見出し画像

はかなさの中にある美しさ

昨年末に図書館で予約した小説がようやく到着した。
所蔵されている冊数が少ないと時間がかかる。内容は
世界から言葉が消えていくという物語。残像に口紅を
というタイトルに、はかなさの中にある美しさを感じる。
ひとつひとつの言葉を味わって、小説の世界を楽しもう。



※講談社BOOK倶楽部ホームページより参照

消失していく物語といえば小川洋子さんの密やかな結晶
を思い出す。これは世界から記憶が少しずつ消失していく
物語である。何かがある状態から消えてなくなっていく。
失われたものへの郷愁と残されたものへまなざしがある。
表紙には喪失感をイメージさせる木彫りの彫刻。工芸家の
望月通陽氏の作品である。単行本も氏のデザインである。

※講談社BOOK倶楽部ホームページより参照




甲子 純米吟醸 別誂 千葉酒々井 飯沼本家

福岡の工藝風向で、望月通陽展が6月14日から25日まで
開かれていた。以前から店内に設置されている望月氏の
暖簾などの作品が気になっていた。どれも素朴で美しい。

記念に望月氏がラベルをデザインした日本酒を購入した。
ラベルには「さあ、酒を手に入れよう。強い酒を浴びる
ように飲もう。明日も今日と同じこと。いや、もっと
すばらしいにちがいない。」とイザヤ書56章12節より
引用されている。ラベルを眺めながら勇気が湧いてくる。

※工藝風向ホームページより参照




以前、所有していた密やかな結晶の文庫本は、何かの折
に手放してしまった。密やかな結晶は2020年度の英国
ブッカー国際賞の最終候補に残るなど、刊行から25年
以上も評価され続けている。もう一度、読んでみようと
検索してみると新装版となっていた。表紙は西浦裕太氏
の作品である。小説の消失し朽ちていくイメージを彷彿
とさせる。もう一度、小説の世界を時間をかけて楽しもう。
 


はかなさの中にある美しさ。そんなことを考えながら、
家にあるものから、その雰囲気を持つものを集めてみた。

朽ちていく世界の上にたたずむ一軒家のイメージのオブジェ
森の学校キョロロのオブジェ。表面が錆びて味わいが出てきた
岡本太郎氏の作品。ぽっかりと開いた目には喪失感がある
ドライフラワーには朽ちていく花の姿の美しさがある
小鹿田焼の坂本創氏の小皿。動から静へ、一枚の中に世界がある


旅に出たり、雑貨を選んだり、本を読んだり、日々生活を
する中でいろんなものが目に止まる。きらびやかなもの
よりも、はかないもの、朽ちていくもの、時間の経過した
ものに美しさを感じている。これからも、その美しさを
生み出すものにもっと近づき、味わっていきたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?