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「小説家になろう」公式企画 #夏のホラー と私

 noteの民の皆さんは、投稿サイト「小説家になろう(以下、『なろう』)」と言えば何を思い浮かべるでしょうか。

 恐らく、「異世界転生」とか「チート」とか「ハーレム」でしょう。トレンドに詳しい方ならば「追放された俺が……」なんかを挙げるかもしれません。

 そのイメージ、大正解です。

 大正解ですが、今回はその話ではなくて、あまり一般に知られていない面について書きます。

 「なろう」では、年に2回、「公式企画」と銘打ったキャンペーンが開かれます。

 冬に開催されるのが「冬の童話祭」、そして夏が「夏のホラー」です。

 これは一か月程度の開催期間中に、お題に沿った「童話」や「ホラー」ジャンルの小説を「冬の童話祭」や「夏のホラー」といったタグをつけて投稿する、というものです。

 他のコンテストのように特に出版社が噛んでいるわけではなく、「なろう」を運営するヒナ・プロジェクトが主体で、調べると2009年から開催されているようです。

 一位の作品がデビューできる、ということもない、言ってしまえばゆるい企画です。

 私はホラー好きなので、「なろう」に投稿を始めた2015年から毎回参加しています。

 この記事では、2020年までの5年間に私が投稿した作品を紹介しつつ、「夏のホラー」企画そのものも振り返っていこうと思います。

 お時間ありましたら、小説の方も読んでいただければ幸いです。


『シミの形』(2015)

 https://ncode.syosetu.com/n7320cu/
 かつて「わたし」が通っていた中学校の二年二組の教室には、奇妙な「シミ」についての伝説があった。
 黒板の上にあるシミが、ある形に見えたものはクラスから「いなくなって」しまうという。
 表面上この伝説を気にしない風にしながらも怯えていた「わたし」たちは、林間学校でそのシミが互いにどんな形に見えたかを確認し合う。
 すると、「わたし」だけ違う形に見えていたことが分かってしまい……。

 記念すべき初参加作品。この年のテーマは「学校」でした。

 既にこの時点で学生時代が遠くなっていた私は、かなりネタに窮しました。確か、最初はトイレの幽霊とか、そんな話を考えていたと思います。

 教室にあるシミが云々、というのは映画『学校の怪談』の冒頭であった「花子の手形」が元ネタですね。天井に手形のシミがついている、というようなエピソードです。

 感想でも指摘されている通り、オチが悔やまれます。

 ただ、この話から私が「夏のホラー」に投稿する話の、ある種のパターンができたように思います。そういう意味では大事な作品です。


『おみやげ』(2016)

 https://ncode.syosetu.com/n2695dl/
 フミコの父は、彼女が18歳の時に突然失踪した。
 それ以来、母との関係が悪くなったフミコは、逃げるように家を出てしまっていた。
 失踪から7年経ち、フミコの父が法律的に「死んだ」ことになった年、彼女は母に呼び出される。
 そこで告げられる、父の失踪と奇妙な「六角柱の箱」の関係とは……。

 この年のテーマは「六箱怪談」……、え? 何それは?

 実はこの年、このようなサイトが用意されておりました。

 リンク先に行くのが億劫な人のためにざっくり説明すると、以下のような感じです。

 「公式が用意した『裏野ハイツ』という古いアパートを舞台にした小説を書いてもいいし、書かなくてもいい」

 正直、「サムい」と思ったのでこの設定は使わず、終了後に行われたアンケートにも「こういうのはやめて、シンプルなテーマにしてほしい」と書きました。

 自作については、「六箱怪談」ということで「六角柱の箱」を出しました。また、アパートに対抗する形で一軒家を舞台にしています。

 作中のお店エピソードは、私の父の体験談が元になっています。まあ、私の父は失踪していないのですが……。


『エッちゃん』(2017)

 https://ncode.syosetu.com/n1580ed/
 畑野アキコには、「エッちゃん」という忘れがたい友人がいる。
 幼い記憶の中に置き去りにしたはずのその名を娘が口にし、アキコは激しく動揺する。
 何故なら、「エッちゃん」は……。

 テーマは「悪夢の遊園地へようこそ!」。はしゃいじゃって、まあ……。

 前年に引き続き、このようなサイトが用意されておりました。

 うわぁい、こうしきさまの、すばらしくせんすあふれるせっていは、まぶしすぎて、わたしごときにはあつかえないや!

