見出し画像

金融政策とスタートアップ投資を見ていて思うこと

4月は、スタートアップの資金調達を考えるうえで、先月に引き続いて大きな動きがあった1ヶ月だったと思う。

シリコンバレー・バンクの破綻によって、スタートアップが借り入れによる資金調達をすることに大きな打撃を受けたことは先月もCOMEMOに書いた。これだけではなく、経済的な状況の悪化によって、元々VCからの資金調達が難しくなっていることは、下記の記事が示している通りだ。当然のことながら、こうした状況の中で、ユニコーンと呼ばれるような大型のスタートアップが生まれる数も減ってきている。

アメリカはまだ引き続きインフレが進行しており、経済減速とまではいかないようではあるが、今後、そうした状況に陥ることも予想されている。それだけにVCの財布の紐はかなり硬くなっているようだ。

一方で、日本は日銀に植田新総裁が就任し、初めての金融政策決定会合においても、様々な含みを残しつつではあるが、基本としてはこれまでの日銀の政策である異次元緩和を維持するという方針が決められた。

もちろん、物価上昇なども含め、日本国内でも経済状況は1年前とは相当異なってきており、日銀の政策が同じであっても、ビジネス環境が同じであるということではない。

ただアメリカに比べれば、引き続きVCやCVCがスタートアップに投資する余地は残されているのではないか。日本がアメリカなど諸外国に負けずにユニコーンと呼ばれるような大きなスタートアップを育てようとするのであれば、世界的にスタートアップへの投資が鈍っているこの時期に日本の状況をうまく利用してスタートアップへの資金提供を行い、ユニコーンとなるような会社が出てくる可能性を高めることはできないものだろうか

VCよりもCVCにこうした投資を行う可能性がより多く秘められているようにも思う。日本企業の3月決算も好業績な企業が多く、日銀の異次元緩和継続のニュースも相まって、日本の株価は好調である。東証はPBRが解散価値の1を下回る企業に改善の圧力をかけだした。もちろん、これが株主への還元に回っていくことも歓迎されるべきことだが、日本企業が新規事業を生み出すためにスタートアップへの投資を通じて自社の将来の可能性を広げていくことにも、好業績による利益の一部が回されるのであれば、長期的な株主へのさらなる還元にもつながる可能性があり、好循環になるのではないかと思う。

もちろん、日本の大企業が新規事業やスタートアップとのオープンイノベーションに取り組むことの難しさがあり、単純に好業績であればスタートアップにお金が回っていくとは行かないことは重々承知している。

スタートアップへの資金提供側のマインドと日本の経済の実態の乖離、あるいは大企業の決算の好調と新規事業、引いてはスタートアップへの投資意欲との乖離は、いずれも人々の意識・マインドセットが大きな原因になっているものだ。

このような問題は一気に解決することはできないだろうが、このマインドセットや意識の問題が、日本が「失われた数十年」と呼ばれる停滞の原因の一つであることは間違いないと思う。

マインドセットを変えることは容易ではないが、政府・日銀が引き続き金融引き締めを行わないのであれば、スタートアップに企業の資金が回るように誘導する政策をとることができるのではないか。例えば一定の条件のもとにスタートアップへの資金提供を行う企業の法人税を軽減をするといったことは出来ないだろうか。岸田政権がスタートアップ振興を進める中で、バラまき的な施策だけでなく、日本経済や企業のエコシステム・循環の中にスタートアップを取り込むような施策の実施も望みたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?