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文学・詩歌

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#押韻詩

詩型論:「複数音制約」と押韻詩型

 こんばんは。Sagishiです。  今回は、前回書いた「複数音制約」と絡めて、日本語の押韻詩の詩型論を書いていこうと思います。連載記事的な。 1 前段/モーラリズム 以前書いた詩型論では、日本語の二重韻律構造をもって、韻律定型を構築することの難しさを記述しました。  しかし、結局のところ日本語はモーラリズム言語なんだから、モーラを基礎韻律単位として詩型を構築するしかない、と考えを落ち着けました。よって今後は、どのようにしたらモーラリズムを使って詩型を構築できるのかを考

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詩歌:滅びの華

 肩書きに生きれば、ひとは虚飾、  年老いた者は日没に遊び、葡萄酒を餐む、  光沢ある肌の滅びを捕食。  旧い友人が置いた葉書の紐をほどく、 「善良の波のまえに父はいた」読む、  肩書きに生きれば、ひとは虚飾、  慈愛のない路に、斃れる子の孤独、  コーカやウィを売る商人は富む、  光沢ある肌の滅びを捕食。  鉛の輝き、囁き、沈鬱なる太陽の予告、  だれもが真実に歩み続けるが、行く先は虚無、  肩書きに生きれば、ひとは虚飾、  闇を掘る墓守が、戸の隙間を覗く、

詩歌:瓢箪

剝がされてゆく窓の薄氷 開け放たれる赤子たち 戸惑うだけの鳴き声は渇望 無垢からあふれる花の味 洞窟を押し広げる夢は 捨て去られた過去を空想 なんども境界に手を触れた そのたびに眼裏に集光 届かない故郷のクレソンに 鼻を押し当て男と連れションし くだらない冗談を交わす あたかも前世の光景を幻視 しているだろうか、喉下の天使 やさしい手で瓢箪を触る

詩歌:雪と光

風に煽られ木の葉揺れ 身の振るさきなきこの行方 新雪の積る道の白 流れる時の言葉・夢 膨れる新芽の芯の先 開いて閉じては胸をつく ひそか陽炎 詩の灯り ゆっくりこころをほだしつつ 子供の声は記憶のあと 手のひら残る冷たさも 暑さもいつか消えるもの ようようメロディに乗せながら 静かな水辺に遊んでる 憧れのひとの背の広さ 白鳥(はくちょう)の羽か温める 心理のうちに秘める想い

詩歌:すりぬけてゆく

三十代半ばで、独身の派遣労働 同僚からも兄弟からも共感されない、俺は泡沫 富めるものがさらに富む街、贈賄と汚職の左遷報道 安酒と土手煮で、あがる口角 林立するビルのあいだ、たよる宛もなく 手にした傘を向ける、顔もしらない英雄に撃つ ブルーカラーがビルにはりついて汗をかく 作業員は、くらい部屋でそのときを練習しつつ 花を抱えてベビーカーを押す女性がいた いつしか忘れてしまった愛おしさ 俺たちはハード的に与えられた機能しか うまく扱えなくなったのか、価値観も立場も固定

詩歌:自由詩の子ども

 すべての詩には謎がある  謎のない詩には詩はない  遠ざかる景色を部屋  の隅で感じ、コツコツ叩いた窓ガラス 「あなたの感官は、力学に従わない」  自由の葉へと落ちる陽だまり  葉脈を走らせ、空へ枝は伸び、歴史を経た  大輪の花が咲き、生き方に拘らない  新しい道を多くの子が選んだ…けどあなたは自由詩の  ことばかり書いて、古臭い詩語や隠喩で遊んでいるね  すっかり飽きたわたしは、もっと新しい仕事がしたい  未踏の音の霊峰に足跡をつけて、まるで詩の地球儀を  回してい

詩歌:囲炉裏のふち

 茅葺屋根の小屋で囲炉裏  を囲み、若い奴らは手を擦りあわせ  口々に愚痴りだした不幸せ  を寒風が吹くなか、老人がひとり 「お前らはなってない。古いものは  大切にせず価値を知らない。  現状に甘え、何も生まない。  偉そうにしてもすべて作り物だ」  しかし、誰ひとりとして若者は  聞こうとはしなかった「くだらね」  吐き捨てて皆出ていった、項垂れ  まるで意味をなさなかった泡の言葉  ふと、若い女が老人の前に座した 「お前はいかないのか」老人は嗤う  女は黙ったまま

詩歌:河口へ

 蛇口から落ちる水に手を浸した  顔を洗い、口を漱ぎ、頭を空にする 「何時からだろう、わたしたちは  身の丈以上を求めた」エゴみたいだ  くらべるだけのこころの醜さ「背伸びは嫌」  嘲笑や非難でたがいを遠のけて  正義を振りかざすことが知性なのか、相手を尊重せず  罵倒ばかりが並ぶ社会の手のひらには  あなたは掬われていますか? 余計な一言をはき  自己弁護と雄弁なナルシシズム、語り継ぐ  その生き方を幼子に誇れるのか?「わたしは嫌」  美しく、しずかな眼で、人の子となり

押韻する現代詩を書くことは不可能ではない

 こんばんは。Sagishiです。

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