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ソングライティング・ワークブック 第163週:Cole Porter(13)

ついでに。

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呼吸できる空間

前回紹介した『Ev'ry Time We Say Goodbye』の冒頭のコードはこんな風にIとviが交互に現れるというものだった。

そういえば、中村八大の『上を向いて歩こう』の冒頭もIとviが交互に現れる。

こんな曲はたくさんあるはずだ。でも、いわゆる「芸大和声」をちょっと齧りかけた人は「あれっ」と思うかもしれない。和声課題では強進行だけを使うことが求められているので、一度Iからviへ行ってしまうと後戻りできないのだ。つまり、I-vi-iv-ii-V7という基本的な順番があって、間はスキップしてもいいけれど、順番は守らなければならないことになっている。

そのルールだと、こういう『Tea for Two』みたいなのもだめということになってしまう。

コモンプラクティスの和声(芸大和声はそれを学ぶためにある)の範囲で書かれているもので、『Ev'ry Time We Say Goodbye』や『Tea for Two』みたいな曲はたくさんあるはずだ。なのになぜ「芸大和声」では禁じられているかというと、「お勉強」するためには時間と小節数を節約しなければならないからだ。

和声課題というのはあくまで圧縮されたミニチュアを作るものなので、1音ごとに「進行」しなければならないというようにルールが設定されている。実際の作曲はまた違う。和声課題を書くように作品を書いてもいいけれど、それでは窮屈なものばかりできる可能性がある。実際の作曲ではむしろ「呼吸できるように書く」ことを学ばなければならない。


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