ソングライティング・ワークブック 第149週:Violeta Parra(10)
El gavilán (続き3)
何度も挙げているけれど、まだ聴いたことがない人のために。
Mauricio Valdebenitoによるトランスクリプション。
鷹には爪がある、と人々は言った
一応訳してみた。「7つの要素」がちょっとわからないけれど、「芸術の7要素‐線、形、空間、価、形式、質感、色(7 elements of art-line, shape, space, value, form, texture, and color)」という言い方をすることがあるようなので、そのことか、どうか?平たく言えば、「この図が私を混乱させる」みたいな。
「混乱させる」は訳詞としてはあまりこなれた言葉ではないだろうけれど、ここではだいたい言っていることがわかればいいだろう。
響きとストーリーの合致
曲の冒頭、ギターは短10度の並行を多用して、調性のあいまいな感じを作り出すということは、前に述べた。この部分では短10度ではなくて、長3度の並行を使っている。それだけではなくて、ギターの最低音(開放弦E)が鳴らされる。それは上の長3度並行のモチーフが上昇(単にコピーして3度上に貼り付けではなく、音程も変わっていることに注意)してからも、鳴らされ続ける。
長3度という柔らかい響きの並行であることもあって、歌詞は悲痛なことを言っていても、全体の響きは柔らかい。開放Eの不穏な低音が鳴っているぶん、緊張はあるけれど。
続いて、「鷹よ、鷹よ」と呼びかける部分では、さらに甘い、フランス風の響きになっている。
甘く鷹を呼びかけると、同じリズムパターンで鷹がやって来る(viene el gavilan)。ところが響きが違う4度並行、9度並行、短10度並行が使われていて、響きが硬くなっている。
そして、鷹がニワトリに襲い掛かる様子が音で描写される。「鷹よ、鷹よ、私は死んでゆく、鷹よ(Gavilán gavilán que me muero gavilán)」のところで鳴らされるギターの和音は以下の通り。
とくに音楽理論とかを知らなくても、楽器と指の形から始めて、「あ、これ面白いな」という響き、あるいは、それこそ「琴線に触れる」響きを見つけ、そこからストーリーを描写するように音楽を組み立てることができる。
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