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鶯の巣

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幸一郎、茜の夫婦と学生時代からの幸一郎の同居人である英雄は協力して、悠一を育てている。 一見、幸せそうな共同生活だが、その安定はきわどいバランスで作られているものでーー。
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記事一覧

鶯の巣 第19話 悠一

 見慣れた駅のハズだけれど、今日は人が多いような気がする。やっぱり夏休みだからだろうか。…

鶯の巣 第18話 茜⑥

「うーん」  私は腕を組み、目の前に広がる光景を見つめた。私のことを悩ませるのはスーパー…

鶯の巣 第17話 英雄⑥

 公園には子どもの笑い声があふれている。俺はその中で遊んでいる悠一と翔を眺めいていた。ま…

鶯の巣 第16話 幸一郎⑥

 エレベーターのドアが開くと見慣れた顔が入ってきた。同期の安野だ。僕はヤツに尋ねる。 「…

鴬の巣 第15話 茜⑤

 差し込む太陽の光が部屋の中をほどよい暖かさにしてくれる。このまま、ボーっとしていたいく…

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鶯の巣 第14話 英雄⑤

 扉が開く音がしたので、俺は読んでいた雑誌から目線を上げた。幸一郎だ。コイツ、実家に帰っ…

鶯の巣 第13話 幸一郎⑤

 花火が破裂したかのように、大きな泣き声が部屋の中に鳴り響いた。悠一だ。母さんが慣れた手つきで、あやし始める。  ああ、僕はなんて愚かなんだろうか。茜ちゃん、そして悠一のことを言われて、つい感情的になってしまった。でも、今の僕は悠一を泣かすことしかできていない。  母さんの発言は怒る必要がある内容だった。それは間違いない。けれども、やり方を工夫しなくちゃダメだ。  結婚式の夜、僕は茜ちゃんを守るって決めた。それが他人を自分のエゴに付き合わせる自身に課した誓いだ。今は家族も増え

鶯の巣 第12話 茜④

 差し込む朝日が目にしみる。仕事が休みだというのに、心も身体も重い。もう朝なんだ。私は日…

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鶯の巣 第11話 英雄④

 ふと目をやると、自分の存在を伝えるようにピカピカ光る。俺はスマートフォンを手に取り、画…

鶯の巣 第10話 幸一郎④

 僕の胸元にいる悠一は、静かに寝息を立てている。ちゃんと寝てくれているみたいだ。安心して…

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鶯の巣 第9話 茜③

 職場から帰る電車の中で、私はスマートフォンをチェックする。英雄くんからメッセージだ。今…

鶯の巣 第8話 英雄③

「幸一郎くん、大丈夫?」  スーツ姿の茜ちゃんが、心配そうな顔で幸一郎と俺を見る。幸一郎…

鶯の巣 第7話 幸一郎③

「ただいま」  僕が家のドアを開けても、誰も出て来ない。だが、キッチンの方で話し声はして…

鶯の巣 第6話 茜②

 身体の内側から生じる自己主張。私はそれに答えるように、自分のお腹をさする。 「もうそろそろ会えるよ」  今、どれだけ言葉がこの子に伝わっているのか、わからない。けれども、彼に語りかけることは、当たり前のことだ。なぜなら、確かに私の中に存在しているのだから。  この子が生まれてきたら、どんな風に育っていくんだろう。私には兄弟がいないから、想像がつかない。  男の子はとにかく元気だっていう。スポーツをやらせたらいいのかな。野球? それともサッカー? どちらに似ても、足は遅いだろ