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バリ島音楽と芸能の旅2024-7.バリのお祭りや儀礼(クニンガン、オゴオゴ )

3月に10日間ほど行ったバリ島の旅、いよいよ最終章です。今回はこの旅のメインともいえる、そして何よりバリ島といえば、というお祭りや儀礼についてです。

今回この時期にバリに行った大きな理由としては、ニュピを体験したい!というのがありました。ニュピは、バリにおけるお正月。バリ・ヒンドゥー「サカ暦」の新年にあたり、バリ・ヒンドゥー教徒にとって最も需要な日だそうです。
この日は1日、外出は禁止、火を使うこと、仕事をすること、殺生することも禁じられるため、とにかく何もせず静かに家で過ごす日です。この静寂を一度味わってみたいと思っていたのです。
また、今年はさらに、その時期にいろいろなお祭りが重なり、3月8日がクニンガン、10日オゴオゴ、11日ニュピ、と祭り好きにはたまらない年中行事盛り沢山なタイミングに当たりました。その体験を書いていきます。

1.ガルンガン、クニンガン

バリ・ヒンドゥーにはガルンガンとクニンガンという重要な年中行事があります。これは日本で言えばお盆のようなもので、ガルンガンは神々や先祖の魂が地上に帰ってくるのをお迎えする日(迎え盆)です。その10日後にはクニンガンがあり、今度は帰ってきた神々や魂たちを見送ります(送り盆)。
この2つはセットで行われ、半年に一度巡ってきます。2024年は2月28日がガルンガン、その10日後の3月9日がクニンガンでした。私は3月4日からバリ島に行ったので、クニンガンを体験することができました。

ガルンガンからクニンガンの時期は、家の前にペンジョールと呼ばれる竹で作った飾りを立てます。先祖たちの魂がこれを目印に帰ってくることができるよう、依り代の役目でもあるそうです。
ペンジョールはお祭りがあるときにはよく街中で見かけますが、この時期はバリ中がペンジョールでいっぱいになるのでとても華やかです。

通りに並ぶペンジョール

今回私は、6年前に1ヶ月半ほど滞在させていただいた宿に再びお世話になったのですが、とても暖かいご家族で、今回も家族の一員のように一緒に儀式に参加させていただきました。おかげで地元の方のクニンガンやニュピの過ごし方を体験することができました。

クニンガン前日の夜、ウブドのPura Gunung Lebah寺院にお参りに行きました。今年は雨季が明けるのが遅かったようで、この日もあいにくの雨模様でしたが、クバヤというレースのシャツに、カインと呼ばれる腰布を巻く、バリの伝統衣装を身につけて、宿のご家族に連れられて歩いてお寺まで向かいました。
夜のお寺はとても幻想的で、なんだか異世界に迷い込んでしまったよう。私たちはお寺の中を覗きに行ったのですが、経路を間違えてしまい、どうやら祭壇の上にたどり着いてしまいました。

お寺の門
夜のお寺は幻想的で異世界に迷い込んだよう

とても広いお寺で、敷地にはたくさんの人が地べたに座ってお祈りをしていました。私たちも下に降りて他の方と一緒にお祈りに参加させていただきました。

境内でお祈りするたくさんの人々

儀式が終わると、皆お供物を持って大移動が始まりました。女性は頭の上に供物をのせて、バロンを中心に壮大な列が連なります。併せてブラガンジュールと呼ばれるお囃子ガムラン隊も演奏をしながらついていきます。この間、道路は強制的に通行止めに。外国人観光客のバイクや車など、祭りに関わらない人たちは通り過ぎるのを今か今かと待っているようでしたが、現代社会でも祭りを最優先にしているバリ人の精神がやはり素晴らしいなあ。

御供物を持って移動する列

その後移動したPura Desa寺院にて儀式は続きました。私たちはその隣の集会場でブラガンジュール隊の演奏を聴いていました。青年団のような若者たちの演奏、やはりここでもコテカンが重要な構成要素になっていて興味深い!
また、映像の左端に映る小さな子供が聞きながら手拍子している姿も、こうやって子供のうちから自然とガムラン音楽を身につけていく様子が垣間見えて感慨深いですね。


クニンガン当日は、午前中までに家寺でお祈りをします。バリでは、家の敷地の中に立派な家寺があるのが一般的です。正午12時までに全ての儀礼を終了させねばならないそうです。なぜなら、この日の正午に、全ての神々は、天界へと帰ってしまうからだそう。

きれいに飾り付けられた家寺
車にもお飾りをつける家主のニョマンさん

また、夕方にはガムラン隊と共にバロンの巡行がやってきました。この時皆家の前に出て、行列がやってくるのを待ちます。家の前でお供えを準備し、お授けをいただくというような感じです。

雨の中祭列を待つ様子

この時はあいにくの雨でしたが、皆地べたに座って行列が通り過ぎる間お祈りします。バロンも雨のためカバーが被せられてしまっています。。

2.オゴオゴ

翌日はいわゆる大晦日。ニュピ(元旦)の前日です。夜はオゴオゴと呼ばれる大きなハリボテ人形が街中に出て大騒ぎになります。
オゴオゴは悪霊をモチーフにした人形で、悪霊を払って神聖な新年を迎えるために行うそうです。バリにはバンジャールと呼ばれる各村ごとの地域集合体があるのですが、そのバンジャールごとに1体のオゴオゴを作り、夜はそれを街に持っていってパレードをして大いに盛り上がります。前夜の大騒ぎののち、翌日ニュピは打って変わっての静寂という、この落差を体験してみたかったのです!

