0925外国の香りヘッダー

父、さぞや楽しかったんだろうよ

先の記事はまだ続きますが、ちょっと別の記事を。
旅行記の続きです。


ホテルのベッドで子供達に挟まれながら昼寝してる時、今までのどんな海外旅行とも全然違う幸せ感があって。こんなに楽しい海外旅行って初めてやなぁと思いました。そしたら、父の気持ちが少し分かったような気がしました。

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うちの父は私が小さいころ、とある家電メーカーで貿易部の部長を任されていて。小さい会社だったからきっと裁量権もたくさんあって、それはそれはイキイキと仕事をしていたんです。
でも、1年の半分くらいは日本に居なくて、1回出張に出るといつも1ヶ月くらいは帰ってこなかったんですよね。
だから父が大きなスーツケース2つを持って帰ってくる日は、私が最高潮に嬉しい日で。

0925お土産あるよ

そのスーツケースには、くっさい洗濯物の横に、両手に有り余るお土産が入れてあって。そのどれも別に欲しくて堪らなかったものじゃないし、何をもらったのかほぼ記憶に残ってないけど。
だけど父が嬉しそうに私に渡す顔は覚えててね。そしてスーツケースから、海外の匂いが部屋中に満ちて、その匂いが大好きだったんですよ。

0925外国の香り

そんな仕事のペースだった父は、近場で軽めの出張の時はよく私を連れて行きました。出張だけでなく、我が家の家族旅行といえば海外旅行が定番で。中でもまだ幼くて時間の都合のつきやすい私を、特別よく海外出張に連れて行きました。ハワイ、シンガポール、マレーシア、アメリカの西海岸そして東海岸、カナダ、香港、グアム、台湾は何度行ったかもう分からないなー、覚えてないけど他にもきっとどこか。

父の出張に着いて行く時は、ビジネスクラス以上がほとんどで(当時バブルだったんですねぇ)、たまにアップグレードされてファーストクラスに乗ったり。
そして旅先ではハイクラスのホテルに泊まって、夕飯は父のビジネスの相手から接待を受けて。子供だった私は、言葉の通じない大人にチヤホヤされて。
今思い出すとかなりリッチな旅だったんだなぁと思うけど、私は手を引かれて連れていかれるだけだったから、その待遇に価値もありがたみも感じてはなかったんですよ。むしろ逆に、退屈だったなぁという印象が残っています。
飛行機に乗ったらいつも、父がCAさんにお願いして、コックピットの見学をさせてもらってたんなぁ(きっと今はテロ対策で、そんなこと出来ないと思うけど)。ボタンだらけの部屋で、パイロットさんに「このボタンは〇〇で」とか説明を受けて。
父はよく、自分のパスポートを開きながら「これはどこどこのハンコで…」と私に見せました。そして私のハンコだらけのパスポートを見て「こんなに小さいのに、やっちゃんのパスポートはハンコだらけやなぁ」ってよく言ってました。
旅慣れしてて英語も堪能な父。いつも家に居ないけど、海外に行く時は一緒に居れるから嬉しかった。家では大して明るくないけど、外で仕事してる父はとても雄弁で声が大きくて、私が分からない言語で話す大人と対等に話していて。海外のどのシーンでも、父は誇らしそうで、頼りになる存在でした。

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50代半ばで体調を崩し、貿易の仕事から離れた父。
父は私によく、「やっちゃんは、ほんまにいろんなところに連れて行ったなぁ」って言いました。それに「子供が小さい時に海外連れてっても覚えてないしな」ともよく言ってた父。
それを聞くたびに、「頼んでないし」って思いました。生きにくさ真っ只中の私は(笑)、その時の誇らしげな父の顔と、その言葉がうっとうしくて仕方なかったんですよね。
パスポートにハンコがどれだけ増えても、私の中では「あの旅行楽しかったなぁ!」という思いが増えるわけではなくて。海外に何度も連れてってもらうなんて、無くても良かった。それなら普通に生駒山上遊園地に連れてって欲しかった。動物園に連れてって欲しかった。毎晩家族で楽しく食卓を囲みたかった。母をなんとかして欲しかった。あんなに家を空けないで、もっと穏やかで安心できる家庭にするためにでできることあったんじゃないの?って、そんな父への不満が心の中いっぱいになりました。

3年前に亡くなった父は、大病を重ねて身体がボロボロになって近所を歩くのもままならなかったけど、それでも孫も連れて家族でハワイに行くことを夢見ていました。
父が海外を相手に仕事をして、家族を海外に連れて行ける自分を誇らしく感じていたことは理解できていたけど、父の誇りと私の受け取ったものにはずっと距離がありました。

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今回、初めて子供達を海外に行って、ホテルのベットでゴロゴロしてる時、なんだか今までの海外旅行では味わったことのない幸せが込み上げてきました。
ただベッドでゴロゴロしてるだけなのに。なんだったら日本でもいいやん!っていうシチュエーションなんですけど。
「あーーーーー!タイに来て良かったぁぁぁ」って叫んでました。

今回はたった3日の家族旅行だったけど、子供達と異文化の中に居る時間のどれもが、今までに味わったことないくらい新鮮で楽しくて豊かでした。
拙い英語で店員さんと話すのも、次から次へ車とバイクが走る道を渡る緊張の一瞬も、価格の割にイマイチじゃない?なシーフード料理も、風吹き抜けるトゥクトゥクに乗る時間も、部屋で昼寝するのも、辛いかどうか確かめながらお料理を食べるのも、ホテルのプール入るのも、朝のビュッフェも、熱出してヘロヘロのコボちゃんを看病するのも、そして空港で抱っこしながら歩くのも、深夜便でお疲れMAXでも、どの時間も最高やった。

父は、自分が連れて行ったいろんな国のこと、その体験を覚えてて欲しかったみたいやけど、実際父と行ったいろんな国も断片的には覚えてて、だけど私は覚えていることが何の意味があるのか解らなかった。
でも、今回それがはじめて意味を持ったような気がしました。海外旅行に連れて行かれる子供の立場と、連れて行く大人の立場両方経験できて分かったことがあったというか。

新鮮な体験をして感動していたのは、大人のワタシ!
子供達がどう思って何が新鮮かどうかなんて、どーっっでもいいわ!
コボちゃんは体調崩して辛そうだったけど、ピノ子はプールで泳ぎ倒して楽しんでた。飛行機も機内食食べれて嬉しそうだった。それはいつか忘れてしまうかもしれないし、思う存分忘れちまって、そして自分で行きたい時に行けばいいね。
だって大人になって海外に行けるって、こんなにも新鮮で不安で最高の体験なんやもん。付き合ってくれた子供たち、ありがとう!ママはおかげで思っ切り嬉しい時間を過ごしたゼ。


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そしてもしかしたら、父も、私と(家族と)海外で過ごすどの時間に、こんな幸せを感じていたんじゃないかな?って思いました。
海外に慣れてた父だけど、子供と行くと思いがけない新鮮さがあって、刺激があって、子供をケアしながら過ごす豊かさがあって。

だから私と海外旅行するのって、めっちゃ嬉しくて楽しかったんかもなぁ。
そんな楽しい体験を何回も何回もできてさ。そう考えたらあの人、なんちゅーいい人生だったんだろうなって。

そこまで思ったら気がついたんです。
私、居るだけでめちゃくちゃ父に幸せ与えてる存在やったんやん!って。
続きます。

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