料理とは戦争である。
私はキッチンで鳥皮をごま油であげていた。
私は何も悪いことをしていなかった。
むしろ自炊という賞賛に値する活動をしていたわけだが。
「我、汝を殺めん」という強い殺意で飛び跳ねる油たち。
その時、私は思った。
「料理とは戦争である。」と。
日常生活でこんな危険にさらされることはない。
油はいつも哀しい程に怒り狂っていた。
彼は明らかな殺意を持っていたし、踊り狂うと手がつけられなかった。
そんな日が何日か続いた。
いや何か月だったのかもしれない。
しかし私は今日、彼を無力化するものを手に入れてしまった。
そう。
油跳ね防止網ネットである。
その兵器を手に入れてから。
彼との闘いは終わった。
彼がどんなに怒り狂おうとも、
もうその毒牙は、私の手には届かない。
油跳ね防止ネットの中で怒り狂う彼をみて。
私は少し寂しい思いでいた。
私は架空の煙草をとりだしゆっくりと息を吸いこみ
そしてゆるりと虚空へと息を吐いた。
もうすぐ冬がくる。
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