日中から夜に向けて、せわしなく準備が進んでいきます。集会所ではオゴオゴ人形の最終準備中。しかし本当に精巧に作られていて、バリ人の能力の高さに改めて驚かされます。(これらはみんな一般市民が作るもので、専門家が作るわけではありません)私たちが滞在していた地区のオゴオゴはガルーダとハヌマーンが混ざったような人形でしたが、毛並みまでリアルに作られていて本当に傑作です!
子供たちが自分たちの村のオゴオゴを自慢げに紹介してくれました^^

精巧に作られたオゴオゴ人形
かっこいいオゴオゴを前にドヤ顔の少年たち

このオゴオゴ、本来は悪霊の依代として、終わったら燃やして浄化するそうですが、最近はどんどん技術が上がって精巧になり、コンテストで競いあったりすることもあるので、しばらく取っておいたりすることもあるようです。確かに、1ヶ月ほどかけてこんなに傑作を作ってすぐ燃やしてしまうのはもったいなくもありますね。

そして、夕方近くにいよいよ街に向けて出発!電線に引っかかったり、ペンジョールにぶつかったりと危うい様子もありましたが笑、威勢よく街中に出ていきました。日本で言うところの、ねぶたのような神輿のような感じですね。

いよいよ街に向けて出発!

さらに夕方、日が落ちてくると、家で悪霊払いが始まりました。松明を持ち、さらに鍋やヤカンなどをカンカンと叩いて音を出しながら、家中を廻ります。火と音で家に住み着いた悪霊たちを驚かして追い払うそうです。日本で言えば、節分の「鬼は〜そと〜。福は〜うち〜!」ですね。本当に、日本にも近い文化がたくさんありますが、もう日常からはかなり姿を消しつつあり、今でもこれだけ生活の中心に残っていることが、やはりバリの凄さです。(以下、様子の映像です)

いよいよ夜になり、街ではオゴオゴの大騒ぎが始まりました!私たちもウキウキとウブドの中心に出ていきましたが、王宮前の広場は密、密、密!!
とにかく人がたくさんですごい熱気!全く身動き取れないほどです。
その中、突然に竹の棒を持った人たちがやってきて、規制線が引かれ、これから真ん中でオゴオゴのショーが始まるから下がれ下がれ!と棒で押されます。思いがけず、前のほうにいることになってしまい、最も密スポットで前の人で全然見えず息もできないほど。。正直身の危険を感じるほどでした。。

なので、あまり中身はよく見えなかったのですが、、どうやら寸劇のような物語が冒頭にあり、その続きとしてオゴオゴが登場するようです。村の中高生くらいの若い子たちが中心になって、かなり趣向を凝らした名演技が繰り広げられているのですが、なにせ人が多すぎて全然見えなくて残念でした。。

王宮前広場に集まったたくさんの人!

劇が終盤になると、突然オゴオゴ隊がガムランの合奏と「うお〜!!」と言う奇声と共に勢いよく動き出し、それによってますます押されるので正直怖かったですが、照明の演出やスモークまで入ってとても迫力満点でした。
(以下映像は、一緒に行ったなおちゃん撮影のもの。私の場所からは全然見えなかったのですが、結構ちゃんと取れていてすごい!こんな感じだったのですね。)

その後、いよいよ私たちの滞在している村のオゴオゴが登場!なんだか私たちも誇らしい気分になりました。例によって前半の寸劇はやはり全く見えなかったのですが^^;(何やら松明を持ってやっていたよう)後半いよいよオゴオゴが動き出すと、ライトに照らされて大迫力!目からビームまで出ていて神輿のように激しく揺らされてかっこよかった〜!

滞在先の村のオゴオゴ

最後拍手と共に、私たちの村の(と言ってしまう笑)オゴオゴが退場していったので、私たちもここらで力尽き、帰路に着くことにしました。オゴオゴは深夜まで続くようでしたが、もうすでに人混みで疲労困憊。。^^;あとは若者たちに楽しんでもらおうと退散しました。


いやあすごい熱気!特に最近はコロナで長らく祭りもできない世の中でしたので、久しぶりの密と祭りの熱気を体感できて嬉しい時間でした。そして、若者たちが多く、活気があっていいなあと感じました。子供にとってはこの日だけは遅くまで起きていられてワクワクしたり、青年時代は友達とオゴオゴの神輿を担いで盛り上がったり、バリの若者たちのキラキラした青春を想像してうらやましくなりました。

オゴオゴは、もう少し前はもっと素朴で、単に人形神輿を担いで街を練り歩いていたようですが、最近はどんどん派手になって、パレードというよりショーの方向性が強くなっているようです。なので、オゴオゴが動き出す前に15分ほどの寸劇ショーがあったりと、どんどん凝ったパフォーマンスになっていき、でもストリートでやるので人混みでよく見えない、、みたいな状況になっているようです。私はもう少し昔ながらの素朴なパレードもいいなあ、なんて思いましたが、今回はウブドだったのでより一層最先端だったかもしれません。今度は、もう少し小さな村のオゴオゴも体験してみたいですね。

翌日のニュピは次回へ続く

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