小説のメイキングって何だよ? ~手さぐってやってみた~

◆はじめに

 去年の10月ごろ、Twitter上で3人ぐらいの方から「メイキングが見たい」というリクエストを頂きました。
 しかしメイキング……。よく絵を描く方がやってらっしゃいますけど、小説ジャンルにおけるそれはどのように開陳すればいいのか、皆目見当がつきません。
 どうしたものかと思いつつ、ここまで引っ張ってしまいました。とりあえず、手さぐりでやって行こうと思います。

 現在私は「小説家になろう」などで長編小説を公開しています。
 その他、毎日「即興小説トレーニング」というサイトを利用し15分で小説を書くことを続けており、Twitter上ではどうもそっちの人だという認識が強いように思います。
 ですので、「長編の場合」と「即興小説15分の場合」の2パターンのメイキングを説明できればな、と思います。


◆長編小説の場合

 世の中には、「100万字以上が長編」などという方もいらっしゃるようなので初めにことわっておくと、この記事での「長編小説」とは、「8万~10万字程度の新人賞へ投稿するのに適したサイズの小説」を指します。

 まず、小説を書くためのアイデアを探します。
 これまで書いたものだと、「仲の悪い魔法少女グループの話」とか「異世界テンプレ物の序盤に登場する噛ませ犬にスポットを当てた話」とか、ざっくりしたアイデアから膨らましていきました。
 決まったアイデア創出法があるかと言えば、そういうわけではなく、ひょんなことから書くものが決まったりします。

 アイデアを思いついたら、次は着地点を決めます。
 小説を書き出す場合、最も重要なのが着地点だと私は考えています。着地点をブラさずにまとめ、書ききることが何よりも重要だと思っています。
 現在連載している『冒険者ギルドの受付でチート持ち主人公の噛ませ犬になった男の一生(以下『チーかま』)』ならば、「噛ませ犬が負け続けるが、最終的に勇者に勝つ」という着地点を用意しました。
 次いで、開始点を決めます。
 『チーかま』は、所謂「異世界テンプレ」に対するアンチ創作の側面があるのですが、それに倣うと「最初に噛ませ犬にされるシーン」から始めるのが最良ではないか、と考えられます。
 着地点が「噛ませ犬が負け続けるが、最終的に勇者に勝つ」なので、最初の敗北から始める、という意味合いもあります。

 開始点と着地点が決まれば、次は書きたい物語の骨子をまとめます。
 大体100字前後で言い表せるぐらいの、短い文章にします。上で「骨子」と書きましたが、この文章が文字通り骨組になります。
 これを「100文字プロット」と呼ぶそうです。

 以下に、『チーかま』執筆開始時の「100文字プロット」を公開します。第一章にあたる「アドイック編」のプロットです。

 落ち目の戦の女神に召喚され、伝説の力を与えられた現代日本の少年が、召喚先の世界で舐めた態度を取ったので、主人公である現地の戦士が、かつて異世界召喚された勇者の末裔である仲間と協力してそれを退治する話。

 これでおよそ101文字です。これぐらい端的にまとめられない場合は、まだ煮詰めきれていないということです。「書きたいことは何か」をもう一度検討してください。

 「100文字プロット」ができあがったら、それを元に今度は3000字程度のプロットを書き起こします。
 書き起こします、と言いましたが、私はこれはやらないことも多いです。現に『チーかま』ではやっていません。ただ、新人賞に出すような原稿ならばやった方がいいです。現状のプロットではどういう部分が足りないかが明確になるからです。
 この「100文字プロット」や、3000字程度のプロットを立てるというやり方は、野島けんじ氏『ライトノベルの書き方 キャラクターを立てるための設定・シーン・ストーリーの秘訣(ソフトバンククリエイティブ、2011)』という解説書で紹介されていたものだったりします。この本は、参考になるところは本当に参考になるのでオススメです。お色気シーンの入れ方まで指南されていたのには辟易しましたが。

