

スマートコントラクトのあるブロックチェーンには、必ず何らかのVMが搭載されています。

イーサリアムならイーサリアムバーチャルマシン、略してEVMであり、ソラナであればソラナバーチャルマシン、SVMといった感じです。

しかしポリゴンなどは、EVMのプログラミングと互換のあるVMを使用しています。

このEVMと互換性があると何が良いのかというと、イーサリアム上のスマートコントラクトのコードをポリゴン上にコピーペーストで持ってきても、問題なく動く、ということです。

VMが同じということは、使用しているプログラミング言語や、それの内部での読み取り方が同じことを意味します。それ以外にもいろいろとあるのですが今回はこの理解で十分です。

逆にVMが違う場合は、同じプログラミング言語が使えなかったり、何らかの環境が同一ではないので同じコードだと上手く動かないのです。

このVMに互換性があるかないかは実はかなり重要です。VMが同じか互換性があるなら自社のコードをコピーペーストするだけでアプリケーションの横展開ができるのですが、違うのであれば新たにすべて作成しなおす必要があります。このコストはとても大きく、互換性の無いチェーンに横展開をするアプリケーションはあまり存在しません。

現在最も大きく古いアプリケーションプラットフォームとして利用されるブロックチェーンはイーサリアムです。有名なDAppsのほぼすべてがイーサリアム上で始まっており、イーサリアムのEVMはブロックチェーン世界の基本になっています。しかしEVMは、ブロックチェーン時代の最初期に作成されたVMなので、性能に限界があり、もっと高性能なVMを使用したいと望む開発者も存在するほか、EVMではチェーンそのものの速度やスケーラビリティーが他の新しいVMよりも低くなりやすいという特徴があります。なので、ソラナ等の「イーサリアムを超えるために作られたチェーン」は、あえて新しいVMを作ることでEVMとの互換性は失うが、性能で上回るという選択をしていることが多いです。

反面、アプリケーションの横展開のしやすさや既存の開発者の母数を鑑みて、新興チェーンであれどEVM環境が引き継げる、つまり「EVM互換のあるチェーン」も存在します。アバランチやポリゴンなどがそうです。

ソラナなどのEVM互換性の無いチェーンは、互換性がない以上イーサリアム上と同じアプリを展開できないので、ソラナにはUniswapやCurveなどのイーサリアム上で有名なDAppsは存在しません。同じような機能を持つアプリケーションが別に存在しています。

アバランチやポリゴンなどのEVM互換性があるチェーンには、イーサリアム上のものと全く同じUniswapがあり、全く同じように使用できます。

VMに互換性があるかどうかは、ブリッジの作りやすさにも影響します。

先ほど紹介したWormholeは例外ですが、基本的にはブリッジもVMを共有していないと展開しづらいです。なので、EVM互換のあるチェーンとないチェーンの間は接続が薄い、と言えます。

互換性がないブロックチェーン同士は繋がりにくいので、コミュニティも別物になったり、VMが違うので有名であってもあまり実際に触ったことがないという人が結構存在したりします。

まとめ

ブロックチェーン世界はブロックチェーンを大陸や国に例えるとわかりやすいです。

ブロックチェーンは土地や、大陸のようなもので、それぞれの大陸で性質が変わり、向き不向きがあります。

そして土地の上には建物、お店(アプリケーション)などを建てることができ、お金はその土地の基軸通貨(ネイティブトークン)を使用するほか、お店のポイント(アプリケーションが発行しているトークン)も存在します。

国や大陸は橋(ブリッジアプリケーション)によって接続されており、国を移動するには必ずここを通らないといけません。あるいは、空港(CEX)を使用しても良いです。

異なる国(ブロックチェーン)であったとしても大陸(VM)が同じであれば陸続きなので訪れやすく、反対に大陸が違う(VMに互換性がない)場合は大陸を隔てた場所にあるので、環境も違い、より訪れにくくなります。

といった感じでまとめて例えることができ、感覚的にも理解しやすくありませんか?

さて今回は初心者が勘違いしがちな場所や、あまり文章化されていない基本的な世界観について説明してきました。正直なところまだまだ説明したりない世界観の詳細があるのですが、これ以上はより難易度も上昇していくので今回はこの5件にとどめておきましょう。もし好評であれば続きに書ききれなかったことを書くことも考えています。

これらの知識を頭に入れておくておくことで、実際にブロックチェーンを使用する際にも混乱が起きにくく、自らが何をやっているかをしっかりと理解しながらブロックチェーンに触れられるようになると思います。この記事が、あなたがブロックチェーン世界における最初の一歩を踏み出す一助になれたら幸いです。

さいごに

私が代表を務めるクリプトリエでは、企業によるNFTのビジネス活用を簡単かつ迅速に実現する、NFTマーケティング・プラットフォーム「MintMonster」を提供しているほか、法人向けにweb3領域のコンサルティングや受託開発サービスを提供しています。Web3 / NFTのビジネス活用にご興味ある企業様はお気軽にお問い合わせください。

NFTマーケティング・プラットフォーム「MintMonster」公式サイト
https://mint-monster.io/

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