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サガン鳥栖2022シーズンのゴールドセイント達②岩崎悠人

今季の鳥栖には先に出した西川に代表されるように成長物語としての楽しみがありました。岩崎悠人もその1人です。彼はまず開幕広島戦でウインガーとしての起用がサポや解説者の度肝を抜きました。サガン鳥栖は「再生工場」という異名があります。他クラブで上手く芽が出なかった選手や、伸び悩んでいる選手が鳥栖に来ると翌年争奪戦になる程株を上げるという事を意味するわけですが、今季の岩崎などもその象徴的な存在でしょう。2021年はJ2千葉にレンタルに出されていた選手が今年はW杯前の選考となる日本代表にで選ばれる選手となりました。

課題はフィニッシュワーク

岩崎は2021年夏に金明輝監督体制のサガン鳥栖に加入してきました。U-20、U-23代表メンバーとそのポテンシャルについては折り紙付きだが、近年は所属クラブが安定しないなど、イマイチくすぶっているという事で、鳥栖の再生工場の本領発揮という期待をサポーターみんなが寄せました。そんな岩崎の鳥栖デビュー戦は2021年8月14日の浦和レッズ戦。移籍して直後から白崎凌兵や小泉慶と言った大型移籍のメンバーと同等に試合に出続けました。最初に大きく印象を残したのは、8月29日のアウェイベガルタ仙台戦です。前半38分、負傷したMF小泉慶に代わってFW山下敬太と2トップを組んだ岩崎はピッチ上を縦横無尽に駆け巡り、その豊富な運動量を見せつけました。66分、その岩崎がもらったファウルでDFエドゥアルドが密かに練習していたフリーキックを見事本番で決め、その1点が決勝点となります。ただ、この試合で私は別の印象も持ちました。岩崎はもしや運動量には自信があるけど、フィニッシュワークに自信がないのではと。この試合もFWとして使われながら、そのチャンスもあったもののシュート数が極端に少なかったと記憶しています。

以後も試合にコンスタントに出続ける岩崎ですが、やはりゴール前までは威勢よく駆け上がるが、いざゴール前に来ると困ってしまう、という様子が何度も見受けられました。そんな岩崎の鳥栖初ゴールは35節、11月7日に行われたホーム川崎フロンターレ戦で生まれました。3分、DF飯野七聖が相手を2人交わして旗手怜央の股間を抜いたグラウンダーのパスがゴール前に詰めていたファー寄りの岩崎にドンピシャで供給され、インサイドで軽く流してゴール。この試合当たっていた飯野は3得点した鳥栖の全てのゴールをアシストし、サッカーダイジェストもMOMに選出したわけですが、岩崎のゴールも飯野の功績が大きいものという印象がありました。結局このシーズンは岩崎はこのワンゴール止まり。それからストーブリーグを迎え、岩崎の残留が決まりましたが、小野が復帰、西川、宮代、垣田と大型FWが移籍してくる中で、オフ明け、岩崎がスタメンを勝ち取ることができるのか?!そんな印象のまま、開幕節を迎えました。

ドギモ

2月19日、2022年のJ1リーグが開幕しました。鳥栖はアウェイ広島、エディオンスタジアムは雪の降りしきるアイスランド。半分銀世界です。そこに岩崎がスタメンで名を連ねている。この開幕節は色んな驚きがありました。必ずスタメンに入ってくると目された、中野嘉、藤田、小野、中野伸がスタメンではなく、西川もいない。菊池や堀米という耳慣れない名前がある。川井監督は「厳しいチーム内競争でスタメンを勝ち取ったメンバーですから、信じています」とコメント。その中に岩崎の名がある。そして開幕してみると、なんと岩崎は左SB起用です。そしてこれがハマるハマる。豊富な運動量とボールトラップの上手さ。パギのロングフィードから決定的なシーンを作り出し、さながらゴールキックがフリーキックのようです。開幕節はそのままドローに終わりましたが、順調な滑り出しの鳥栖。岩崎もレギュラーが安定していきました。

しかし。

2節、湘南戦が終わったところで昨季と同じ問題が浮上します。「フィニッシュワークが出来ない」。スペースが空いた状態で前を向けているからこそ、この問題が目立って見えるのです。アシスト、シュートが極端に少ない。素人目に見ていても、何か迷いがあるように見える。掲示板などでもこの話題が盛んになっていました。「撃て!岩崎!」

代表へ

そんな岩崎の今季初ゴールはルヴァンカップ第5節京都サンガFC戦で生まれました。ゴール前、MF菊池が弾かれたシュートが岩崎の前に転がると、1人かわしてファーに向かってGKの股抜きシュート!小野を始め仲間がサーっと駆け寄って、岩崎は安堵の表情。「いろいろな思いを持って試合に入っていた」と振り返っています。世間で言われていたことが、きっと自分でもよくわかっていたのでしょう。

「もっと喜びたかったが、それよりまず安心した」と振り返る

以降の岩崎は積極的なシュートが見られるようになります。1試合空けた5月3日のホームセレッソ大阪戦では超ロングシュートをサイドから放ってバーに直撃させており、6月26日のホーム東京戦ではもつれあったペナルティエリアの外からミドルシュートを沈めて今季初ゴール。この試合勢いに乗った鳥栖は東京相手に5点のゴールショーを見せてシーズンダブルを決めています。

そんな活躍が認められて、岩崎は東アジアE-1選手権で日本代表に鳥栖から唯一選出。これは代表を率いる森保一監督がU20、U23時代に岩崎を愛用していたことも無関係で無いと言われましたが、岩崎に日本代表の肩書きが付きました。そのE1選手権ではあまり目立った活躍はできませんでしたが、もともとお調子者の性格をしているのか、「日本代表」の肩書は岩崎を大きく成長させました。代表帰りと言われた7月31日の第23節アウェイ清水エスパルス戦では、DF原田からハーフラインより後ろからのロングフィードが供給され、これを上手く収めた岩崎は反転ミドルシュートを突き刺して同じく代表の権田から先制点を奪いました。個人的にはこのゴールが今年のサガン鳥栖のベストゴールと思っています。

ロングフィードをしっかり収め、安定した体幹で振り向きシュートをものにする

以降もホーム磐田戦などで1対1の強さを見せ、何度も味方のチャンスを作り出しました。

ただ、シーズンも終盤戦に入るとその神通力も賞味期限が切れたかのように薄れてしまい、元のフィニッシュワークが苦手な岩崎に戻ってしまったかのようでした。特に最終節の広島戦でそれは顕著で、シュートもパスも完全にキレが無くなっていました。フィニッシュワークは相変わらず課題として残るようです。

来季の課題、改善点など

採算述べてきたように、フィニッシュワーク、特に前にスペースがあるが、相手もいる、という中でシュートだけでなくパスを絡めた崩しについてはパターンを知る必要がある気がします。岩崎はゴールについてはシーズン中に恐怖症を克服できたと思いますが、クロスについてはまだまだ。直接のクロスもあれば、一旦マイナスに落とすなど、いろんな選択肢があるわけで、優れた突進力を活かす中で盤面をイメージして、複数の選択肢が思い浮かべられると大化けしそうです。またメンタルコントロールも重要なところで、川井監督が上手く岩崎をノセられるかという所も、来季のポイントになってくるでしょう。最も、岩崎はコンサドーレ札幌からのレンタルですので、その去就も気になる所です。西川と同様、サガン鳥栖で完成する選手だと思いますので、来季、押しも押されもせぬ代表の選手となったサガン鳥栖の岩崎悠人をぜひ見たいなと思っています。

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