オクトパストラベラーⅡ 全曲楽曲解説
はじめに
お久しぶりです。ノートの更新がかなり久しぶりなので、なんだか慣れませんね(笑)。
オクトパストラベラーシリーズでは、サントラが出る度に「全曲楽曲解説」と称して、このようにちょっとした制作秘話などを書いてきたのですが、
今回は正直楽曲量も多いし…(笑)、そもそもこういった楽曲解説って求められているんだろうか?という若干の自分自身へのネガティブな気持ちも有り、やろうかどうか迷っていたのですが…
(そして言い出してしまうと、完走しなければいけませんしね🤔)
そもそもこうやってサウンドトラックという形で自分の楽曲を皆さまにお届け出来る事自体が「奇跡」みたいなもので、更にそれを、今回はお値段的にもゲームとほぼほぼ変わらないくらいの額で購入して頂く事が出来、せめてその恩返しくらいはせねば!と、またこの長い長いマラソンを走りきる「揺るがぬ決意」をいたしました。
文章の専門家では無いですし、ライターが付いているわけでもありませんので、お読み苦しい点も多々あるかと思いますが、まったりとお付き合い頂ければ嬉しいです。
Tr.1-1 OCTOPATH TRAVELERⅡ メインテーマ
さて、早速参りましょう、まず記念すべき1曲目は本作のメインテーマ「OCTOPATH TRAVELERⅡ メインテーマ」の解説を行いたいと思います。
このメインテーマは、1や大陸の覇者など、シリーズをプレイされた方にとっては、もはやお馴染みの曲だと思います。
今回もゲーム起動直後のタイトルバックで流れることになりますが、その映像は1に比べて更に鮮やかに、そして空気感バッチリに進化したHD-2Dの美しさやその新たなカメラワークなどが堪能できる仕上がりになっています。
そんなタイトルバックで流れるメインテーマはまさしく、本作OCTOPATH TRAVELERⅡの「顔」となる楽曲ですので、この新たな進化を遂げたHD-2Dのビジュアルに負けないようなサウンドの広がりを実現できるよう意識して作りました。
では、具体的にどのようなことを行っていったのかを解説していこうと思います。
海外レコーディング
まず、今回の「メインテーマ」そして一部のフィールド楽曲やエンドロールで流れる楽曲は、オクトラシリーズでは初めての、海外のオーケストラを使ったレコーディングのサウンドを取り入れています。
海外レコーディングと言っても、いまや当たり前のように行われていますし、具体的にどんなメリットがあるの?と良く分からないところがありますよね。
海外のオーケストラを録音する利点としてまず一番に挙げられるのが、国内には無いような大きなスタジオで録音できるということがあります。
では、スタジオが大きいとどうなるか、それはシンプルに箱が大きい分だけ広がりのあるサウンドを収録出来るという事です。
今回収録を行ったナッシュビルのオーシャン・ウェイ・レコーディング (Ocean Way Recording) は、そうは言っても国内のスタジオと比べてそこまで大きさに差はありません、しかし、天井が高くとても広がり感のあるサウンドを収録することができるスタジオです。
このスタジオは、ハリウッド作品や海外ゲームでも頻繁に使われる非常に有名なスタジオで、数々の名だたる作品がここでその素敵なサウンドを収録しています。
もちろんスタジオの大きさだけが重要ではありません、現地のミュージシャンが生み出してくれる演奏の表情は、日本のミュージシャンとはまた違った良さがあります。
ここナッシュビルのミュージシャンも今回とても素晴らしい演奏をしてくださいました。
オクトラ2の一部楽曲では、ここで収録したサウンドに加えて、国内でも更にホイッスルやギター、そしてパーカッションなどのソロ系の楽器を収録すする事によって、2を象徴するような広がりのあるサウンドを実現しています。
ただ、気をつけなければいけない落とし穴として、「海外で録ればいいってもんじゃ無いよね」という問題もあります。
オクトパストラベラーの音楽では、昔ながらのメロディが分かりやすい音楽を現代風にアップデートする、というコンセプトで音楽を作ってきました。
この、「メロディを分かりやすくする」という要素と、「アレンジを凝って豊かな響きにする」という要素は、時にぶつかり合うことがあるんです。
なので、1の時は極力シンプルなアレンジで、敢えて余白を残すような仕上がりを心がけました。
