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五月の絵

隣のベランダで鯉のぼりが皐月の風に泳いでる。

我が家では今頃になると一枚の絵をかけます。それは熊谷守り一の「あやめ」の絵です。シルクスクリーンプリントであるが、今から二十年以上前になるだろうか、季節も丁度今頃、夫が気に入って買い求めたものである。
このプリントを見て、自分の描いたものと変わらないと熊谷守一は右下にサインをしてくれたと画廊で説明があった。
濃い黄土色のバックに紫のあやめ、花弁の中心はしろ、それに蕾が1つ描かれている。花にはそれぞれに季節があり、なんとも言えないこの「あやめ」の絵は、この季節、我が家を彩っている。夏の光に色褪せしないかと、この一月だけ飾っているので、家族だけが楽しんでいる。

豊島区の閑静な住宅地にある熊谷守一美術館で、ゆっくりとみる彼の絵は、大きな美術館で見るのと違い親しみがある。
晩年ちいさな生き物や野の草を愛した仙人の様な風貌の熊谷守一がふっと現れるような気がする。
三階まである展示室への手摺りに蔓草がまきつけられているのが、温かみがあって嬉しい。

まい年画廊から頂いていた年賀状は彼の描いた干支の絵であるので、年頭に額に入れて飾っている。

#初夏 #熊谷守一 #一枚の絵