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アイラップの思い出

小学生の頃、学校行事で催されていたパターゴルフでホールインワンを決めたことがあった。

景品コーナーには玩具や日用品など様々なアイテムが並んでおり『どれでも好きなものを選んでいいよ』と言われたものの、選びきれずに私は悩んでいた。

そんな中、ふと景品に見覚えのある箱を見つけた。
うちの台所のいつものところにある、オレンジ色のやつ。

特段意識したことはなかったが、なんとなくそれを覚えていた。

――これなら、お母さんが喜ぶかもしれない。

そう思った私はその『アイラップ』と書かれた箱に手を伸ばした。

どこか日に当たる場所で保管されていたのだろうか、箱のオレンジ色は少しだけ色褪せていた。

...
.........

家に帰って母にアイラップを渡すと、まもなく台所のいつものところに備え付けられた。

もちろん『お母さんが喜ぶと思った』なんてことは恥ずかしくて伝えられず、ぶっきらぼうに渡してしまったような気がするが、母がちゃんとそのアイラップを使ってくれたことが子供心に嬉しかったことは今でも憶えている。

あれから何年経っただろうか。

先日実家を訪ねた際、久々にキッチンのいつもの場所を確認してみると、そこには変わらずその箱があった。

我が家のキッチンに常備してあるのと同じ、オレンジ色の箱。

安井ファームのTwitter担当となった今、プライベートでも、仕事でも、私にとってアイラップは身近な存在だ。

ーーこんな風に世代を超えて愛される何かを、私も世界に伝えられるといいな。

かつては見上げる場所にあったはずのアイラップを、正面から眺めながらそんな風に考えていると、明日もブロっと頑張れる気がしたのだった。

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