2では、そんな中で進化したHD-2Dのグラフィックに合うような音楽を模索せねばなりませんでした、そこでまず、メインテーマやエンディングなどの、インゲームにあまりダイレクトに関わらない部分、そして、フィールド音楽に絞って、海外での録音を行いました。
この塩梅はとても難しく、ゲームがリリースした今でも何が正解なのか、自問自答する部分でもあります。
しかし、そこで同じものを作り続けるのも違うかな、と思い、今回こういった取り組みにチャレンジしてみました。
アレンジ面での新要素「声」
また、2つ目の取り組みとして、サウンドだけでなく、アレンジの面でも、広がり感を感じるような仕組みを新たに加えています。
メインテーマという楽曲は皆さんにとっては一番馴染みのある楽曲、と言っても過言は無いと思いますので、大きな変更を加えることにはとてもセンシティブにならなければいけません。
しかし、折角ナンバリングが2になったのならば、サウンド面だけでなくアレンジ面でもちゃんと進化も感じたいですよね。
そこで、おおまかな楽曲の構成は1の頃の曲とあえてあまり変えないまま、そこにしっかり変化も感じられるようなアレンジの変更を施しています。
一番わかりやすいのは、冒頭の歌の入った部分だと思います。
この歌は、今回のゲーム中のフィールド楽曲のコーラスアレンジでも歌唱をいただいたユリアミヤゾノさん(@YuriaMiyazono)に歌っていただいたもので、ゲーム中では尺の都合でカットとなってしまったんですが、1stトレーラーで印象的に使われていた部分です。
今回のゲームの仕様では、なんといっても昼夜切り替えの表現がとても大事になっていて、進化したHD-2Dにより、昼と夜とで町の景色が一変します。
アクワイアさんが大層気合を入れて作ったその昼夜の変化を、音楽でもどうにか魅力的に表現しなければと考え、特に夜の象徴的な表現としてユリアミヤゾノさんのその素敵な「声」の要素を楽曲に取り入れるアイディアを思いつきました。
後ほど紹介するメインテーマの夜ver.では正にその要素がふんだんに盛り込まれている訳ですが、昼ver.の冒頭でもご挨拶のような感じで、ユリアミヤゾノさんの「声」を入れています。
アレンジ面での新要素「maj9」
次に、楽曲の0:29秒あたりの部分において、ストリングスがザクザクと動いたサウンドが新たに追加されていると思いますが、その要素が今回のアレンジの要のアイディアになっています。
このアイディアがひらめくことによって、今回のメインテーマの全体のアレンジの方向性が決まったと言っても過言ではありません。(実際ここに辿り着くまで紆余曲折がありました笑)
ちょっと専門的な話になりますが、このメインテーマは全体を通してmaj9というコードが象徴的に使われています。ここの部分は、その中心的な響きであるCmaj9というコードが変形した形になっています。(音にするとシドシドレドという感じです。)
で、そのCmaj9というコードがその後Cm9というマイナーの和音に変化します。(メジャーからマイナーに変化する)
この変化はこの曲に新たな音楽的ドラマティック要素を付加してくれました。
この展開はキーを変えて1:11秒〜のあたりにも登場します。(E♭maj9→E♭m9)
更に更に、これは多分言われないと聞き取れないくらいのバランスではあるのですが、その後のこの楽曲のサビ部分(1:49〜)でも、オーケストラのバックにテクスチャーとして薄くこの和音がなっています。そうする事により、2のアレンジの新要素として楽曲全体にその要素を散りばめながら、1の頃のアレンジを極力変えないずに広がりをプラスするという課題を解決しました。
ちなみにこれはめちゃめちゃ余談なんですが(笑)
エンディングの「ジャジャーン」という箇所は、最初は新アレンジとして別のパターンのメロディーを作っていたんですよね。
しかし、プロデューサーの高橋さんの「1のエンディングが好きだったからここは1のものをあまり変えない形でいきたい!」という要望により今の形に落ち着きました、確かに後々冷静になってみれば、そこを新アレンジにしてたら原型を変えすぎてしまっていたかもなとも思いますから、改めて新アレンジの難しさを痛感しました。
そんなこんなで1の時に紆余曲折あったとご紹介したこの曲ですが、2の時も同じくらい紆余曲折あった1曲となりました(笑)
しかし、それだけ気合を入れて作った新アレンジ、是非お楽しみ頂ければ幸いです。
なんだかんだ長くなってしまったので、今日はこの1曲だけにしようと思います。
それではまた明日!
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