 その後は、更に詳しいプロットを作り込んでいきます。
 私はこれを「詳細プロット」と呼んでいます。
 登場人物の名前なんかを本決めするのもこの辺りです。私は登場人物の名前を決めるのが苦手だし、そもそもキャラクターを作るのも苦手なのでここまで先延ばしするのですが、そういうのがお好きな方は、もっと早いタイミングで決めてもいいと思います。
 「詳細プロット」は箇条書きで書いています。どうせ誰にも見せやしないのですから、「美文を書こう」「わかりやすい文章を書こう」という意識は捨てて、とにかく最後まで書ききることを目標に進めていきます。
 登場人物のセリフも書き込んでいきます。また、地の文を意識して「ここではこの人物はこういう感情や考えを持っていて~」というようなところも書き加えます。
 私の場合、10万字前後の小説で大体3か月ぐらいかかります。遅筆の私でそれぐらいなので、集中力の高い方ならば1か月もかからないでしょう。
 最後まで書き終わったら頭から読み直し、最初の「100文字プロット」から大きなブレがないかを確かめます。
 書いている内に書きたいことが変わっていて、それが明確に説明できるなら「詳細プロット」の方を採用します。とは言え体感ですが、最初のプロットに従って修正した方がいいものができる気がします。

 ここまでできたら、「詳細プロット」を頼りに本文を書いていきます。
 大抵の場合、「詳細プロット」のテキストファイルをコピーして「本編」などとリネームし、箇条書きを小説の形に書き直すようなやり方で執筆をします。セリフはそのままの場合もありますし、修正したり地の文に変えたりすることもあります。
 大体この執筆も2~3か月くらいかかります。なので、私は長編の執筆に半年は費やしてしまう計算です。もっとペースを上げたいんですけどね……。

 以下に、今回例に挙げた『チーかま』のURLを貼っておきます。参考になれば幸いです。

 『冒険者ギルドの受付でチート持ち主人公の噛ませ犬にされた男の一生』


◆即興小説トレーニング15分の場合

 ある意味お待ちかねの「即興小説」編です。
 「即興小説トレーニング」についての解説は省きます。私が下手に説明するより、やってみた方が早いです。

 「即興小説トレーニング」

 とりあえず15分しかないので、時間との勝負になります。

 まず、本文を入力するテキストフォーム上部の「お題」を見、発想を膨らませます。
 「書けそう」と思ったアイデアが出たら、次はどういうオチをつけるのかを考えます。
 ここまでを残り時間が11分になる前に決めます。残り12分までにできれば上出来、まだ13分あるなら何という幸運でしょう。

 もし残り時間が11分となってもオチが決まらなかったら、書き出しを探します。この時間帯になってしまったら、とにかく書き始めることが大切になります。
 10分を切っても書き出しが見つからなかったら、もういいです。諦めます。気が向くまま、筆の向くままに書きはじめます。
 私は毎日「即興小説トレーニング」を続け、15分だけで1800本以上を書いてきましたが、最初の5分でつまづくとリカバリーが難しいです。

 中盤はとにかく進めていきます。
 一人称で筆を進めやすくしたり、会話文で分量を稼いだり、あらかじめ作っていたキャラクターを登場させたりと、色々とテクニックはありますが、そこは重要ではないので割愛します。

 残り5分を切ったら終盤戦突入です。
 あらかじめオチを決めてある場合は、そこに向かって書いていきます。
 オチが決まっていなかった場合も、書き進める中である程度の着地点は見えていることもあるので、そっちに向かいます。
 しかし、この時点でオチがまったく見えない場合もあります。オチを決めていない場合は、そっちの方が多いかもしれません。
 その際は、序盤から中盤まで書いてきた中で楽しかった要素を引っ張ってきます。会話が楽しかったのか、突拍子もないアイテムや人物が楽しいのか、ともかくその要素をオチに持って来れるように尽力します。

 1分を切った最終盤は、減っていく秒数との戦いになります。
 30秒までは意外と余裕があります。残り15秒を切っても諦めずにタイピングすれば、オチに辿り着けることもあります。
 もちろん、辿り着けないことも多いです。オチの一文が誤変換だらけだったり、そもそも変換されていなかったり、最後まで書ききれていなかったり、そういうことはよくあります。
 そういう終わり方をしても、私は「完成した」としています。この15分という枠組みの中で、結果はどうあれやりきったのだから「完成品」として出さなくてはならないと思っているからです。
 もし、そうでなければ全部「未完成」としたいところです。それはあまりにシニカルすぎるし、カッコつけっぽいので「完成した」としている面もあります。

 以下に私が書いた即興小説が読めるURLを貼っておきます。
 http://sokkyo-shosetsu.com/author.php?id=251196504

◆おわりに

 結論としては、以下のようになります。

 ・長編のライトノベルを書く時は、野島けんじ氏の本が役に立つ。
 ・15分で小説を書くのは無茶。舐めてる。

 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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