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ミュージアムへのいざない。アートだけではない楽しみがある

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入り口までの期待感や周りの風景を取り込んでいること、アートの展示だけでないミュージアムの魅力。アートとよい関係をもつミュージアムに物語を感じる。素敵なミュージアムを求め旅に出よう。
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2021年11月の記事一覧

どんぐりのような屋根を持った美術館

ねむの木子ども美術館どんぐり 2007 藤森照信  ねむの木学園の子どもたちが描いた 作品を展示するための美術館である。 静岡県掛川市の山手に位置している。 美術館は山の麓にこじんまりと建っていて、 周囲では、鳥のさえずりが響き渡っている。 その建物の形は、子どもたちの絵を展示する のにふさわしく、あたたかくて優しさがある。 藤森照信氏の設計する建物は、いつも穏やかな 空気をまとっている。建物に使われる素材や その手触りがよく、さすってしまいたくなる。 また屋根には、い

ものづくりの殿堂にふさわしい空間

竹中大工道具館 2014  竹中工務店 日本で唯一の大工道具の博物館である。 収集された資料は35,000余点にものぼる。 新神戸駅から歩いてほど近くにある敷地は 自然と調和し、周囲の山並みに溶け込んでいる。 和風門をくぐった緩やかなスロープの先に、 むくりの付いた瓦、軒裏の木の色合い、 水平ラインが美しい屋根が見えてくる。 石畳のアプローチはゆるやかに折曲り、 緑と一体となった建物はさまざまな表情を見せる。 階段の端部のゆるやかな立ち上がり、 外構の手すりの支柱を

いつまでも冒険心を持ち続けていたいと思う

植村直己冒険館  設計 栗生 明 1994 兵庫県 豊岡市 植村直己の『知恵と技術』に加え、『ひととこころ』 を後世に伝えるための施設として1994年に開館した。 今年4月にリニューアルしたとのことで、随分前に、 まだ小さい子供達を連れて訪れたことを思い出した。 植村直己(1941-1984 )は、 1970年に世界最高峰のエベレストに 日本人で初めて登頂した人物である。 1984年、冬期のマッキンリー単独登頂後、 下山中に消息を断ち、帰らぬ人となった。 植村直己から子

彫刻作品と向き合える場所

スキュルチュール江坂 1997  設計 川北 英・内海 慎介(竹中工務店) スキュルチュールとは、 フランス語で彫刻という意味。 江坂にあるこじんまりとした彫刻美術館だが、 まわりに広がる芝生の庭園と一体となり、 とても贅沢な空間を楽しむことができる。 内部はとてもシンプルな構成である。 中庭に面して光の差し込むロビーと、 展示室に向かうアプローチ空間。 ところどころに置かれたベンチで 関連書籍などを読むことができる。 中庭には、レンガの床と壁で区切られた空間に