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鳩と対峙する。

ふう、いつもと同じ朝、そういつもと同じように家の鍵を閉め、アパートの廊下を歩く。

そして階段を降り、オートロックの玄関に降りたとき。

そう、彼がいた。

一瞬うろたえる。

(え・・・鳩?)

鳩は真っ直ぐにそこに存在していた。

朝の光を浴びながら。

鳩は片足立ちしているときもあった。

(怪我して動けないのかな?、それにしても鳩とは)

先を急がなければいけない。

(お大事になさってください)

そうテレパシーを送って、鳩を見送る。

そして一日の仕事を終え、帰宅。

鳩のことなど忘れていた。

そして再び彼はそこにいた。

いや彼女だったのかもしれない。

けどそんなことはどうでもいい。

鳩はそこにいた。

一瞬ぎょっっっとしてしまうが、それを悟られるのは鳩に失礼というもの。

通りますねーとテレパシーを送り帰宅。

鳩に部屋番号は知られていない。

彼は踊り場にいたから大丈夫なはずだった。

次の日も彼は踊り場にいた。

帰ると1階にいた。

そうして2日くらい彼はそこにいて、

いくつかの糞尿を置き見上げにして

いなくなった。

今思えばその糞尿は、

彼のささやかながらの

「ありがとう」

だったのかもしれない。

そんな風に思うと

不思議と優しい気持ちになれた。


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