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志望動機を忘れないで!【新入生に伝えたいこと】

神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科(SHI)という大学院の新入生歓迎会にて10分間ほどプレゼンの機会をいただきました。そこでお話しした「新入生へのメッセージ」をご紹介します。

神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科(SHI)
ヘルスイノベーション研究科(SHI)は「未病」を研究対象とし、世界に先駆けて学問体系化を目指す、これまでにない研究・教育機関です。

神奈川県立保健福祉大学大学院

自己紹介

ヘルスケアスタートアップでごりごり事業開発していた人間です。2022年3月に株式会社パパゲーノというメンタルヘルス×アートNFT事業を展開する会社を創業しました。

2021年4月にSHIという神奈川県立の大学院に入学し、今は2年生です。修士論文ではNetflixなどの動画配信サービスでの映画、ドラマの自殺描写の描き方と視聴者のメンタルヘルスや自殺潜在能力(死に対する恐れのなさ)の関係性について研究しようとしています。

ちなみに成績はあまり良くないです。笑
Dがもっとついてもおかしくなかったのに、心優しい先生方に救済いただいてCをもらっています。

(修士論文の倫理審査もまだ通せてないので頑張らないとやばい・・・!)

新入生に伝えたいこと

大学や大学院に入学したばかりの新入生に伝えたいことはとてもシンプルです。「志望動機を忘れない」ということ。そして「志に従って生きる」ということです。

僕が大学院(SHI)に入学した経緯

僕が大学院に入った経緯をご紹介します。冗長な文章ですが、要するに「自殺予防のために何をするのが正解かわからず、大学院で学べば答えがわかるんじゃないか」という安直な発想でSHIに入学しました。

そんな甘い考えで大学院に期待して時間を無駄にしないでね、ということを伝えたいです。

日本の産業保健を変えることに決める

学生時代の経験からメンタルヘルスや過労自殺について何か貢献したい思いがあって、『過労死ゼロの社会を』や同じく川人さんの著書『過労自殺』を読み、日本の産業保健を何とかすることに決めました。

ストレス要因の多くが職場にあり、長時間労働やハラスメントが起こらない仕組みを社会実装できれば、過労自殺は減るんじゃないかと考えていました。

そこから産業保健にのめり込みます。

産業医の名義貸し問題を訴えるマーケティング戦略を業界に先駆けて打ち出してみたり、当時の上司を筆頭に『企業にはびこる名ばかり産業医』という書籍を作ったり。

シリーズBの30名規模のタイミングで株式会社iCAREに入って、産業保健の常識を変えるために「Carely」というクラウドサービスを作ってみたり。

ひたすらnote書いたり、学会でも発表させてもらったり。

産業保健以外で自殺予防に貢献する方法を考え始める

5年くらい産業保健をやり切ったタイミングで、「産業保健に逃げずにもうちょっと自殺予防やメンタルヘルスをど真ん中でやりたい気持ち」が芽生えてきました。

産業保健って実は広大な「公衆衛生」という分野の1つでしかないんですね。産業保健という領域の中にい続けると、どんどん「井の中の蛙」になっていくんじゃないかとも思っていました。

そこで改めて「産業保健以外の切り口で自殺予防に貢献するには?」というテーマを自分に課してひたすら情報収集と思考をしてみました。

末木先生の『自殺学入門』が初学者にもわかりやすい内容で、のめり込んで熟読しました。でも、何が正解かわからないというのが結論。

自分の人生をもっとメンタルヘルスや自殺予防に寄せてピボットさせたいのに、どこに向けて走りだしたらいいのかわからない状況でした。

津野先生とSHIに出会う

人生迷子なタイミングで、厚労省が主催している過労死等対策シンポジウムでSHIの津野香奈美先生の講演を聴いて、「こんな切り口で産業保健とメンタルヘルスに向き合ってる人がいたのか!」と感動。すぐにその場で名刺交換して、自殺予防のために自分が何を成すべきか相談させてもらいました。

「大学院で、津野先生のもとで学べば、自殺予防のために自分が何を成すべきか、きっと正解がつかめるんじゃないか」

雲をつかむような感覚で自殺予防について考えていたので、SHIに入れば何か変わるんじゃないかと、変な期待を寄せていました。翌日TOEFLを申込んで英語証明書を作りすぐ願書提出。運よく合格してあっという間に入学。

入学してみたら、「良くわかんない疫学や統計を英語で学ぶ無理ゲー」の連続でびびりました。

ちなみにSHIに入学すると決めた理由はこちらのnoteに書いております。

実際に大学院に提出した志望動機(全文)

