私のブックカバーチャレンジ解題 下

5)『夢みる惑星』

 佐藤史生先生との出会いは新書館の雑誌『グレープフルーツ』の七生子シリーズでした。その後『夢みる惑星』の事を知り、一気に嵌まり、『プチ・フラワー』に連載中だと知って、最後は連載を追いました。世界観も好き、設定も好き、台詞も好き。絵も構図も好きですが、部分的に脳内補完をかけながら読んでいました。絵柄が苦手な方には取っ付き難いかとも思われますが、一度は読んでみて欲しいと思うのでした。
 この作品には、『夢みる惑星ノート』という別冊に後日譚の掲載がありまして、長らく絶版入手困難プレミア付き取引となっていましたが、復刊ドットコムが復刊してくださって、今では電子書籍でも購入できるようになりました。素晴らしい。また、現在復刊ドットコムから発売されている『金星樹』という書籍に、『夢みる惑星』の前日譚たる『星の丘より』が収録されていますので、併せてお読み頂くと、世界観が広がる事と思われます。
 今でいうところのメディアミックスとして、当時はイメージアルバムというものがございまして、東海林修先生のシンセサイザー音楽でした。当然、買いました。文庫の1巻の表紙がイメージアルバムのジャケット絵です。
 『夢みる惑星』の後で『プチ・フラワー』に連載されたのが『ワン・ゼロ』で、これは最初から最後まで雑誌連載を追いました。代表作としてはこちらを挙げる方も多いかと思われます。これもまた、現代にも通じる問題を含んでいる作品で、登場するガジェットが古くなっていますが、設定そのものは古びていません。いやむしろ問題はもっと身近になったかもしれません。『ワン・ゼロ』は後日譚の『打天楽』まで併せてお読みになることをお勧めします。
 佐藤史生先生がお亡くなりになったと聞いたときはとても悲しく思いました。
 ところで、全作品持っているので、復刊ドットコムの発売状況を追い切れていませんでしたが、今回このnoteを書くにあたり検索してみたら、まだコレクションになっていない作品があるという事に気付きました。他にも珠玉の作品がまだまだあります。期待しています。

6)『亜州黄龍伝奇』(狩野あざみ)

 この作品は、おそらくジャケ買いをしたのです(笑)。山田章博画伯が大好きでしたので。とても読みやすく面白かったのですが、最後は急転直下のご都合主義に見えて、すっかり忘れていました。その後、『亜州黄龍夢譚』という、「二次創作」の漫画と小説のアンソロジー本に出会いました。書店で偶々見かけて、二次創作とは気づかず、自分の趣味に合いそうだからと購入したのですが、読み終わって、「もしかして、元になっているのは以前読んだ小説ではないか」と気づき、確認したらまさにその通りでした。あまりにも原作への愛が溢れる漫画だったので、自分の原作への印象が間違っているのではないかと思い直し、調べてみたら続刊が出ていると知り、続刊を読んだら、ずっぽり嵌まりました。ご都合主義に思えた部分は重要な設定であり、1巻目は導入に過ぎなかったのです。
  舞台は当時まだ返還前だった香港ですが、香港を飛び出してチベットに行くに及んで、もうすっかり虜に。最後の最後、え~~~~~! という結末が待っていましたが、そこも含めてありです。既に香港は返還されて、時代背景は変わってしまいましたが、この作品にとってそれは関係ありません。
 惜しむらくは、文庫にまでなったのに、現在新刊では入手出来ないという点です。電子書籍化を切に望みます。

7)『暗黒神話』(諸星大二郎)

 最後はこの作品。これまで紹介した本は、現在入手できない版型のものばかりでしたが、これだけは、現在発売中です。せっかくのブックカバーチャレンジなので、装丁の凝ったものを一冊位入れようと思って選びました。
 諸星先生との出会いは、今では『諸怪志異』としてまとめられている作品群の一つ、中国を舞台にした怪異ものの短編でした。立ち読み一回で強烈な印象を残す作品でした。大人になってから、眼に入ってたときにゆとりがあれば買うという感じで、ポツポツ買っていました。
 『暗黒神話』との出会いは、1996年発売の集英社文庫です。連載当時は子供すぎて全く知りませんでした。1976年にジャンプに連載されたのだそうです。すごいですね。
 日本古代史に絡む謎解きや、アートマンといった設定の『ワン・ゼロ』との関連性、弥勒という存在の『百億の昼と千億の夜』との関連性など、私の中での好きすぎるものがぎっちり詰まった作品です。
 写真の本は2017年に発売されて、買おうか買うまいか迷ったのですが、結局買ってしまい、結果として「買い」でした。2014-2015年に「完全版」が連載されたのだそうですが、それをベースに加筆されているそうです。
 装丁もものすごく凝っていますが、異世界のシーンを薄い印刷にする、最後を黒っぽい紙にするなど、本文部分にも拘りを感じます。拘り過ぎていて、これは、電子書籍では再現が難しいのではないかと思いました。
 ファンの方でもしもまだ購入を迷っていらっしゃるようであれば、損はしないとお伝えさせていただきます。

8)7日間を終えて

 7冊を選んだ基準は、自分の根幹にかかわったもの、かつ、複数版型や複数のメディアミックス商品を持っているもの、という観点でまとめてみました。
 ブックカバーチャレンジに挙げたあとで、ネットでいろいろ調べてみると、以前は判らなかった事がネットに掲載されていたり、SNSでつながって新たな情報を得られたりと、大変有意義でした。
 また何かの折には別の視点でセレクトしてみたいと思います。

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