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ドイツのコロナ対策暮らし

ドイツが新型コロナウィルスの対策として一斉休校の措置を始めてから三週間が経ちます。ヨーロッパの感染者増加を心配して日本の友人から連絡をもらったりします。ドイツは感染者数が多い割には比較的落ち着いているように感じます。心配してくれている友人に安心してもらうため、また他の方にも参考にしていただけることもあるかもしれないと思い、デュッセルドルフ在住の一市民から見えるドイツのコロナ対策の状況や感じたことをまとめてみました。


三月中旬、ドイツ一斉休校。大規模なコロナ対策開始。


ヨーロッパでは2月後半からイタリアで急激に感染が拡大し、他のヨーロッパ諸国にも感染が広がりました。ドイツでも徐々に大規模のイベント禁止や国境コントロールなどの措置を取ってきましたが、感染者数が7000人を超えたあたりの3月16日から、4月19日までイースター休暇につなげる形で大規模なコロナウィルス対策として全国一斉休校に入りました。日本と違って学校だけでなく、保育園も休みです。病院、薬局やスーパーを除くレストランやジム、映画館、バーなどの屋内施設が封鎖。屋外であっても子供の遊び場など人の集中する設備は封鎖されました。

普段私は娘を保育所に預けて語学学校に通っていたのですが、どちらも同時にお休みになり、毎日自宅で娘と過ごすことになりました。
夫の会社にもホームオフィス推奨指令が出て、平日は毎日家で仕事をすることになりました。保育園無し、旅行も無しで家に五週間!?とクラクラしましたが、もっと厳しいルールが待ち受けていました。


コンタクト禁止令で家族以外の誰とも会わない生活に。

一斉休校が始まってから一週間後の日曜日、さらなる厳しい対策ルールとしてKontaktverbot(コンタクト禁止)のルールが施行されました。一般的な外出禁止ではなく、ドイツでは人と人との物理的接触を厳しく取り締まるルールです。同居人以外の人との交流は絶対に必要最低限とすること、距離を1.5〜2m取ることに加えて、公共の場で3名以上で集うことを禁止、公的・私的空間を問わずグループでのパーティーが禁止になりました。違反者には最低200€の罰金または懲役です。

正直、これには驚きました。同じマンションに住む友人家族と遊ぶことさえも事実上禁じられてしまったのです。この日から、純粋に家族としか会わない隔離生活になりました。もちろん週一回食料の買い出しには行きますし、宅配の人も来てはくれますが。。私自身2歳児を抱えて家族以外とノンコンタクトの生活をあと4週間も続けられるのかと不安に思いましたし、自分よりも厳しい状況の人は沢山いるはずなので、本当に皆が耐えられるルールなのだろうかと疑問に思いました。

しかしドイツでのルールは絶対です。決まったからには守られます。近所の友人達とも「おさまったらすぐに会おうね!」と会う約束をキャンセルし、それぞれ家にこもっていきました。街では警察や治安維持隊が違反者取り締まりを始めました。きっと自宅で夕食会でもしようものなら近所の人から通報されてしまいます。

人々の行動は変化し、道端では知り合い同士であっても距離を置いて会話をするようになりました。医療従事者や物理的なサービス業以外はほとんどの会社が在宅勤務になっていて、共働きの子持ち家族は、午前中がママが仕事、午後はパパが仕事と、時間帯を分けて子供の世話をしています。医療従事者などの理由でどうしても親が面倒を見ることのできない子供は特別保育所が受け入れています。スーパーでは入れる人数が制限されており、入口前の行列では距離を取って並んでいます。マスクや手袋を配って入店させる店もあるようです。宅配業者も荷物の手渡しを避け、サインレスの場合は受取人の在宅を確認した上でドアの前に置いて帰るようになりました。


「人とコンタクトしないなら外でトレーニングや散歩をしてもいい」という救い。

一方でドイツでは、「一人や同居家族との散歩やトレーニングは可能」とされていて、窓の外では犬や子供と散歩をしたり、走ったりする人の姿を見かけます。ちょうど一斉休校が始まった日から、ドイツの雨がちな寒い冬が一気に影を潜め、ポカポカ陽気の日が続いています。私も天気の良い日は娘と近所を散歩をしながら、通りすがりの人とほんの少し目線で挨拶し合うことで、元気をもらっています。この部分だけルールとして緩めているところは、良い意味でとてもドイツらしいと思います。ドイツに住む人々は社会的なルールを重んじつつ、個人の日課としてトレーニングや散歩を大事にする人が多いです。これができたのはドイツの住環境的が、マンションであっても低層で比較的ゆったり配置され、公園などのスペースが多くあることによって、外出が必ずしも人との接触を意味しないからかもしれませんが、コロナとの戦いが今後も長引くことが予想される中で、人のメンタルヘルスを保ちながら、感染防止のルールを形骸化させないためにはかなり重要な気がします。