僕がSHIの願書に書いた「志望動機」は以下のような感じでした。
みんな立派な「志」を書いていると思います。じゃなきゃ合格しないはず。

志望動機の達成に向けて、小さくてもいいから真っ直ぐ行動を続けていくことが本当は1番正しい時間の使い方のはずです。

でも、御多分に洩れず、僕も入学して3ヶ月くらいした頃は授業を「こなす」ことに忙殺して「何を成すために大学院に入学したのか」を忘れていました。めっちゃ忙しくて忘れます。だから志望動機はプリントして机にでも貼っておくのがおすすめです。定期的に思い出して、今日の行動を変えられるので。

神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科への入学を志望する理由は、より専門的に産業保健・自殺予防の知見を深めて、産官学の垣根を超えて自殺・過労自殺という社会課題を解決へ導くリーダーとなるために挑戦すべき機会だと考えているためです。具体的には以下の3点で魅力を感じております。
【1】津野香奈美先生が講師にいること
1点目が私の研究したい過労自殺に関して、専門的・多角的に研究できる環境だと考えているためです。職場におけるいじめ、長時間労働、パワハラなど、日本の産業保健分野でメンタルヘルス不調や過労自殺に関わる研究をされている津野香奈美先生がいる貴学でぜひ公衆衛生を学び研究テーマを掘り下げていきたいです。
【2】神奈川県との連携ができること
2点目が神奈川県との連携がしやすい点です。課題先進国である日本においてME-BYOのコンセプトを世界に先駆けて発信し、マイME-BYOカルテの開発やマイナポータルとの連携をいち早く実現させるなど予防領域で先進的な神奈川県と連携し、神奈川県民としてその挑戦の一翼を担いたいと考えております。
【3】専門領域の異なる仲間と学べること
3点目が異なる領域の仲間に出会い学び合える点です。社会課題の解決には高い専門性、領域横断性が求められます。自殺予防の領域については、因果関係の特定が難しく、倫理的な問題もあるため閉鎖的・保守的で、イノベーションの機会に溢れた領域でもあると言えます。様々な専門領域の異なる仲間に出会い、問題の本質を見極める力と、解決へ導くための技術や政策、ビジネスなどの具体的アイデアを考える視点を多分に得たいと考えております。
以上の理由で私は貴学を志願いたします。

田中がSHIに提出した願書より

「志望動機の達成度合い」が大学の価値

大した事を成していない僕が語るのもおこがましい話ですが、僕は教育機関の価値って「学生の志望動機の達成度合い」で測るべきだと思っています。偏差値でもなければ、論文の発表数でもないし、会計規模とかどうでもいいです。

(志望動機が達成されたのかの効果検証をしている大学や大学院はほとんどないけども。大学も企業も、志望動機聞いて選考するなら、その志望動機の達成度合いを計測しPDCAを回してもいいものだと思う。)

志望動機を忘れて、なんとなく授業をこなして、なんとなく卒論書いて、卒業という肩書きを手に入れることにあんまり価値は認められない時代になってると思います。

一番大切なのは自分自身の「Why」に向けて行動を起こし、大学や大学院のリソースをうまく活用すること。能動的に、自分の志望動機に向けて、「大学の予算使えないかな」「大学のネットワーク使えないかな」と企みながら学生生活に臨むことです。

そして、志を実現するための「答え」は大学の中にはなくて、むしろ大学の外の実社会にあることの方が多いので、自分の志に従って「一次情報」をとにかく取りに行くのがいいだろうと思います。僕みたいに大学院の中に「答え」を求めると、モラトリアムの期間を無駄に延長するだけになりかねないので、気になる人や企業にとことんアポをとって、現場に足を運んで、最前線で戦ってる人たちとたくさん考えて、志望動機を実現させていきましょう。

社会変革は「技術」→「ビジネス」→「法律」の順番で起こります。そして最新の技術やビジネスの動向は、大学の中ではなく実社会にあります。(もちろん大学の中も社会の一部ではあるので、少しはあるけども)

大学院の授業や大学院の中の世界で得られる機会を受動的に「待つ」姿勢だと、きっと志望動機は達成できません。大学の外に出て、自分の志に従って「一次情報」を詳しい人や挑戦してる人に聴いたり、現場に出向いて取りに行くことで初めて見えてくるものです。

「志望動機を忘れなで!」

ということで、これから大学や大学院の修士・博士課程が始まる学生に向けて、「志望動機を忘れないで!」というお話でした。

僕はまだまだスタートラインに立ったばかりですが、SHIが志望動機の達成度合いのちゃくちゃ高い革命軍になる日を夢見て、がんばろうと思います。

カスタマーサクセスの思想を教育業界に持ち込んだら自ずと「志望動機を達成させる」方向に行くと思うんだよな〜。そんな大学あったら楽しそう。


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