 ということで、今回は設定をガン無視、アンケートにも「二度とこんなことすんな!」と書きました。

 それはともかくとして、自作の話。あらすじが短いですが、何を言ってもネタバレなのでこれでご勘弁を。

 この年のネタ出しはかなり苦戦したのですが、何だかよく分からない内に思いつき、その「思いつき」がささやくまま、自動書記みたいな感じで書き上げてしまいました。そういう過程も含めてのホラー、という感じですね。詳しくは当時、あとがきに書きました。

 幸いにも好評を得たのですが、この年以降、「エッちゃん」を超えられない呪縛につきまとわれることに……。

 

『新しい家』(2018)

 https://ncode.syosetu.com/n8604ew/
 小学五年生の吉川結衣は、それまで暮らしていたテラスハウスから、両親と共に一軒家へ引っ越してくる。
 新興住宅地に建った新築のマイホームにうきうきする結衣であったが、家の中にはどうにもおかしな雰囲気が漂っている。
 夢に現れた沼、トイレに溢れた藻の混じった水、行方不明の少年……。
 明るいこの「新しい家」は、一体どんな濁った旧い闇を抱えているというのか。

 この年のテーマは「和ホラーVS洋ホラー」。

 私が散々アンケートでボコボコに叩いたおかげか(なわけない)、比較的マシなテーマになりましたね。「誰が考えてんだか」な謎の設定も推してこなくなりましたし。

 自作ですが、この年に人生初の「引っ越し」を経験したため、こんな内容になりました。

 テーマについては和洋折衷という形で盛り込んだつもりです。

 「洋」はH.P.ラブクラフト御大の作品を意識して、得体の知れないものを出し、「和」についてはJホラーっぽい演出を入れてみました。

 個人的には、結衣ちゃんのリアルキッズ感が気に入っています。

 また、「マグネット!!」という投稿サイトに、この作品の裏ヴァージョンも投稿しました。

『旧い家』(2018)

 https://www.magnet-novels.com/novels/54781/episodes/63501
 冨田陽菜の家は、周辺に多くの土地を持つ地主の家系で、彼女はその本家筋にあたる。
 ある時、叔父・政邦が亡くなり、陽菜の家で葬儀がいとなまれることになった。
 若くして亡くなった叔父の死に様は異様なもので、それ故か棺を「決して開けてはならない」と申し渡される。
 通夜を終えた後、陽菜の父親らは寝ずの番をすることになるが……。

 こちらについては、リアル友人にボコボコに叩かれたこともあって、「なろう」に投稿し直す機会を失い、宙ぶらりんの状態です。

 確かに地味だし、もう少し怖い話にできるよなあ……。でも、あそこまで言うことないよなあ……。好みの話をさも一般論のようにされてもなぁ……、と今もダメージを受け続けております。


『廃病院の夢』(2019)

 https://ncode.syosetu.com/n4649fr/
 小原むつきは、ここのところ毎晩のように見る悪夢に悩んでいた。
 知らない廃病院の中で、ボロボロの服を着て車いすを押す看護婦に追いかけられる夢だ。
 ふとしたことで知り合った大学の同期・水本に相談すると、その夢に出てくる場所は大学の裏にある廃病院ではないか、と聞かされる。
 夢の原因を探るため、むつきは水本と共にその病院へと向かうが……。

 この年のテーマは「病院」。企画のリニューアルが行われ、シンプルなテーマが戻ってきました。

 それに時間がかかったのか、この年は開催の告知が例年より遅かった記憶があります。

 まあ、それとは関係なく、この年は私の投稿もかなり遅かったです。7月11日から開催していたのに、一か月も後になってしまいました。

 当時は精神状態が悪く、また私にとっては病院がそもそも縁遠い場所である、というのが時間がかかった主たる原因です。

 困りに困って、妙にライトノベルっぽいものを出すことになってしまいました。開き直って「今年は百合小説です」とか言っていました。

 「車いすを押しながら追いかけてくる看護婦の霊」という典型的な怪談を利用しつつ、ちょっとひねりを加えようとしたら、勢い余ってねじ切ってしまった感じがします。「夢を見てどうこう」も、前年の『新しい家』とかぶってますしね。

 フォロワーさんには好評だったのがせめてもの救いです。


『かみべとり』(2020)

 https://ncode.syosetu.com/n2093gk/
 上辺鳥(かみべとり)駅は、どこの地方都市にもあるような平凡な駅である。6年前にリニューアル工事が行われ、駅舎は清潔で新しい。
 しかし、その工事の後から奇妙な現象が頻発するようになった。
 WEB編集者の野田ナナエは、フリーライターの芦原から、上辺鳥駅にまつわる「奇妙な現象」について取材した原稿を預かるが……。

 テーマは「駅」。引き続きシンプル。素晴らしい、もうどこにも行くな。

 かなり身近なテーマでしたが、どうにも去年からの不調を引きずっており、なかなか思うように書けませんでした。

 それでも、「取材記事の態で書く」というやり方を思いついてからは、筆の走りは早かったように思います。出来はまあまあかな、と自賛。

 noteの民の皆さんは、「こんな適当な仕事の進め方をするWEBメディアなんてねぇよ!」と苛立たれることでしょう。先に謝っておきます。すいません、よく知らないんです。


 いかがでしたか?(お約束)

 企画に興味を持たれた方は、よければ参加してみてください。今(2020年8月11日)なら、まだ間に合いますし。

 投稿作品が増えて企画が盛り上がって、「なろう」の「異世界チート」でない面がもっと知られればいいのに、と私は願っております。


今回のまとめ
・「小説家になろう」はユーザーの書く「異世界」「チート」「追放」だけじゃなく、色々と公式が企画を行っている。
・Topの神社の画像は特に関係はない。
・沢山リンク貼ったけど、『エッちゃん』だけ読んだらいいよ。

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