3週目、止まらない感染者拡大にガッカリする日々。

休校措置から3週間、コンタクト禁止措置から2週間が経ちましたが、まだ感染者の拡大ペースに陰りが見えません。4月1日時点で、日々3〜4千人の新規感染者が出ていて、感染者は8万人を超えました。私は毎朝、「これほどまでの頑張りの成果は?!」と感染者数のグラフを確認しては、がっかりすることを繰り返しています。ニュースでは感染者の増加ペースは緩やかになってきているとは言っているものの、素人には正直まだ差がわからないくらいの右上がりのグラフです。

ただこの感染者数の変化は色々な要因が関係しているので、単純に「我々市民の行動変容の成果」としては見ることができません。
特に、政府が検査数を増やし、重傷でなくても疑わしい人は積極的に検査する姿勢に変えてきたことは大きいようです。ドイツのコロナ感染者死亡率はイタリアの1/20ですが、その理由の一つとして検査数が多く軽傷者がカウントされていることが言われています。4月1日時点で1日6万件の検査キャパがあり、デュッセルドルフではドライブスルー方式で日に600件の検査を始めたそうです。検査で陽性反応を得た人が全員病院に入院しているわけではなく、軽症者は自宅療養をしているとのこと。私の知り合いが感染したという話はまだ聞きません。


次なる感染防止の一手はマスク!?あんなに嫌っていたけれど、、

日本では冬にマスク姿を見かけない方が難しいですが、ドイツでは冬でもマスクをしている人は見かけません。東洋人は目元で表情を読み取るのに対し、西洋人は口元の表情を読み取ることを大事にするという文化的な理由も聞いたことがありますが、「マスクは病人がするものであり、病人は家で休んでいるべき」という考え方も一因のようです。マスクをしている人は、人に移す可能性のある状態で外出していると思われ、睨まれてしまいます。特にアジアからコロナが拡散した経緯の中でアジア人のマスクは恐れられてきたようです。私の友人の日本人はコロナ予防のために家族でマスクをして電車に乗ったところ、酔っ払いに消毒薬をかけられたと言っていました。怖いので私は自転車のみの生活にし、予防マスクはしていませんでした。

そこまでマスクを嫌ってきたドイツ人ですが、最近は次の一手とばかりに連日ニュースでマスクに効果があることを取り上げています。「コロナウィルスは無症状でも人に移す恐れがあるため、マスクは自分自身と対面する人を守ることになる」と伝えています。スーパーでもマスクをしたり、スカーフで口元を覆ったりしている人を見かけるようになりました。ただもともとドイツではマスクの流通が少ないため、既に店頭では入手が難しい状態。しばらくは手作りマスクやスカーフで乗り切ることになりそうです。


予想と予定、トイレットペーパーを手放して。

当初一斉休校に入った3月16日には、この約束された5週間を頑張ればまた通常生活が再開できるのだと思っていました。4週目には、ドイツ国内に限ってはある程度収束の兆しが見えてきているだろうと予想していました。ところが実際はそうでもなさそうです。

コロナが世界中のたくさんの人の予定を消しまったように、私も来週予定していた大学病院での手術がキャンセルされてしまいました。早くやってしまいたかった気持ちはありますが、医療従事者に負担ををかけたり、院内感染したりしなくて良かったです。イースター休暇明けまであと2週間、もっと伸びる可能性もあります。2歳児と一緒に自分も「前向きな変化」をし続ける毎日にしたいと思います。

蛇足ですが、ドイツでもトイレットペーパーが店頭から姿を消しており、我が家はついに在庫が尽きました。おコモリ中に娘のおむつが外れてトイレでできるようになったことは我が家の特殊事情ですが、大人も外出をやめて自宅のトイレを100%使用するようになったことで、ペーパーの必要量は倍増。私の周りではトイレットペーパーを買占めて安心している人を聞かないので(言わないだけ?)、みんな必要量が増えているだけなんではないか?と思ったりもしています。というわけで、安いペーパーナプキンで拭いてゴミ袋に捨てていますが、それほど恐れるような経験ではありません。むしろトイレットペーパーの在庫という恐れるものが無くなって、ほっと出来ました

世の中には新しいものを手に入れて広がる世界ばかりが広告されますが、何かが無いからこそ気付ける自分の気持ちやその先に広がる世界の方が、自分であることの喜びをくれる時もありますよね。

最後まで貴重な時間を使って読んでくださってありがとうございました。

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