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ソングライティング・ワークブック 第40週:弾き語り(1)

弾き語り(2)
弾き語り(3)

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伴奏者による伴奏と弾き語りの伴奏の違い

それがどのような音楽であるかを示す

あなたが歌い、伴奏者(バンドを含む)がいる場合と、あなたが歌い、あなた自身がピアノ、ギター、オートハープ、アコーディオンetcで伴奏する場合とを比べてみる。弾き語りといっても、自宅、路上、カフェ、スタジオ、コンサートホール、野外ホールなど、いろいろなセッティングがありえる。

そもそもはカジュアルな表現方法なのだろう。歌が出来上がったままの、パッケージされる前の、デモに近い音楽。近さの音楽。必ずしも完璧さは求められない。

特に自分で書いた歌を自分で演奏する場合は、歌唱力や楽器の演奏技術を示すことよりも、その音楽がどのような音楽であるかを示し、観客にそれを語りかけることが優先されるだろう。そこが歌手と伴奏者という形態との違いだろう。

もちろん演奏技術を見せるための弾き語りもありえるし、また、その音楽がどのような音楽であるかを示すことにも技術が要るとは言える。それから、作曲者が最初から演奏技術を示すことを勘定に入れて作曲するということもある。

弾き語りの楽器パートはバンドやレコーディングされた音の簡略化された代用である必要はない

ポップスのピアノ弾き語り用に編曲された楽譜はたくさん出版されている。その多くはレコーディングされたものが簡略化されたものになっている。ピアノはマルチタスキングが得意だ。よって、左手はベースギターの代わりになる。右手がギターのカッティングやスネアドラムとリード楽器やストリングスのオブリガードを受け持つ。下の例は私が今勝手に書いたものだけれど、ヴォーカルパートを歌って同時にピアノパートを弾くのは意外と難しい。初見でできる人は少ないだろう。実際に売られているものは、ここまで難しいことはあまりないだろうけれど(難しい楽譜は売れない)、こういう楽譜の考え方は、レコーディングされたものであれば皆が慣れ親しんでいる音はなるべく生かそうということだ。そうなるのは仕方がない面もある―ある有名な歌がその有名な歌であることを示すのがこういう楽譜の使命なのだから。

これを弾き語るには意外と練習が要る

自分の身体に引き寄せる

でも、自分で書いた歌であれば、何もバンドの各パートを一人でやってみようというような伴奏をする必要はない。できれば鍵盤も指板も見ないで歌に集中できるようにするなど、自分の身体と相談してやりやすいように工夫すればいい。下のJoni Mitchellの映像は39秒からの指使いに注目。

きちんと調べたことはないけれど、Mitchellのギターはほとんどが変則チューニングだそうだ。子供のころポリオを患って指先が器用に動かせなかったのでいろいろと工夫したと説明している、彼女についてのドキュメンタリーを見たことがある。

下のTori Amosの『Silent All These Years』ピアノパートはそれなりに難しいように見える。音域が工夫されていて、声と助け合って効果を高めるようにできている。効果的であれば、多少難しいものを書いて練習してみる価値はあるだろう。

次回は伴奏パートの音域、リズム、厚みなど個々の要素について考えてみる。

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