勝手に論点シリーズ① 個人情報の第三者提供と著作権法の引用とか

勝手に論点シリーズ 個人情報の第三者提供と著作権法の引用

※勝手に論点シリーズ
法律上の論点になりそうな、でも偉い人(弁護士さんとか学者)が言及してない(してなさそう、しているかどうかまでのそこまで深い確認はしていない)ところを、メモ書き程度に浅いリサーチで言及するシリーズ

論点の背景

「破産者マップに行政指導 プライバシー侵害の批判相次ぐ』
朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASM3N3T12M3NULFA008.html

ウェブ上で公開されている個人情報であっても、それを取得すれば、取得に関する手続が必要になる。
手続きとしては、本人に対する利用者目的の通知、もしくは利用者目的の公表。
本人から直接取得ではないため、本人への明示は不要であるから、プライバシーポリシーを公表しておけば問題はない。

そしてなお、ウェブ上で公開されている個人情報を、再度自分のサイトに掲載する場合でも、第三者提供にあたる。第三者提供をする場合は、第三者提供に関する同意が必要になる。

破産者マップは、官報に掲載されている個人情報を取得しているが、利用目的を通知していない。
かつ、本人に対して提供するについて同意をとってない、ため、個人情報保護法違反、ということだと認識してる。

つまり
・ウェブとかで公表・公開されている個人情報であっても、取得の手続きが必要
・ウェブ上で公表・公開されている個人情報を、自分のサイトとかで公開するのには、第三者提供に関する手続きが必要

上記、前提で書いてある整理になることは、なんとなく認識していたけども、どこまで真面目に適用するの?っていう疑問あり。この部分ついて、仮説事例を立てて勝手に検討。


勝手に論点

仮説の事例として、以下
X(個人情報取扱事業者)が運営するウェブメディアが、新聞社Yの、個人Aに関する記事を引用をした。Xは、利用目的の通知や公表はしておらず、Aから個人情報の第三者提供の同意を取得していない。


●検討① Xそもそも適用除外になっちゃう説
Yは、個人情報保護法76条1項1号により個人情報保護法の適用除外になっている。
実は、Xも、ウェブメディア運営しているから、報道機関に当たって、かつウェブメディアの掲載は報道目的にあたるから、Xもやっぱり適用除外にあたる、っていう。

・反論
「報道機関」の要件はもっと厳しいのではないか?
ここがゆるくなってしまうと、多々不具合が生じそう。
「破産者マップ」が、仮に破産者情報を報道する?、と言う目的を掲げていたらどうなるのか?

・結論
支持できる論では無さそう。「報道」の定義について、改正前個人情報保護法に関しての資料っぽいのから、見つけた。jbpa(一般社団法人 日本書籍出版協会)さんのところの資料。資料名不明。
https://www.jbpa.or.jp/pdf/guideline/privacy0501.pdf
やっぱり、報道は厳格に解されるべきだとは思うので、SEO目的とかアフィ目的くらいのウェブメディア程度だと入れてはいけないと思う。

●検討② 適法な引用だと適法な状態が承継される説
Yが適用除外になる訳であり、適法状態。それが適法な引用がなされることによって、適法な状態が承継されるという説。

報道機関の報道目的が適用除外になっているのは、表現の自由とのバランスの問題になっていた気がする。一方で、著作権法上の引用も、同じで学問の自由とか表現の自由に配慮した規程(参考 中山信弘 「著作権法 第2版」 p321)。
同一目的・直接利用の時って、色々承継するよね、っていう。刑訴法でも行政法でも、なんかね。

・反論
承継する理由がいまいち不明だし。
一次媒体が報道目的でも、引用後の二次媒体の目的が報道目的じゃない場合もありうるわけで。・結論
承継する根拠はたしかに無いし、二次媒体が完全に報道目的じゃない場合もあり得る。

●検討③ 引用の場合は、個人情報の第三者提供の主体にならない説
引用、といのはあくまで一次媒体を提供しているものになるわけだから、一次媒体の中に個人情報が入っていたとしても、それを提供しているのは一次媒体の発信者。つまりYであって、Xは第三者提供の主体になっていない、という説。・反論
第三者提供の確認記録義務の適用されないケースとして、本人に代わって提供というのがある(個情法 第三者提供ガイドライン)。
この場合、確認記録義務はないが、あくまでも第三者提供にあたることには変わらない、ということ。
本件、これに近いものに考えられる感じがする。仮に本人に依頼されて提供しても第三者提供にはあたるのであるから、引用によってしても第三者提供であることに変わらないんだろうと思う。

●検討④ 報道機関の記事でも、引用できないマジか、という感じだけども、個人情報保護の方が上回るっていうことになることになるのではないか・反論
著作権法で認められる引用が、その上段で個人情報保護法によって制限されるということになると、表現の自由に対する制約として強すぎるのではないか、という感覚的な抵抗感。あまりケースとして想定してされない?のだろうか。

・結論
条文を機械的に解釈すると、この結論になってしまうんではなかろうか。


終わりに

そもそも、適法に公表されている個人情報について、他と同じ規制を課すことの方が難しいんじゃないか。という感覚。個人情報保護委員会の、EUへのアピールが前面に出てしまったんじゃないか。破産者マップはたしかに問題があるとは思うが、それを個人情報保護法の中で処分するべきでは無かったように思っている。精緻に見れば、同じようにウェブの情報を集めて再度提供している媒体はあるだろうし、その中に個人情報は含まれていることはあるだろうから、それも処分するんですか?というふうに思ってしまう。そもそも、適法に公表されている個人情報について、他と同じ規制を課すことの方が難しいんじゃないか。という感覚。個人情報保護委員会の、EUへのアピールが前面に出てしまったんじゃないか。破産者マップはたしかに問題があるとは思うが、それを個人情報保護法の中で処分するべきでは無かったように思っている。精緻に見れば、同じようにウェブの情報を集めて再度提供している媒体はあるだろうし、その中に個人情報は含まれていることはあるだろうから、それも処分するんですか?というふうに思ってしまう。
そもそも、適法に公表されている個人情報について、他と同じ規制を課すことの方が難しいんじゃないか。という感覚。個人情報保護委員会の、EUへのアピールが前面に出てしまったんじゃないか。
破産者マップはたしかに問題があるとは思うが、それを個人情報保護法の中で処分するべきでは無かったように思っている。精緻に見れば、同じようにウェブの情報を集めて再度提供している媒体はあるだろうし、その中に個人情報は含まれていることはあるだろうから、それも処分するんですか?というふうに思ってしまう。

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